ゴルフの敵“ブヨ”って、どんな虫?
10年に一度の暑さと言われる、今年の夏。猛暑のなか行うゴルフは、暑さ対策だけでも大変なのに、さらに虫除け対策まで必要となると本当に厄介です。
自然豊かなゴルフ場には多くの虫が生息していますが、なかでもゴルファーを悩ませる害虫の筆頭が“ブヨ”(※地域によってはブユ、ブトとも呼ばれます)ではないでしょうか。

ハエの仲間であるブヨは蚊と同じように吸血する虫ですが、もっとも異なるのが血の吸い方と毒性の強さです。
針のような口で血を吸う蚊に対して、ブヨはノコギリのような口で皮膚を傷つけ、出てきた血を吸います。
皮膚を傷つけた際に蚊よりも強い毒素を持った唾液を注入するので、刺されると、その患部は強い痛みやかゆみをともなうのが特徴です。
ブヨは、産卵時のメスが産卵に必要な栄養を補給するために人を刺して血を吸うそうで、繁殖期の春から夏にかけて、もっともよく活発に活動するのだとか。
ここ10年は2日に1回の割合でラウンドを楽しむゴルフの達人、加賀屋ゴルフ代表の前田信吾さんも「僕にとっては、ブヨが夏ゴルフの最大の敵!」と笑います。
「ブヨはね、炎天下ではあまり現れないのよ。早朝の比較的涼しい時間帯、特に雨上がりの朝の練習場とか、池の周りとか水のあるところによく出没するんだよね」
「人によっては刺されても全然大丈夫な人もいるんだろうけど、僕は絶対にダメ。夏場はどんなに暑くてもブヨ対策のために短パンは履かないことに決めているし、プレー中は虫除けスプレーを常に携帯します。毎年9月下旬ごろまでは本当に気が抜けないね」と語ります。
前田さんの経験では、ブヨに刺された場合は初動が大事なのだとか。
「ブヨは小さいから、刺されても気がつかないことが多い。でもね、気付いた場合は必ず刺された患部を指でギュッとつまむようにします。毒を指で絞り出す感じかなぁ。そうすると、少しは違うような気がしますね。そうはいっても、刺されるとやっぱり腫れちゃうけど」
皮膚科・美容皮膚科医に聞く「事前のブヨ対策&刺された後の最善策」
ブヨの活動が盛んになる夏場のゴルフ場。ゴルフを存分に楽しむためには、事前のブヨ対策が欠かせません。
前出の前田さんのように、夏場のプレー時には短パンを避けるなどの服装による工夫が必須です。

「そうですね。ブヨから身を守るためには、まずは肌を露出しないことが大切です」と話してくれたのは、皮膚科・美容皮膚科医であるウォブクリニック中目黒の総院長、高瀬聡子先生。
服装の工夫と同時に、夏ゴルフに必ず携帯したいのが「虫除け」です。プレー中は、どのような成分の入ったものを使用すると良いのでしょうか?高瀬先生に伺いました。
「特にスポーツに適した成分というものはありませんが、ブヨ対策の虫除けとして使用する場合なら、『デイート』や『イカリジン』という成分を含んだものがいいですね。できるだけ肌に刺激が少ないものを使いたいという方なら、天然由来成分の『シトロネラ』や『ペパーミント』、『ユーカリ』や『ハッカ』などを用いた虫除けも効果があると思います」
虫除けをこまめに使用するよう心掛けても、汗をかくことの多い夏場。運悪くブヨに刺されてしまったら、どうすればよいのでしょう。
「自分でできる応急処置としては、やはり基本は『冷やすこと』です。ブヨ対策としてOTC医薬品(医師の処方箋がなくても店頭で買える医薬品)を事前に用意しておくのもよいでしょう。『ステロイド』という成分が入っているものをオススメします」と、高瀬先生。
虫に刺された直後は、その虫が本当にブヨなのかどうか素人では判断できないことも。そういう意味でも、まずは『冷やすこと』が大事なようです。
ブヨに刺されてしまって、腫れや痛みがひかない……。でも、「この程度で大人が病院に行ってよいものだろうか?」という声もよく聞きます。皮膚科を受診した方がよいタイミングはあるのでしょうか。
「数日以上、かゆみや赤みが治らない場合は皮膚科を受診した方がいいですね。皮膚科では炎症を抑えるステロイド配合の付け薬が処方されます。かゆみがひどく広範囲に広がっているような場合は、抗アレルギー剤の内服薬が処方される場合もあります」
ブヨに刺された患部を無意識にかいたりすると、かゆみや痛みが引いた後も跡が残ってしまう場合があるそうです。後悔しないために、早めに専門医に相談するのがよさそうです。
例年よりも厳しい残暑が予想される今夏。ゴルフを心から楽しむためにも、万全のブヨ対策でプレーに臨みたいものです。
取材協力・ウォブクリニック中目黒、加賀屋ゴルフ
参考資料(ブヨ)・イカリ消毒害虫と商品の情報サイト
【監修】ウォブクリニック中目黒 総院長 高瀬聡子先生
東京慈恵会医科大学卒業。同大学付属病院での皮膚科勤務を経て美容皮膚科クリニック「ウォブクリニック 中目黒」を開院、総院長を務める。「いちばんわかる スキンケアの教科書」、「ゆる美容字典」(ともに講談社)などの著書多数。