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全米オープンに特別招待のタイガー・ウッズと予選会にこぞって挑むリブゴルフ選手 世界ランキング問題は吹っ切れた!?
全米ゴルフ協会(USGA)は5月2日、6月13~16日にパインハーストリゾート&CC(ノースカロライナ州)で開催される第124 回全米オープンにタイガー・ウッズを特別招待したことを発表。対して世界ランキングが下がる一方のリブゴルフ選手たちは一部を除き、自力で出場を果たそうと最終予選にこぞって挑もうとしている。
「他のメジャー覇者」による出場権が期限切れ
今年の全米オープンの出場資格を満たしていなかったタイガー・ウッズに、USGA(全米ゴルフ協会)が特別招待を授けたことは、すでに世界中で報じられている。
メジャー15勝を誇るウッズに「えっ、全米オープン出場資格がなかったってホント!?」と、ちょっぴり驚いた方々は少なくなかったことだろう。
マスターズと全米プロは過去のチャンピオンに生涯シードを授けているが、全米オープンは過去の優勝者であってもライフタイムで出場できるわけではない。USGAは「過去10年以内の全米オープン覇者、過去5年以内の他のメジャー大会覇者」という条件付きで、全米オープン出場資格を付与している。
ウッズが最後に勝利を挙げたメジャー大会は2019年マスターズ。それゆえ、ウッズの全米オープン出場資格は2023年大会で切れてしまった。そして、戦線離脱が続いていたウッズの世界ランキングは、すでに789位まで低下しており、世界ランキングのトップ60以内など他の道からの出場資格獲得も叶わない。
残る方法は、最終予選に挑むか特別招待を得るかだったが、肉体の状態を考えれば、最終予選はあまり現実的ではない。
そんな中、USGAは5月2日、ウッズに特別招待をオファーした。
ウッズ自身、「全米オープンはアメリカのナショナルオープンであり、特別な大会だ。僕のキャリアを構築してくれた大会でもあり、特別招待を得たことは、とても名誉なことだと受け止めている。今年の全米オープンで戦うことに、とても興奮している」と、オファーを喜んで受け入れたことをSNSで発信していた。
ウッズにとって、パインハーストNo.2が舞台となる今年の全米オープンは、ウイングドフットで開催された20年大会で予選落ちして以来、4年ぶりの出場となる。通算出場は23回目となるが、そのうち優勝は3回、トップ10入りは8回。言うまでもなく、突出した戦績を収めてきた。
とりわけ過去3度の優勝は、いずれも歴史に残る勝ち方だった。ペブルビーチで開催された00年大会では2位に15打差の圧勝を飾った。ベスページが舞台となった02年大会では、フィル・ミケルソンとの熱戦で世界中のゴルフファンを沸かせた。
右足を骨折していながら翌日のプレーオフまで戦い抜いて勝利した08年の「トーリーパインズの死闘」は、ゴルフ界の語り草となっている。
USGAのチャンピオンシップオフィサーを務めるジョン・ボーデンヘイマー氏は「全米オープンのストーリーは、ウッズ抜きでは語れない」と言い切り、それがウッズに特別招待をオファーした理由だと説明。
その決定に異を唱える選手は、少なくとも公の場では皆無なのではないだろうか。
自力の挑戦を頑なに拒否しているリブゴルフ選手も
ところで、「全米オープン出場資格を満たしていない選手」といえば、リブゴルフにはそういう選手が多数いる。
もちろん、「リブゴルフ選手だから」ということで排除されているわけではなく、USGAのマイク・ワン会長は「出場資格さえ満たしていれば、両腕を広げて歓迎する」と笑顔で語っている。
さらにワン会長は、「全米オープン出場者のうち、地区予選や最終予選から挑んで出場資格を得る選手は、1大会で平均74.2人もいる」と付け加えた。毎年、フィールドのほぼ半数が地区予選や最終予選からの自力出場なのだから、出場資格がないリブゴルフ選手には、是非ともその道から挑んでほしいという願いを込めて、ラブコールを送っているのだ。
リブゴルフ選手の中で、今年の全米オープン出場資格をすでに満たしているのは、ブライソン・デシャンボー、ダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカ、フィル・ミケルソン、ジョン・ラーム、キャメロン・スミス、マーティン・カイマー、ティレル・ハットン、エイドリアン・メロンクの9名のみ。
セルヒオ・ガルシアやパトリック・リード、チャール・シュワーツェル、ヘンリク・ステンソンなど35名は、ワン会長が願っている通り、最終予選から挑もうとしている。
かつては世界ランキングの対象ツアーとして認められないことに不平不満を爆発させていたリブゴルフ選手だが、世界ランキングを諦めた状態になっている今は、自力でメジャー出場を目指す積極姿勢が見て取れ、その潔さにはスポーツマンシップが感じられる。
ただし、リブゴルフ選手の中で唯一、自力の挑戦を頑なに拒否している選手がいる。米国人選手のテーラー・グーチは「最終予選から挑むつもりはない」と言い切り、実際、エントリーもしていない。
そういえば、グーチは今年のマスターズ開催前、マスターズ優勝とキャリアグランドスラム達成を悲願に掲げていたローリー・マキロイについて、こんなことを言っていた。
「もしもマキロイが今年のマスターズで優勝してキャリアグランドスラムを達成したとしても、それは(僕たちリブゴルフの)ベストプレーヤーが不在の場所で達成されるという意味では、※(米印)付きの偉業ということになる」
グーチのこの発言は、ゴルフファンからもゴルフ界からも「まったく、いただけない」「スポーツマンシップのかけらも感じられない」と激しい批判を受けた。
だが、グーチはグーチで、世界中のゴルファーの強さの指標として、世界ランキングに代わる新たな指標を創出する必要性を唱え、「それができない限り、僕たちリブゴルフ選手が正当に評価されることはなく、メジャー大会にも出場できない」と主張している。
しかし、そんなグーチの他力本願的で後ろ向きな考え方に賛同する者は、リブゴルフにおいても皆無だったようで、どうやら全米オープン最終予選会場は、グーチ以外のリブゴルフ選手で賑わいそうである。
果たして、何名がパインハーストへの切符を手に入れるのか。楽しみに見守ろうと思う。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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