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「最近まで“ザックリ・トップ”を恐れていた」ホブランが米年間王者と26億円獲得 半年で雑なゴルフを卒業できた理由
ビクトル・ホブランがPGAツアーの今季最終戦、ツアー選手権に勝利し、初の年間王者を戴冠。同時に約26億円のビッグボーナスを手にした。しかし、彼が生まれ育ったノルウェーは冬は雪に閉ざされ、ゴルフをプレーできるのは半年しかない。そんな環境から、ホブランはいかにして世界最高峰ツアーのトップに立ったのか。
母国は「屋外でゴルフができる日は1年の半分以下しかない」
PGAツアー選手の多国籍化は、ここ20年ほどの間にどんどん進んできたが、ノルウェー出身選手は、今のところはビクトル・ホブランただ1人だ。
彼の母国は冬が深い雪に覆われる北欧だ。「屋外でゴルフができる日は1年の半分以下しかない」というホブランは、毎年、冬の間は故郷オスロ市内の屋内練習場で腕を磨いたのだそうだ。
そんな乏しい練習環境で育ったホブランが、今季のPGAツアーのプレーオフシリーズで、第2戦のBMW選手権と最終戦のツアー選手権を続けざまに制し、栄えある年間王者に輝いたことは、快挙としか言いようがない。
ホブランが初めてゴルフクラブを握った日から1800万ドル(約26億3700万円)のビッグボーナスを手に入れるまでには、本当にいろいろな出来事があった。
そして、今季の彼の躍進の秘訣を聞いてみたら、そこには私たち一般ゴルファーにとっても大いに参考になるものが多々あった。
エンジニアとして米国に単身赴任していた父親がゴルフクラブを携えてノルウェーに帰国したのは、ホブランが11歳のときだった。
父と子は「どっちが先にうまくなるか?」を競い始めたが、その競争に勝ったのは、言うまでもなく息子であるホブランの方だった。
とはいえ、ホブランが天然の芝の上からボールを打つことができたのは年間5~6カ月しかなく、雪に覆われた長い冬の間はテレビやSNSなどを駆使して情報や知識を得た上で、インドア練習場でひたすら練習する日々を過ごした。それでも彼は世界で「有望アマチュア」と呼ばれるようになった。
大学は米国のゴルフの名門、オクラホマ州立大学へ留学。在学中の2018年に全米アマチュアで優勝し、その資格で19年マスターズと全米オープンに初出場。どちらもローアマに輝いた。
ノルウェー人が全米アマで優勝したのも、マスターズに出場したのも、ローアマに輝いたのも、すべて史上初だった。
その年の秋にプロ転向したホブランはPGAツアーにデビュー早々の20年にプエルトリコで初優勝を挙げ、その年の秋と21年の秋にメキシコで開催されたマヤコバクラシックで連覇を達成した。
21年大会の開幕前日には、練習場でダニー・リーとドライバーの「飛ばしっこ」をしていた際、リーに貸した自分のドライバーがその場で壊れ、大破してしまった。
翌日からは肝心の試合だというのに、ホブランは予備のヘッドに他選手の予備のシャフトを付けてもらった「その場しのぎの仮ドライバー」で戦わざるを得なくなった。
だが、それでもホブランは2位を4打も引き離して堂々連覇を成し遂げた。
屋外練習ができないなら屋内練習で上達してきたホブランは、だからこそ、エースドライバーがダメなら応急処置の仮ドライバーで戦おうと思うことができたのだろう。
そこに彼の気持ちの切り替えのうまさと早さ、メンタリティーの強さを感じさせられた。
「僕の小技の技術レベルは本当に低かった」
PGAツアーにデビュー以来、早々に通算3勝を挙げたホブランだが、「米国本土での勝利はない」「メジャーでは勝っていない」といった陰口を耳にするたびに、「まさに、その通りだ」と頷いたそうだ。
「そして、どうしたら米国のタフなコースで勝てるのか、なぜ勝てないのかを考えた」
そして彼は3つの課題を見い出した。1つは、飛距離は出るものの、安定性と正確性にやや欠けるショットの再現性を向上させること。2つ目は、以前から自分の弱点だと感じていたショートゲームの技術レベルと精度を上げること。3つ目は、賢い戦い方を身につけることだった。
とりわけショートゲームの向上は「急務だった」とホブランは振り返った。
「チップショットやピッチショットに臨むときは、キャディーと一緒に『ダフりさえしなければいい』『トップしなければいい』『とにかくグリーンに乗せさえすればいい』『目の前のバンカーに入れさえしなければいい』と言い合っていたほどで、僕の小技の技術レベルは本当に低かった」
PGAツアーのトッププレーヤーの言葉とは思えないような告白だが、それほどホブランは小技に苦手意識を抱いていた。
今年1月、“トラックマン・マスター”の異名を取るスイングコーチのジョー・メイヨーに師事。最初の1カ月は安定性と再現性の高い「サステナブルなスイング」を身につけるスイング改造だけを行なったそうで、メイヨーいわく、「その間は、小技の話は、あえてしなかった」。
新たなスイングが定着し、ドライバーショットもアイアンショットも精度が高まり、安定してきた今年の3月ごろ、ついにメイヨーはホブランに、こう告げたそうだ。
「300ヤード超をかっ飛ばしたり、1ヤード刻みで距離を打ち分けたりできるキミが、グリーン周りだけはうまくできないという理屈は通らない」
ホブランも、その説明には納得せざるを得ず、以後、メイヨーによる小技の特訓が始まった。その効果はみるみる数字に反映され、昨年は191位だったグリーン周りのランキング(SGAR)が今では55位までアップした。
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