昨季のツアー優勝者平均年齢は“22.8歳” それでも20年以上「トップ10入り」を続けるアラフォー女子プロたちのスゴさ

　“アラフォー”のベテラン3人が最終組で優勝を争った「ヤマハレディースオープン葛城」。優勝したのは37歳の穴井詩だったが、プレーオフで敗れた42歳の全美貞（韓国）と1打差3位タイに入った39歳の藤田さいきも見事なゴルフを見せてくれた。

　2人は、勝てはしなかったがベテランならでは素晴らしい記録をマーク。息の長さを改めて示してくれた。

　1メートルに満たないウイニングパットを決められず、持ち込まれたプレーオフで8年ぶりの優勝を逃がした全にとっては悔しすぎる敗戦だろう。一方で、まだ優勝を狙えるゴルフができるという手応えもあったはずである。

　全が日本を主戦場にするようになったのは2005年、23歳の時だ。韓国ツアーで賞金ランキング2位の実績を持つ身長175センチの大型プレーヤーは参戦1年目に未勝利ながら安定した成績で賞金ランキング12位に入ってシードを獲得する。2年目は3勝を含む19回ものトップ10入りを果たして外国人選手としては初めての年間獲得賞金1億円突破を達成、賞金ランキングは2位に食い込んだ。

　翌2007年にはツアー制度が施行された1988年以降では初めてとなる3週連続優勝を成し遂げるなどツアーを代表する実力者となり、2012年にはついに賞金女王にまで上り詰める。出場30試合でトップ10が実に22回という抜群の安定感でつかんだ頂点だった。

　近年はさすがに成績が落ちてきたが、40歳を過ぎてからも毎年、着実にトップ10入りをマーク。そして「ヤマハレディースオープン葛城」の2位で日本女子ツアー参戦1年目から20シーズン連続でのトップ10入りを記録した。20シーズン連続は史上12人目の快挙だ。

　今回のトップ10が全にとって通算202回目となる。これより多いのはト阿玉（台湾）、吉川なよ子、大迫たつ子、樋口久子、森口祐子、不動裕理、岡本綾子の7人だけ。つまり、錚々（そうそう）たるレジェンドたちに続いて歴代8位につけているのだ。全がいかに長く第一線で活躍してきたかを証明するデータである。

　全が続けているものがもう一つある。それは、ランキングによるシード権獲得である。昨年までで19シーズン連続。ツアー記録は韓国の先輩である李知姫が持つ20シーズン連続である。今回の2位でメルセデス・ランキングは7位に浮上して今年もシード入りに大きく前進。ツアー記録に並ぶ可能性が高まった。

　息の長さでは藤田も負けてはいない。トップ10入りの通算回数では105回で全に及ばないが今回の3位タイで連続シーズントップ10入りを全より長い「21」にまで伸ばしたのだ。

　21シーズン連続でのトップ10入りは樋口久子、大迫たつ子、ト阿玉、李知姫に並ぶ歴代7位タイの記録である。シードを失う苦しい時期もあったが、2022年の「大王製紙エリエールレディス」で実に11年ぶりの6勝目をつかみ、昨年は自己最多の約9100万円を稼いで自己ベストタイの賞金ランキング10位に食い込むなど40歳を目前にしてスケールアップしている感がある。

　昨年のドライビングディスタンスは248.64ヤードで部門19位。若い選手に交じっても、飛距離で見劣ることはない。

　昨年、女子ツアーの優勝者シーズン平均年齢が歴代最年少の22.8歳を記録した。20歳前後の選手ばかりの優勝争いはもはや当たり前になっている。

　そんな時代に実現した“アラフォー”3人の最終日最終組は誰一人崩れることなく最後の最後まで見応えのある戦いを繰り広げてくれた。これからもベテランたちの奮闘を期待したい。