隣接工場から「これ、飛んできたボールです」とクレーム
ゴルフ場の様々な業務を統括する立場にある「支配人」。バブル期にはお客さんから「ラウンドさせて欲しいんだけど、なんとか一組入れませんか？」といったお願いされることが多かったといいます。
そんな、ゴルフ場にまつわるあらゆる業務に携わる立場の支配人も、近年の人手不足などゴルフ場を取り巻く環境の変化の影響を受けているそうです。
来場ゴルファーだけじゃなく、ゴルフ場地権者や近隣施設との想像を絶する対応の日々など、具体的な仰天エピソードを聞いてみました。
ゴルフ場によっては朝、車寄せで来場者を出迎えたりメンバーと挨拶を交わしている支配人ですが、クレームが発生すれば対応に奔走します。
施設内でのトラブルはもちろんですが、ゴルフ場の近隣にある施設との関係性維持も大切な仕事になります。
ゴルフ場のロケーションによっては、工場や民家などの様々な施設が隣接しています。ティイングエリア付近にネットを張るなどの対策をしていても、来場者が打ったボールが大きく曲がって近隣施設に飛んで行ってしまうこともあります。
「数カ月に1回、コース横にある工場の所長から電話がかかってきますね。行くと『コースから飛んで来たボール、拾っといたよ』と大量のボールを渡されることがあります。さらに、工場内のソーラーパネルに当たって割ってしまうこともあるので、弁償したこともあります」
ボールがコース外に出ないよう、ティーマークの方向を変えたりして対策はしているそうですが、全てを防ぐことはできないそうです。そんな近隣施設からのクレーム対応もコースの責任者として支配人が行う仕事の一つだそうです。
「うどんが硬い」とレストランにクレーム
あるゴルフ場の支配人に印象に残るエピソードを聞いてみました。
「お客様のクレームで印象に残っているのは『うどんの麺が硬くて食べられない』ですね。レストラン側と相談して、その方には特別に軟らかい麺を用意しました。ところが今後は『出汁が薄い』といって結局食べてくれませんでしたね」
また、ゴルフ場の多く「借地」である場合が多く、地権者との「地代交渉」も支配人の仕事としてあるそうです。ゴルフ場によっては地権者が60～70人という場合もあり、そのすべての人たちと数年に一回、賃借料の契約更新作業があるそうです。
「地権者の中には、毎回賃料を上げようと吹っ掛けてくる人もいます。そんな人には運営会社の資産管理部と協力して、周辺の土地の鑑定をしたうえで適正相場を提示します。そうすると大抵の地権者はハンコを捺してくれます」
しかし、なかには一筋縄ではいかない地権者もいるそうです。
「突然、『自分はこのゴルフ場の社長だから役員報酬を支払え』といってきて、乗り込んで来た人がいました。その方は家族とも疎遠で、代わりに話ができる人がいませんでした」
どのように対応したかと聞くと、「こちらも契約書にサインしてもらえないと賃借料の振込ができないと訴えました。その人は借地代で生活をしていたようなので、結局はお金がなくなったタイミングでサインをしていただけました」
地権者のなかに大地主がいる場合、トラブル時には力を借りたりすることもあるそうです。ゴルファーだけじゃなく、このように地権者や周辺の関係者全てと良好な関係を保つのも支配人の重要な役割だそうです。
最近の支配人の役割について話を聞くと、「プレーイングマネジャーですよ」という答えが返ってきます。
メンバーさんやコンペ幹事との関係構築、営業活動に加えフロントやレストラン業務も行っているそうです。人手不足ということもあり、最近のゴルフ場支配人は本当に様々な役割を果たす必要があるようです。
