フェンスや電柵が効果的だが莫大なコストがかかる
昨今の異常気象により、ゴルフ場はメンテナンスに様々な対策を講じています。そんなメンテンナンス以外にも、最近増加傾向にあるのが野生動物の侵入だそうです。
フェアウェイを掘り返す、グリーンにキズをつけるなどといった被害をもたらす野生動物の対策について、ゴルフ場関係者に話を聞いてみました。
ゴルフ場の商品はコースです。しかし、フェアウェイを掘り返すイノシシやグリーンの芝を食べたり、ツメでキズをつけてしまうシカといった、商品をキズつける野生動物の存在はゴルフ場にとってかなり厄介です。

プレー中にフェアウェイの中央に突如として現れる修理地なども、ほとんどが野生動物の侵入が原因になっています。ゴルフ場は商品であるコースをキズつけられると営業ができなくなる可能性もあります。また、クチコミに悪口を書かれることで、予約が入らなくなることもあるそうです。
野生動物の侵入を防ぐためのフェンスや電柵を設置には、囲む距離によって違いこそあれ約2000万円かかるといいます。
電柵などの設置により、年間200~300万かかっていた野生動物が原因の芝の張替えのコストは軽減されます。しかし、一度対策してもわずかな隙をついて侵入してくる野生動物との戦いは、常に高額なコストと年単位の時間がかかる壮絶な戦いになるそうです。
2匹の警備犬がコースを救う
野生動物の侵入を防ぐ対策としてポピュラーなのがコース外周フェンスや電柵を張り巡らせることです。それ以外にも、地元の猟友会とも連携して駆除を行うこともあるそうですが、猟銃が使えないエリアがあったり、年間でも決まったタイミングでしか行えないことから思うような効果は得られないそうです。
そのほかに、コース上に警備犬を放ち野生動物の侵入を防ぐ方法もあるそうです。この対策を採用している兵庫県のサンロイヤルゴルフクラブの担当者に話を聞きました。

5~6年前が野生動物による被害が一番ひどかったというサンロイヤルGC。これまでも電柵やフェンス、アニマルネットの設置といった対策を行ってきたそうです。しかしそれだけでは被害を食い止めることはできなかったそうです。
そこで2匹の警備犬(ロイくん・リリーちゃん)を巡回させる作戦を実行。
「基本的に朝とお客様のホールアウト後に巡回させています。被害多い時は1時間おきにコースを走らせていました」
しかし、警備犬の巡回頻度を多くしても、結局はイタチごっこだったそうです。
「5日間連続で巡回しても1日休むとその日に侵入されるみたいな感じでした。出てきては追い回してコースの外へと出す、ということを続けていたら、野生動物同士でも情報共有があるらしく『あのコースにはやばい犬がいる』ということになったのか出てこなくなりました」
コースのメンバーさんにも可愛がられている2匹の警備犬ですが、巡回中にマムシにかまれたり、足をケガしたりとまさに命がけの巡回をしてくれています。
「メンバーさんはコースが荒らされていた頃をよく知っているので、ロイくんとリリーちゃんの活躍でコースがキレイになったことを理解していて、とても2匹を可愛がってくれています」
何年もの攻防を続けてことで野生動物の侵入は減り、コースは荒らされることがなくなったそうです。
人と設備、警備犬を駆使してコースを守る
野生動物の動きは予測が難しいものです。対策を行い長い期間現れなくなっていても、なんの前触れもなく再び出現することがあるそうです。また、イノシシ対策の鉄柵を設置しても、その上をシカが飛び越えて入ってきたりもします。
荒らされた部分の修復にコース管理従業員の時間が取られてしまい、他の部分のメンテナンスに影響が出てしまうとゴルフ場へのダメージは大きくなります。防御設備だけじゃなく警備犬の活躍は必要不可欠です。
多くのゴルフ場は野生動物の対策に様々な手段と莫大なコストを使って、ゴルファーに最高の商品(コース)を提供してくれているのです。