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説明不足にいらだつPGAツアー選手とは対照的に満足げなリブゴルフ勢 「古巣に戻るつもりはない」
青天の霹靂だったPGAツアー・DPワールドツアー連合とリブゴルフのスポンサーであるPIFの和解。それから1カ月近くがたつ現在も、選手たちに対する十分な説明はなされていない。いらだつPGAツアー選手とは対照的に、リブゴルフ勢は「ハッピーだ」と、余裕しゃくしゃくの表情を見せている。一方、歴史的和解は、お互いに訴訟を回避したいがための打算的手打ちだったとする見方が、米メディアから出てきている。
PGAツアーは「お金」、PIFは「資産の秘匿性」を守りたかった!?

それならば、PGAツアー、DPワールドツアー、PIFの三者は、なぜ統合に合意したのか。一番の目的は何だったのか。
もちろん、表向きは「トッププレーヤーたちが戦うための機会と場を創出するため」「よりよいツアー環境を整えるため」「ゴルフというゲームの未来のため」とされている。
しかし、そんな立派なことを成し遂げるための統合話であれば、何も水面下でこそこそ交渉を進めなくても、堂々と手順を踏みながら進行させれば良かったはずだ。
あえて水面下で秘密裏に交渉を行なった背後には、大きな声では言いづらいそれなりの思惑が潜んでいたからだと想像される。
その思惑は、一つや二つではないのだろうし、もちろん外部には知りえないものもあるはずだが、米ゴルフウイーク誌のイーモン・リンチ記者は、三者の最大の思惑は「訴訟にストップをかけること。それが三者のトップ・プライオリティだった」と指摘する。
リブゴルフがPGAツアーとDPワールドツアーを反トラスト法違反などで提訴したことから始まった法廷闘争は、両ツアーがリブゴルフを反訴したことで一層複雑化し、長期化も予想されていた。
そうなれば、裁判にかかる費用は莫大な金額に膨れ上がっていく。それ以外にも、リブゴルフ対策として新たなボーナス制度を設けたり、賞金総額2000万ドル級の「格上げ大会」を創設したりで支出ばかりが膨らんでいるPGAツアーにとっては「裁判費用は命取りになりかねない」と見られていた。DPワールドツアー、然り。
それゆえ、米欧両ツアーは、なんとかして訴訟合戦を終わりにしたいという「台所事情」があった。
そしてPIFは、法廷闘争が開始されてからというもの、総資産とその流れを明確に示す書類の開示などを米国の裁判所から求められており、それらを公にすることには「大きな抵抗があり、だから訴訟をストップさせてPIFの資産の秘匿性を死守したかったはずだ」と、リンチ氏は見ている。
PGAツアーもDPワールドツアーもPIFも「トッププライオリティーは法廷闘争を取りやめること」という点で、利害が一致したというリンチ氏の説には大いに頷ける。
三者による統合合意が発表されたとはいえ、本当に統合が実現されるかどうかは、まだ決まってはおらず、PGAツアーやDPワールドツアーはメンバーである選手たちからの合意が得られなければ、統合に向かって動き出すことはできないとされている。
合意後のPGAツアーやDPワールドツアーの詳細も、リブゴルフの行く末も、いずれも何も決まっておらず、モナハン会長も今は不在の状況だ。
それなのに、訴状だけは、あっという間に双方から取り下げられ、法廷闘争だけは「すでに終わりになりました」と、はっきりと告げられた。
選手やファンは、あっけにとられながら「へー、そうなんですね」「とりあえず良かったってことですよね」と返す話だが、統合合意を推し進めた三者は「思惑通りになった」と、ご満悦なのではないだろうか。
統合合意の陰には、そんな事情が潜んでいた様子で、詰まるところ、「選手ファースト」ではなく、「マネーファースト」である。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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