コールオンの基準は次のティーが詰まっているかどうか
パー3ホールで、ボールをグリーンに乗せた前の組が、後ろの組に向かって「どうぞ」と合図して打たせることがあります。プレーの進行を全体的にスピードアップするための「コールオン方式」です。

ただ、コールオンをしたからといって必ずしもプレーが早くなるわけではありません。セルフで回る場合は、前の組にならうかティーイングエリア付近の「混雑している時はグリーンに乗ったら後続組に合図をしてティーショットを打たせてください」という立て看板、カート備え付けの注意書きなどに従うのが無難ですが、コールオンするかしないかの判断は、最終的に各組で行ないます。
後ろの組に打たせるか、打たせずそのままプレーするか。迷いがちな判断をどうやって見極めたらいいでしょうか。首都圏にあるゴルフ場でキャディーの仕事をしているNさんにお聞きしました。
「前の組を見て判断することが多いですね。次のティーイングエリアで1~2組待機している時は、自分の組のプレーを進めてもどうせ詰まりますから、後ろの組を打たせます。反対に前の組がスムーズに進んでいる時は、その流れについて行くほうが早くなりますので、後ろの組には打たせず先に行きます」
前が空いていれば自分たちのプレーを進める、詰まっていたらコールオンするという判断基準はセルフプレーでも参考になります。
もしプレーヤーの1人がバンカーやアプローチのミスを連発して行ったり来たりしてしまったとしても、見極め方は同じです。
「まだ前が詰まっていたら、グリーンに乗った3人にマークをしておいてもらい、最後の1人が乗ったらそのボールをマークしてコールオンします。もし前が空いてしまったら、最後の1人がグリーンに乗ったらすぐ『お先に行かせていただきます』と後続組に大きな声で合図をすることで、プレーヤーにもペースアップの意識を共有してもらいます」
キャディーさんほど冷静に見極められなくても、こうした判断基準が頭の片隅にあれば焦ったり慌てたりしたとき役に立ちそうです。
コールオンをする場合、グリーンにいる前の組は全員ボールをマークして拾い上げ、ティーイングエリアにいる後ろの組に「どうぞ」と合図して、退避ネットの陰などの安全な場所に移動します。たまに、ネットの後ろに避難せず「ピンと重なる位置にいるのはマナー違反だし危ないんだよ」と、わけ知り顔の人もいますが、ネットから出ることが最も危険なのは言うまでもありません。
忘れがちなのはクラブです。アプローチに使ったクラブやパターはグリーン周りに置き去りにせず、持って避難します。カートが近くにあれば、退避ネットのところへ行く途中や後ろの組の打つ人が代わるタイミングでバッグへ戻してもいいでしょう。
後ろの組がグリーンに乗せてきたら「ナイスオン」と声をかけたり軽く拍手するのはもちろんOKですが、打ってきたボールは基本的に追わず、触れずがベターです。ネットの後ろにいて打球が白杭を越えたのが見えればOBを伝え、見えなくても探しにまでは行かなくていいでしょう。また、後ろの組がグリーンに乗せてきた球は、ラインにかかる場合のみマークをして、終わったらマークした人が元に戻します。
前の組がグリーンをやっている間に準備は万端に
一方、コールオンされた後ろの組は、「どうぞ」とグリーン上から合図されたら、速やかに打たせてもらうのが自然です。一番最初に打つ人は手を上げてこれから打つ合図を返しましょう。
前の組はまだホールアウトしていないのにプレーを一旦中断して打たせてくれるのですから、「打たせて当たり前」「早く打たせろ」といわんばかりの態度はもってのほか。最後の人はショット後「ありがとうございました」と、全員が打ち終わった合図をするのが望ましいです。
後ろの組で1オンに成功したからといってグリーンにずけずけ上がってボールを拭いたりする人もいますが、これも大変なマナー違反です。前の組がホールアウトするまでグリーンには上がらないようにしましょう。
コールオンをするかしないかは前の組の判断によることがほとんどですが、コールオンしてプレーの進行が早くなるかどうかは、それを受けた後ろの組によるところが大きいものです。
「後ろの組全員が1オン、もしくはグリーン周りに打てれば進行は早くなりますが、アマチュアはどうしてもそうはいきません。ショートホールでもOBに備えて予備ボールをポケットに入れておいて暫定球を続けて打ったり、特設ティーを利用したりします。チョロをした人がいれば、状況にもよりますがその人にカートを預け、他の人はアプローチウェッジとパターを持って第2打地点へ移動するといったことはします」(学生ゴルファーのYさん)
小さな工夫ですが、ミスをしがちなビギナーの方には参考になるのではないでしょうか。
いろいろなケースを見ると、後ろの組にもプレッシャーがかかってきます。
「『自分たちのショットを見られたくない』『のびのびやりたいから先に行ってほしい』というプレーヤーもいらっしゃいます。そういう場合は、ティーイングエリアで詰まって前の組と一緒になった時に『見られると緊張しちゃうんで、先に行ってください』と声をかけておくといいですよ」(前出のキャディ・Nさん)
また、前の組の進行が明らかに遅く、1ホール近く空いているのがティーイングエリアから見て取れたら「どうぞ行ってください」と促すのがベターです。
そもそも、なぜパー3ホールでコールオンするとプレーの進行が早くなるのかというと、前の組がグリーンでパットをしている間にティーショットを済ませた後ろの組がグリーンの近くまで歩けるからです。
特に距離の長いパー3やグリーンの難易度が高いパー3では、前の組がグリーン上でプレーしている間に、後ろの組はできることを進めておくのがコツです。ティーショットを打てば、移動したり次打の準備をしたりできるので、そのぶん時間を短縮できます。ほんの少しかもしれませんが、各組がたとえ1分でも短縮したら、全体の流れはかなり早くなると考えられます。
距離が長いなど高難度のパー3ではコールオンは必須
距離が長く、グリーンの難易度が高いショートホールといえば、トーナメントの舞台にもなる東京よみうりCCの18番ホールを思い浮かべるゴルフファンも多いでしょう。その超難ホールの距離も傾斜もすべて再現したのが、千葉よみうりCCの18番。ビギナーさんや女性のティーから158ヤード、中間のティーから189ヤード、いわゆるレギュラーティーから202ヤード、バックティーから224ヤードという距離もさることながら、難グリーンも有名な名物ホールです。
千葉よみうりCC総支配人の枝川五輪男さんは、コールオンの必要性を次のように話してくれました。
「当コースでは、コールオンは必須です。というのも、このホールは距離があるうえ向かい風になりやすいため、ドライバーやユーティリティーを持つ方が多いからです。若い方でもアイアンを持つ人はまずいません。なかなか1オンしませんし、アプローチをカップの上につけてしまうと、ビギナーの方だとグリーンを飛び出したり10パットしたりするケースもあるのです。どうしてもグリーンに乗ってから時間がかかるので、少しでも進んでもらうため、コールオンをお願いしています」
千葉よみうりCCでは、カートについているナビゲーションシステムによって18番ホールに2~3組詰まっていることを察知したら、職員がフォアキャディーとして向かうそうです。
「プレーヤーがボールをグリーンに乗せたらすぐネット後方へ移動していただき、後ろの組に打ってもらいます。今の時期は北風が吹き付けるため、ただ待つのもお客様に辛い思いをさせてしまうからです。コールオン方式で少しでも進んでいただく方が体を動かしてもらえますし、全体的なペースアップにもつながります」
プレーヤーに少しでも気持ち良くプレーしてもらいたいというゴルフ場の配慮を感じます。セルフプレーでも、前の組、後ろの組同士で思いやる気持ちをもち、必要に応じてコールオンを使ってスムーズな進行を心がけたいものです。