9~10月に皮膚科を受診するゴルファーが増加
東京オリンピック銀メダリストの稲見萌寧さんが、虫刺されのためトーナメントを途中棄権したのをご存じですか?

9月に入ってすぐのゴルフ5レディスでのことでした。「6番ホールでブユ(ブヨ)か何かに刺されて、めっちゃ血が出て、腫れてきて、熱ももって重たい感じになった」(稲見萌寧さん)ため棄権をしたそうです。なんだか痛そうですね。
すでに経験した人もいるかもしれませんが、一般ゴルファーも、ゴルフ場へ行ったらいつ稲見さんのようになっても不思議はありません。ブユは芝生に生息しているからです。でも、万が一刺されても、対処法を知っていれば安心です。ラウンド中にブユに刺されたとき、できるだけ悪化させないために実行していただきたい5つの方法を、皮膚科医の松本美緒先生(品川区・サザンガーデンクリニック)に教えていただきました。
「なぜ今ごろ? 蚊やブユの季節はもう終わったのでは」と思う人もいるでしょう。確かに、以前はブユに刺されて皮膚科を受診する人は5月から7月の“夏限定”だったようですが、このところは春から秋まで患者さんが絶えることはないそうです。
「9月、10月のゴルフシーズンはやはり多いですね。例えば、土曜日にゴルフをしに行って午前中ブユに刺された場合は、日曜の夜あたりから腫れてきます。それで気づいて月曜日に受診されるパターンは少なくありません」(松本美緒医師)
蚊やブユは、人の皮膚から血を吸います。その際に唾液腺物質というものを出すのですが、刺された人は、その物質によって赤みや腫れ、かゆみといった反応を引き起こします。
「最初は遅延型反応といって、刺されてから1~2日経って赤みやかゆみを生じます。ただ、刺される機会が増えると即時型反応といって刺されて数十分で腫れやかゆみが生じるようになります。出血や赤みで刺されたことに気づく人も多いです」(松本医師)
ゴルファーにとってさらに問題なのは、最初にも言いましたが、ブユは芝生に多く生息していることです。山や渓流などにも生息しているそうなので、トレッキングを楽しむ人なども注意が必要です。芝生に生息して低空飛行をするため、蚊のように顔や上半身を刺すよりヒザから下を刺すことが圧倒的に多いのです。そう聞くと、プレー中も足元が気になってしまいますね。
虫よけには匂いのきつい“ディート”が有効
ブユから身を守るには、とにかく予防するしかありません。松本先生によれば、最も重要なのは体の露出を少なくすることです。短パンや短いキュロットを避けるのは言うまでもありませんが、若い男性が好んで履く7分丈パンツやアンクルソックスも要注意です。短いソックスからほんの少しでも足首が出ていたら刺されてしまうからです。ソックス選びはファッションよりブユ対策を優先させ、しっかり足元を隠してガードしたほうが良さそうです。
虫よけスプレーを使うことも重要ですが、その選び方にも注意が必要です。
「アロマのスプレーを好む女性もいますが、アロマの場合、効きめは薄いでしょうね。ブユを寄せつけないためにオススメなのは、“ディート”という匂いのきつい成分が入っている虫よけスプレーです。露出しているところに満遍なくかけるといいでしょう」(松本医師)
ちなみに、「体温が高い人は刺されやすい」「刺されやすい血液型がある」といった“都市伝説”の真偽をお聞きしたところ、どちらもまったく根拠はないそうです。
最後に、それでも刺されてしまった時はどう対処したらいいか、松本先生直伝のアドバイスをメモします。ブヨに刺されたときに役立ててくだください。ゴルフ仲間にもぜひ教えてあげましょう。
【虫刺されメモ】
1.刺されたことに気がついた時点で血が出ていたら、患部を指でつまみ唾液腺物質を押し出します。初期に行なうとかなり悪化を防げます。
2.とりあえず冷やします。流水で流す、冷たいペットボトルを当てる、冷感スプレーをかけるなど方法を探しましょう。
3.温めると炎症が広がって痒くなったり、腫れたりしやすいので、ラウンド後は浴槽に浸からないようにします。当日はアルコールもとりすぎないようにしましょう。かくとばい菌が入ったりして悪化しやすいので注意が必要です。
4.自宅に花粉症の抗アレルギー薬があれば飲んだほうがいいでしょう。
5.足を下ろすと炎症やむくみが広がるので、足を高くして寝ましょう。
腫れたり、熱をもったり、痛みがある場合は、翌日必ず皮膚科を受診してください。