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メタもグーグルも雪崩を打ってトランプ氏に擦り寄る米経済界 “蜜月”リブゴルフに対し“排除”の過去持つPGAツアーは?
リブゴルフが2025年シーズンのスケジュールを発表した。かつてPGAツアーの試合を開催していたコースがいくつも加わるなど勢いをアピール。選手たちも強気な発言が目立つのは、かねてから蜜月状態が知られてきたドナルド・トランプ新大統領の影響があるのだろうか。
元PGAツアー開催コースが続々とラインアップに
新年早々の1月7日、リブゴルフが2025年シーズンのフルスケジュールを高らかに発表した。
「4シーズン目を迎えるリブゴルフは、今季も年間14試合を開催する。戦いの舞台は実に9か国、4大陸にわたり、新規開催コースは5つもある」

今季は2月のサウジアラビア戦からキックオフし、オーストラリア、香港、シンガポールと続いていく。4月には、かつて55年間の長きにわたり、PGAツアーの開催地として親しまれてきたフロリダ州マイアミのトランプナショナル・ドラールへ。このマイアミ戦が今季のリブゴルフの米国内初戦となる。
さらに今季は、メキシコ、米ワシントンDC、米ミシガン州の「元PGAツアー開催コース」が、新規で「リブゴルフ開催コース」になるという。
5月には韓国で初開催すると、戦いの舞台はスペイン、英国へと移り、再び米国に戻って、シカゴ、インディアナポリスへ。そして最終戦のチーム選手権はミシガン州の「元PGAツアー開催コース」だったカーディナル・アット・セントジョンズリゾートで締め括られることになる。
PGAツアーとの統合交渉がいまなお続いている現状下、かつてのPGAツアーの舞台を次々にリブゴルフの舞台に変えた今季のリブゴルフのスケジュールからは、明らかに挑戦的な空気が伝わってくる。
挑戦的に感じられるのは、リブゴルフのスケジュールばかりではない。フルスケジュールが発表されたのと同じ1月7日、今季からPGAツアーにデビューするはずだった若者がリブゴルフへ移籍したことが発表された。
22歳のトム・マッキビンは、北アイルランドのベルファスト出身で、あのローリー・マキロイと同郷だ。幼い頃からゴルフの腕を磨いた場所も、マキロイと同じホーリーウッドGCで、マッキビンはマキロイの年の離れた弟のような存在だ。
高校卒業後にプロ転向したマッキビンは欧州のDPワールドツアーで戦い始め、2023年にポルシェ・ヨーロピアンオープンで初優勝。昨年は勝利こそ挙げられなかったものの、トップ10入りが9回と健闘。
シーズン終了後、DPワールドツアーのポイントランキングで、星野陸也の9位に続く10位(注・有資格者を除く)に食い込み、2025年のPGAツアー出場権を手に入れた。
それなのに、年が明けるやいなや、マッキビンは、これからはPGAツアーではなくリブゴルフで戦うことを発表。米欧ゴルフ界は大いにショックを受けた様子だ。
このタイミングでの移籍が決まったところを見ると、リブゴルフは今まで以上に優秀な若手選手のリクルート活動に力を入れていることが分かる。そして、もはや勧誘すべき対象は、米欧など既存ツアーの大物ではなく、多大なる将来性を秘めた若い選手に移っていることも見て取れる。
リブゴルフ選手のケビン・ナは、PGAツアーの大会の優勝者がマスターズに招待されることを引き合いに出し、「リブゴルフの大会の優勝者もマスターズに招待されて然るべきだ」と、年明け早々に言い放った。
やはりリブゴルフ選手で、リブゴルフのチームの一つであるスティンガーGCのキャプテンを務めるルイ・ウエストヘーゼンは、昨季絶不調で58人中51位に沈んでシード落ちしたブレンダン・グレースを、再びチームに戻したことで、ゴルフファンから大いなる批判を浴びた。
だが、米メディアによると、ウエストヘーゼンは「これはビジネスケースだ。何の問題もない」と言い返し、平然としているという。
そうかと思えば、スペイン出身の24歳、ユージニオ・チャカラは「世界ランキングのポイントはもらえるし、メジャー大会にも出場できると言われたからリブゴルフに入ったのに約束が違う」と怒りの声を上げ、リブゴルフを激しく批判した。
昨季のリブゴルフのポイントランクで39位だったチャカラは、結局、セルジオ・ガルシアがキャプテンとして率いているファイアボールGCから追い出され、今季はすでに別のスペイン人選手、22歳のルイ・マセヴュがチーム入りしたことが報じられている。
こうして見ると、リブゴルフには倫理観や義理人情はあまり感じられず、ビジネスという名目の下で行なわれる不可思議な動きばかりが目立つ。
そして、言いたい放題、やりたい放題で、「やけに強気」という印象を受ける。
トランプ氏の勝利演説で壇上に呼ばれたデシャンボー
なぜ今、リブゴルフはそれほど強気なのか。そう考えたとき、すぐさま思い浮かぶのは、間もなくアメリカ合衆国の大統領に就任するドナルド・トランプ氏の影響だ。
米メディアの報道によると、今、さまざまなフィールドの企業や要人がトランプ氏に擦り寄り、関係を深めつつあるという。メタのマーク・ザッカーバーグCEOや起業家のイーロン・マスク氏の接近ぶりは、すでに世界中で知られている。
そして、朝日新聞の報道によると、「アップルのティム・クックCEOやグーグルのスンダ―・ピチャイCEOらはトランプ氏と会食した。オープンAIのサム・アルトマンCEOらは、トランプ氏の就任式への献金を決めた」とのこと。
そういえば、大統領選の勝利確定後の昨年11月6日にトランプ氏が地元フロリダで勝利演説を行なった際、その場にブライソン・デシャンボーが登場したことが、今さらながらに思い出される。
「ブライソン・デシャンボーはどこだ? まだ球を打っているのか? ここへ向かっている途中なのか? ブライソンは、どうした? どこにいる?」
勝利演説でいきなりプロゴルファーの名前が口にされたことにまず驚かされたが、デシャンボーが壇上に辿り着くと、トランプ氏は「みなさん、ブライソン・デシャンボーです。素晴らしいゴルファー、全米オープン・チャンピオンです。私より、ほんの少しだけ飛ばすプレーヤーだ。ほんの少しだけ、だけどね」といいながら、デシャンボーを親しげに紹介した。
トランプ氏は自身が所有するゴルフ場でリブゴルフの試合を初年度から一貫してホストしており、両者の蜜月はすでによく知られているが、デシャンボーは昨夏以来、トランプ氏と親交を深めており、すでに新大統領の最大級のサポーターになっているといわれている。
全米オープン2勝のパワーヒッターがアンバサダーとなり、リブゴルフとトランプ氏の関係性をより強化していても決して不思議ではない。
大統領選の際、トランプ氏は「PGAツアーとリブゴルフの交渉を私なら15分で解決できる」と豪語していたが、その公約を実現するためにも、デシャンボーが媒介となって何かが起こる可能性は、もちろんある。
米ゴルフ界では「トランプ氏はPGAツアーとリブゴルフの交渉の解決にすでに近づいており、あとは就任を待つだけだ」という声まで上がっている。
その解決は、トランプ氏とリブゴルフの協調路線が核となるのだろうと思える一方で、「いや、ちょっと待てよ」と首を傾げてしまった。そう、リブゴルフがトランプ氏に歩み寄っているように、PGAツアーもアグレッシブにトランプ氏に急接近していても決しておかしくはない。
かつてPGAツアーはUSGAなどの他のゴルフ団体とともに、差別的発言や行動を見せたトランプ氏を既存のゴルフ界から切り離し、トランプ所有コースを戦いの舞台から排除してきた。
しかし、前述した通り、さまざまなフィールドの企業や要人が前言を翻してトランプ氏に擦り寄っているように、PGAツアーも手のひらを返したとしても、おかしくはない。
ひょっとしたら、これからはPGAツアーとリブゴルフがトランプ氏への歩み寄りを競う日々が展開されるのかもしれない。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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