窓際の席は景色がいいけどまぶしくて暑い
ゴルフ場のレストランで一等席は窓際です。レストランの入り口で客を出迎えてくれるスタッフがいた時代には、窓際の席が空いていれば必ず窓際に案内してくれました。
今の時代はどこのゴルフ場レストランも少数精鋭で忙しく動き回っていますので、よほどの名門コースでもない限り、入り口で出迎えてくれるスタッフはいません。動き回っているスタッフに「お好きな席どうぞ!」と声をかけられます。
そうすると筆者は、まず窓際の席が空いているかどうかレストランを一望します。窓際が空いていれば、その席で確定です。コースを背にして入り口が見える席に腰を下ろし、同伴者が来るのを待ちます。

一般的なレストランでは、入り口から最も遠い席が上座になりますが、ゴルフ場のレストランではコースの景色が最も見やすい席が上座になります。同伴者のために上座を空けておきます。
ところが最近、窓際の席を確保したのに「あっちの席にしようよ」と年長者から要望があり、窓際から離れた席に移るケースが増えました。その理由は大きく分けて3つあります。「まぶしいから」、「暑いから」、「隣のテーブルがうるさいから」です。
窓際の席は景色がキレイですが、景色を見せるために大きな窓ガラスが使用されていますから、外からの光が容赦なく降り注ぎます。昨今の猛暑日の日差しは尋常ではありませんから、確かにまぶしいです。
また、レストラン内は冷房が効いていますが、窓際の席だとガラス越しとはいえ太陽光が直接当たるので体感温度が上がります。暑い屋外から涼しい室内に退避してきたのに、わざわざ暑い席に座る必要はないだろうというわけです。
「隣のテーブルがうるさいから」というのは、コロナ禍の感染症対策でレストランのテーブルに透明なアクリル板の仕切りが設置されている期間が長かったので、お互いの声が聞こえづらくて大きな声で話す人が増えました。
今はアクリル板の仕切りはなくなりましたが、ゴルフ場のレストランは昔から酒を飲んで気分がよくなり、普段より大きな声で話す人が多いです。その人たちと隣同士で食事をするよりも、周りに人がいない静かな席で食事をすることを優先したい人が増えているのです。
ドリンクバーに近い席を優先するケースもある
そういった事情に加え、昨今はレストランを少人数で効率よく運営するため、ソフトドリンクやアルコール類をセルフ方式のドリンクバーにしている施設も増えています。
ドリンクバーはレストランの厨房に近くて通行の邪魔にならない場所に設置されます。レストランの厨房は基本的に窓際と逆側に配置されています。したがって、ドリンクバーを何度も利用したい人は、窓際の席よりもドリンクバーに近い席を好むようになります。

そもそも「ゴルフ場のレストランでは窓際の席で景色を眺めながら食事をお楽しみください」という価値観自体が昭和時代の文化を押しつけているのかもしれません。
昭和時代に開場した多くのゴルフ場は、クラブハウス2階の景観のいい場所にレストランを配置しましたが、平成から令和にかけてクラブハウスを建て替えた施設はメンバーの高齢化を見越し、クラブハウスを平屋造りにしてバリアフリーを優先しています。
レストランで食事をするのに階段を上らなければならず、エレベーターもエスカレーターも設置されていないのは、多様性を認め合う今の時代にフィットしていないのです。
多様性を認め合うのであれば「ゴルフ場のレストランの一等席は窓際」と決めつけるのではなく、景観を優先するか冷房の効き具合を優先するかを各組が決めるのは当然です。
さらにいえば、ハーフ休憩を取ってゴルフ場のレストランを利用するか、スループレーを選択してゴルフ場のレストランを利用しないかを各組が決められるようになれば、さらなる多様化が進むのですが、こちらはゴルフ場の運営上の理由により実現が難しいようです。