ポケットからサッとボールを落とすのが「卵を産む」
ゴルフは、自己申告のスポーツであり、審判がいないというところも他のスポーツにはない特徴の一つです。スコアを自分自身で計算して記録していくので、残念ながらゴマカシを働く人もなかにはいます。

ゴルフには、さまざまなスラングがありますが、その中のひとつに「卵を産む」という不正行為を表すスラングがあります。卵を産むとは、具体的にどのような行為を指すのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。
「OB周辺や林のなかにボールが飛んでいき、ボールをロストして見つからない際に、『ここにあった!』とあたかもボールを見つけたかのような素振りを見せて、着弾付近にポケット等からインプレー以外のボールを取り出して落とす行為を『卵を産む』といいます」
「当然ながら、ティーショットでボールをロストしたのであれば、打ち直しか暫定球を打っておく、もしくはプレーイング4から続ける必要がありますが、罰打を逃れるために卵を産むという不正行為を行うわけです」
ティーショット等で絶対にOBではない方向に打ったのにもかかわらず、ボールが見つからない際に卵を産みたいと考える人もいると、飯島氏は話します。
「たとえば、深いラフにボールが入ってしまいロストした際には、罰打を受けるのはもったいないと考えて、卵を産もうと考える人も一定数いますね。絶対にOBになっていないにもかかわらず、罰打を受けるのは気持ち的に納得がいかないのかもしれません」
「しかし本来、ゴルフは“あるがまま”の状態でプレーすることが求められます。どんなに打ちにくいライであっても、OBを打ってしまったとしても、そこからどのように立て直していくかもゴルフの醍醐味の一つです。正直、不正行為により良いスコアを出して満足できてしまうのであれば、ゴルフの本質をまだ完全には理解できていないのではないかと感じます」
気の知れた同伴者であれば、卵を産む行為を見つけた際は、指摘したり笑い話にしたりすることができるかもしれませんが、お一人様ゴルフなど、素性を知らない初対面の人がそのような行為をしていた場合は、指摘するにも勇気がいるので、より不快感を与えてしまうことでしょう。
また、基本的にロストする場所は林の中や深いラフなどライが悪いところが一般的なので、卵を産んで罪悪感のなか無理やり打ったとしても、ミスショットになり、実際はプレーイング4から始めたほうが良かったとなってしまうケースもありがちです。