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リブゴルフのシード権争いは“出来レース”!? 降格危機のミケルソンが余裕しゃくしゃくだった理由
リブゴルフの個人戦最後となったシカゴ戦では、来季の出場資格を確保できるかどうかの瀬戸際にあった選手たちの動向が注目され、崖っぷちに立たされていた選手たち自身、戦々恐々としていた。しかし、チームキャプテンで看板選手のミケルソンらには降格危機などなかったのではないかと囁かれている。
あのミケルソンがシード落ちするかも!?
リブゴルフの2024年シーズンは全14試合だが、最終戦のチームチャンピオンシップはその名の通りチーム戦のみとなるため、個人戦は先週のシカゴ戦が今季のラスト大会だった。
そのシカゴ戦では、来季の出場資格を確保できるかどうかの瀬戸際にあった選手たちの動向が注目され、崖っぷちに立たされていた選手たち自身、戦々恐々としていた。
その中でも最も大きな注目を集めていたのが、リブゴルフにおける個人ランキング44位でシカゴ戦を迎えたフィル・ミケルソンだった。
とりわけアンチ・リブゴルフの人々は、リブゴルフの象徴的存在である「あのミケルソンがシード落ちするかも!?」と興味津々で、シカゴ戦のスコアや順位の動きに目をやっていたのではないだろうか。
終わってみればミケルソンはランク46位で、ぎりぎり来季のシード権を維持したが、米スポーツイラストレイテッドによると、ミケルソンはシカゴ戦の開幕前から「僕は一生涯、リブゴルフやチームと関わりながら生きていくことになる」と言い切り、何を恐れる様子も見せず、平然としていたという。
リブゴルフ選手の出場権やシード権に関する規定はそもそも複雑難解で、外部に公表されないうちに、いつの間にか規定が変更されていたというケースも過去にはあった。
さらには昨年末にジョン・ラームがリブゴルフへ移籍し、ラームをキャプテンとする13番目のチームが新たにつくられたことで、「4名1組×12チーム=48名」というそもそもの構図が崩れ、「4名1組×13チーム+リザーブ選手5名=57名」となったために、話が一層、複雑化した。
その影響でシード確保やシード落ち等々に関わる規定も一部変更されるはずだと言われていたが、米スポーツイラストレイテッドによると、その通り、先週のシカゴ戦の開幕前にリブゴルフは規定の変更を選手たちに通達していたという。
かつての規定では、翌シーズンのシード選手となるのはリブゴルフの個人ランキングのトップ24のみで、「オープンゾーン」と呼ばれる25位から44位はチーム間のトレード対象、そして45位以下が「ドロップゾーン」と呼ばれ、いわゆるシード落ちとされていた。
だが、新たな規定では、トップ48が来季のシード選手(25位から48位はオープンゾーン)、そして49位以下はシード落ちのドロップゾーンとされている。
驚かされたのは、キャプテンに関する変更だ。これまではチームのキャプテンはランキングで下位に沈んでもシード落ちはしないことになっていた。
だが、新規定ではキャプテンもトップ48に入り損ねれば、シード落ちすることになった。
ミケルソンは「ハイフライヤーズ」のキャプテンゆえ、昨年まではシード落ちを危惧する必要はなかった。だが、この新規定ができたことで、今回はシード権を維持できるかどうかの瀬戸際に初めて立たされた。
巷では、スーパースターのミケルソンが「もしもシード落ちしたら、アジアンツアーに行くのだろうか?」「プロモーションイベント(予選会)からのカムバックを目指すのだろうか?」などと囁かれていた。
「僕は一生涯リブゴルフと関わりながら生きていく」
しかし、ミケルソン自身は動じる様子は微塵も見せず、余裕しゃくしゃくだった。
「僕は一生涯、リブゴルフやチームと関わりながら生きていくことになる」
リブゴルフでは、それぞれのチームはフランチャイズ化されており、チームを率いるキャプテンは自分のチームの株式の25%を取得している。
それゆえ、トップ48に入り損ねた場合、シード選手としてリブゴルフの試合に出ることはできなくなるが、チームのキャプテンとして、そして株主として、チームの運営や経営に携わるビジネス上の道が残されている。
だからこそ、株を手放さない限りは一生涯、チームやリブゴルフそのものと関わりながら生きていくことができるというわけだ。
ミケルソンは、こんなことも言っていた。
「僕は54歳。選手としては……」
語尾を濁した「……」の部分には、果たしてどんな言葉が入るのか?
フツウに考えれば、すでにシニア年齢の54歳だから「そろそろ引退」といったフレーズが隠されていることが想像されるだろう。
だが、ミケルソンの場合は、戦いの第一線から「去る」ことではなく、むしろ「長く生き続ける」ことを考えている様子だ。
「僕はきわめて現実的に自分の未来を見つめている」
これまでの戦績により、ミケルソンは今後6~7年間はメジャー4大会のうちの少なくとも3大会に出場することができる。
マスターズと全米プロは過去の優勝者として生涯出場することができる。全英オープンも過去の優勝者として出場できるのだが、R&Aは「60歳まで」という年齢制限を設けているため、ミケルソンは「あと6回」ということになる。
さらに、21年の全米プロ優勝により25年までは全米オープンにも出場できるため、ミケルソンは来年まではメジャー4大会すべて、26年以降、60歳になる30年までは、少なくともメジャー3大会への出場がギャランティーされている。
たとえリブゴルフでシード落ちしてプレーできなくなったとしても、メジャー3~4大会に出ることで、陽の当たる場所に「今も立っている」という現役感覚を味わうことができる。
「僕は、そうやってツアープロが(ツアーやメジャー大会といった場所で)長くプレーできる文化をつくり出したい」
シニア年齢ゆえに、リブゴルフの戦いからは離れ、メジャー大会のみに絞る形で出場試合数を減らしたのだと考え、空いた時間はリブゴルフのチームの運営・経営というビジネスに注力するのであれば、それはそれで、新たなハッピーライフになる。
何がどう転んでも、いろんな面、いろんな意味で「僕は安泰だ」「ハッピーだ」と言い切るミケルソン。それが心の底から出ている言葉なら、まさしく彼は安泰でハッピーなゴルフ界の「勝ち組」ということなのだろう。
降格圏に沈んだバッバ・ワトソンも来季安泰!?
ところで、シード落ちの危機にあったキャプテンは、ミケルソン以外にも、ヘンリク・ステンソン、イアン・ポールター、マーティン・カイマー、バッバ・ワトソンなど数人がいた。
シカゴ戦を終えて、最終的にシード落ちのドロップゾーンに入ったのは、ランク53位に沈んだワトソンのみだった。
しかし、米スポーツイラストレイテッドがリブゴルフのオフィシャルから手に入れた秘話によると、ワトソンは大勢のギャラリーを引き寄せるスター選手ゆえ、リブゴルフには必要な存在だという「ビジネス上の理由」により、来季もプレーできることになる見込みだという。
そんな特例がまかり通るとしたら、規定はあってないようなもの。そうするのなら、最初から「人気選手は、ビジネス効果が高いため、シード落ちしない」という文言を、あらかじめ規定の中に盛り込んでおくべきではないだろうか。その文言自体、まったく納得できるものではないが、あとづけの特例よりは、ややマシである。
結局、ミケルソンがシード落ちのランクだったとしても、同じことが起こったのだと考えると、ミケルソンの余裕しゃくしゃくぶりが、あらためて「なるほど」と思われた。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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