都市部は土地相続による影響が大きい
コロナ禍で3密を防げることから新規ゴルファーが大幅に増加し、ゴルフ業界は盛り上がりを見せました。練習場にも多くの人が来場して、活気を見せていた一方、都市部の練習場は、閉鎖に追い込まれるケースも珍しくなく減少傾向にあるようです。

たとえば都内最大級の屋外練習場といわれていた「明治神宮外苑ゴルフ練習場」や「昭和の森ゴルフドライビングレンジ」が閉鎖したのは記憶に新しい出来事です。では、なぜ都市部の練習場は減少傾向にあるのでしょうか。
公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟会長で、東京・世田谷区の「千歳ゴルフセンター」の代表取締役である横山雅也氏は、以下のように話します。
「ゴルフ練習場が閉鎖に追い込まれる理由は、大きく分けて3つあります。まず一番の問題は、相続問題です。とくに都市部の場合は、土地価格が高いので相続税がとんでもない価格になることも珍しくありません」
「多額の相続税が発生してしまうのであれば、当然その金額を支払う算段を立てなければなりません。試行錯誤の末に『結局閉鎖したほうがいい』という結論に至る練習場がほとんどです。とくに個人が経営している都市部の100ヤード前後の練習場がこのケースに当てはまることが多いです」
相続税は亡くなられた親などから、土地や財産を相続した際に発生しますが、受け継いだ金額が大きれば納税額も大きくなります。都市部にある練習場は、地方に比べて資産価値が高いため、相続問題が一筋縄ではいかないようです。
続けて横山氏は「2つ目は法人が練習場を所有している場合、親会社の業績が悪かったり、全体の事業方針が変わったりすると、閉鎖する流れになります。こちらに関しては、会社の経営方針に従うしかないので、やむを得ないでしょう」と話します。
コロナの規制が解除され落ち着きを見せ始めてきた
「最後は老朽化した練習場が建て替えを検討するものの、割に合わず閉鎖してしまうケース」と横山氏は話します。

「とくに昭和50年頃に立てた練習場は、ちょうど老朽化が目に見えて進行する時期です。とくに昨今は気候の変動が激しく大型の台風がやってきたり、ゲリラ的に強風や雨が降ったりと練習場のネットはかなりダメージを受けています」
「こちらも『じゃあ全部建て替えてきれいにしようか』とは、簡単にならないのが実情です。建て替えにかかった費用を回収できるだけの事業計画がないのであれば、そのまま閉鎖してしまうほうが無難だからです」
また横山氏は「コロナ禍で一時期的に来場者は増加傾向にあったが、いまはそれなりに落ち着きを見せてきていることも要因のひとつ」と話します。
一部の練習場では、弾道測定器を導入したり、施設を改装したりして新規顧客獲得を画策しているところもあるそうですが、そこまで踏み切れていないところが大半だそうです。
最後に横山氏は、「やはり一番のネックになっているのは、相続問題なのでスポーツ施設を残すにあたっての優遇措置のようなものが出てくると、閉鎖以外の選択肢も前向きに考えられるオーナーが増えてくるはずです」と話します。