説明不足にいらだつPGAツアー選手とは対照的に満足げなリブゴルフ勢 「古巣に戻るつもりはない」 | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

説明不足にいらだつPGAツアー選手とは対照的に満足げなリブゴルフ勢 「古巣に戻るつもりはない」

青天の霹靂だったPGAツアー・DPワールドツアー連合とリブゴルフのスポンサーであるPIFの和解。それから1カ月近くがたつ現在も、選手たちに対する十分な説明はなされていない。いらだつPGAツアー選手とは対照的に、リブゴルフ勢は「ハッピーだ」と、余裕しゃくしゃくの表情を見せている。一方、歴史的和解は、お互いに訴訟を回避したいがための打算的手打ちだったとする見方が、米メディアから出てきている。

選手たちにはっきり伝えられたのは「裁判が終わった」ことだけ

 先週のロケットモーゲージクラシック(ミシガン州デトロイト)開幕前、PGAツアーの選手会理事会が開かれ、ローリー・マキロイやパトリック・カントレーなど選手を代表する理事10名がツアー側の代表2名と顔を突き合わせた。

PGAツアーとPIFの和解が発表された後の公式会見でのローリー・マキロイ。表情がすべてを物語る 写真:Getty Images
PGAツアーとPIFの和解が発表された後の公式会見でのローリー・マキロイ。表情がすべてを物語る 写真:Getty Images

 ジェイ・モナハン会長は「体調を崩して休養中」とされているため、ツアー側からは会長代行を務めるロン・プライスCOOとオペレーションの部長職に相当するタイラー・デニスの2名が出席。

 質疑応答は実に5時間超に及んだが、その割には「これといった前進はなかった」「安心も確信も得られなかった」といった声が出席した選手たちの間から漏れ聞こえてきた。

 PGAツアーとDPワールドツアー、リブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF」の三者による統合合意が電撃的に発表されたのは6月6日のこと。

 統合が成立したあかつきには、三者は営利法人の新組織を設立し、PIFのヤセル・ルマイヤン会長が新組織の会長となり、モナハン会長はその下でCEOに就任すること、そしてPGAツアーは現在の名称のまま維持されることなどが、発表時にモナハン会長から出された文書に記されていた。

 しかし、PGAツアーやDPワールドツアーの具体的な未来図は文書では言及されておらず、先週の理事会においても、ツアーの先行きをはっきりと思い描くことは、結局、できなかった様子である。

「モナハン会長はカムバックするのか?」という質問に対しても、プライスCOOらは「ジェイは戻ってくる。回復しつつある」と答えたそうだが、心身の健康上の話ゆえ、「必ず」という保証はもちろんない。

 だが、唯一、「リブゴルフとの訴訟は終了した。リブゴルフから出されていたすべての訴状は取り下げられたし、こちらの訴状もすべて取り下げた」ことだけは、はっきり明言されたとのこと。しかし、肝心の選手たちの不満や不安は何一つ解決も解消もされずじまいだった。

ケプカもDJも「この場所にいることでハッピーだ」

 一方、リブゴルフのほうはどんな様子なのかと言えば、PGAツアーの選手たちとは対照的に、大半は満足げな表情を見せている。

 ブルックス・ケプカは「僕はこの場所にいることでハッピーだ」と語り、ダスティン・ジョンソンも「僕もハッピーだし、リブゴルフはこれからさらにベターになっていく」と楽観視している。

 フィル・ミケルソンは「PGAツアーでは毎週のように、いろんな雑事に余計なエネルギーを使わされてきたが、リブゴルフではそういうことのすべてが即座にフィックスされる。リブ以上に、いい場所はない」と絶賛している。

 統合合意が実現されたら、リブゴルフ選手である彼らが古巣のPGAツアーやDPワールドツアーへ「戻るための方策も講じていく」と、モナハン会長から出された文書には記されていたが、リブゴルフ選手たちは「戻るつもりはない」「戻る意味がない」と突き放し、「リブゴルフにいることが最高」と言い切る。

 とはいえ、その文書によれば、統合成立後は、リブゴルフを統括管理する権限をモナハン会長が持つとされており、モナハン会長によってリブゴルフが解散・消滅させられる可能性は「きわめて大きい」「現実的」と米メディアは見ていた。

 だが、モナハン会長が体調不良などによって会長業務に「復帰できない」「復帰しない」ということになれば、逆にリブゴルフが生き残る可能性が高まっていく。

 そんな中、先週のスペイン戦の開幕前にPIFのルマイヤン会長が「リブゴルフは僕のベイビーみたいなものだ」と語った。しかし、「だからリブゴルフはなくならない」と考えるのは、さすがに短絡的である。

 ルマイヤン会長は以前から「リブゴルフは僕のベイビー」というフレーズを何度も口にしており、それならば、今後もかわいいベイビーをひたすら育てていけば、それで良かったはずである。

 マネー合戦となれば、PGAツアーやDPワールドツアーがPIFの足元にも及ばないことは、すでに自明の理だったのだから、ルマイヤン会長がリブゴルフに全力投球していけば、米欧ツアーはじり貧になっていくことは予想できていたはずだ。

 それなのに、PGAツアーから唐突に持ち掛けられた統合話に合意し、かわいいベイビーであるはずのリブゴルフの今後をPGAツアーの会長に委ねることにも合意したのだから、いくらルマイヤン会長が「リブゴルフは今後もあるよ」と言ったところで、その言葉を鵜呑みにすることは、もはやできないと考えるべきである。

PGAツアーは「お金」、PIFは「資産の秘匿性」を守りたかった!?

「誰かのためでなければプレーする意味はない」 リッキー・ファウラーの優しすぎるシーン

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PGAツアーとPIFの和解が発表された後の公式会見でのローリー・マキロイ。表情がすべてを物語る 写真:Getty Images
PIFのヤセル・ルマイヤン会長(左)とリブゴルフのグレッグ・ノーマンCEO 写真:Getty Images
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