吸う:吐くを1:2にする“ワン・ツー呼吸法”
ミスショットが続いて止まらないとき、皆さんはどんな対処法をとりますか? 構えの方向やボールの位置、トップの形……人によってポイントは違うかもしれませんが、多くのゴルファーはスイングチェックをすることによってクラブの振り方を修正してミスを止めようとするでしょう。

しかし、自律神経の研究で知られる小林弘幸先生(順天堂大学医学部教授)は「アマチュアの場合、スイングチェックでミスが止まるかというと、あまり期待はできません。それより“ワン・ツー呼吸法”をするほうが効果てきめん。即効で気持ちが落ち着き、ミスを抑えられます」と、必殺の呼吸を教えてくれました。
“ワン・ツー呼吸法”とは、一体どういう呼吸法なのでしょうか。小林先生によると、やり方は至ってシンプルです。「息を吸う長さを1とすれば、息を吐く長さはその倍の2にします。つまり、吸うのと吐くのとが1対2になる呼吸法です」
声を出さずにテンポを取るとやりやすいので、皆さんもこれを読みながらぜひご一緒に試してみてください。立ったままでも座ったままでも大丈夫です。無意識に前かがみになっている方が多いので、背筋だけ、スッと伸ばして行ないましょう。
まず、「イーチ、ニー」で息を吸います。次に、「イーチ、ニー、サーン、シー」で息を吐きます。これが1セット。もう少し長いテンポでやりたい方は、「イーチ、ニー、サーン」で息を吸い、「イーチ、ニー、サーン、シー、ゴー、ローク」で息を吐きましょう。いずれにしても、吸うときの倍の長さをかけて息を吐き切ることがポイントです。鼻から吸って、口を少しすぼめてゆっくり長く吐くとやりやすいと思います。
なぜこれでミスが止まるかというと、「一つのミスショットをするとストレスが生じて交感神経が高まり、呼吸が浅く速くなります。そういう時にゆっくり深く呼吸をすると乱れていた自律神経が整います。血管が広がって全身の血流が改善され、心身がリラックスした状態になるからです。力みもなくなり、スムーズにクラブを振っていけますよ」(小林先生)。
自律神経を整えてダボ・トリを続けないことが大事
ミスが続いたら、まずは自律神経を立て直しましょう。そうすることで気持ちの落ち着きを取り戻し、スイングリズムを整えるのです。皆さんも早速、次のラウンドからミスした後のショットを打つ前に“ワン・ツー呼吸法”を行なってください。1セットでもOKですし、グリーンが空くのを待つ、誰かが先に打つのを待つ、といったときは2~3セット繰り返してもいいでしょう。
アマチュアゴルファーは、1つのミスからダブルボギーやトリプルボギーを叩いてしまいます。ビギナーのうちはダボやトリは想定内ですが、大事なのはそれを2ホール続けないようにすること。さらに3ホール続くと「今日はもういいや」と諦めてしまうからです。そうなる前に悪い流れを断ち切るには、一度でもミスショットをしたら次のショットを打つ前に“ワン・ツー呼吸法”を行なう習慣をつけるのが良さそうです。
「この呼吸法は、副交感神経を活性化させるのに効率的です。即効で自律神経が整いますので、池越えの場面でプレッシャーを感じたとき、入れごろ外しごろのパットを集中して打ちたいときなどにも行なうと、すぐに呼吸が深くなってリラックスできます」(小林先生)
ミスショットが続いたときだけでなく、プレッシャーを感じたとき、集中力がないとき、イライラしたときにも有効です。ぜひお試しください。
■小林弘幸(こばやしひろゆき)/順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認ドクター。国内における自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティストのコンディショニングやパフォーマンス向上指導に携わる。『自律神経を整える習慣・運動・メンタル』(池田書店)、『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)など著書多数
【自律神経とは?】
全身に張りめぐらされた末梢神経で、内臓の働きや血液の流れや体温調整など生命を維持するための機能を司る。自律神経は「交感神経」と「副交感神経」とに分けられ、「交感神経」は体をアクティブにする役目、「副交感神経」は体をリラックスさせる役目を担っている。車に例えると、アクセルとブレーキのように、両者が交互にバランスよく働くことによって心身ともに快調を保つことができる。このバランスが乱れると、スポーツや仕事のパフォーマンスに影響があるだけでなく、身体的にも精神的にもダメージを与える。