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ケプカのPGAツアー復帰スピード承認はウッズのシナリオ通り!? 「ゴルフ界再統合への“はじめの一歩”で“偉大な一歩”だ」

2026.01.20 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
タイガー・ウッズ ブルックス・ケプカ リブゴルフ(LIV Golf) 砂場Talk(バンカートーク) 米国男子ツアー

PGAツアーがブルックス・ケプカの復帰をスピード承認したことはゴルフ界を驚かせたが、これはタイガー・ウッズの意向が大きく働いている模様。米国が“ホリデーシーズン”となるクリスマスから新年にかけ、復帰に向けての議論を重ねたという。

「ケプカの実績を考えれば、PGAツアーで再びプレーする権利がある」

 モノゴトには、往々にして表と裏があり、多くの場合、“裏”には大物の存在があるものである。リブゴルフから離脱し、PGAツアーへ出戻ることが正式に決まったブルックス・ケプカの復帰劇の陰にも、やっぱり、ある大物の存在があった。

 誰のことか? ほかでもないタイガー・ウッズのことである。

 ケプカがリブゴルフから離脱したことが発表されたのは、昨年12月23日だった。ケプカの代理人から出された声明には「ケプカは、今こそは家庭で過ごす時間をより多く取るべきだと考えている」と記されていた。

 いわば“家庭の事情”が離脱の理由だとされていたのだが、その理由をそのまま受け取った人は、おそらく皆無に近く、ケプカがPGAツアーへの返り咲きを望んでいることは、誰にも想像できた。

 そして、年明けの1月9日にケプカはPGAツアーへの復帰申請を正式に提出。そのわずか3日後の1月12日、PGAツアーは「リターニング・メンバー・プログラム」を示し、ケプカにいくつかのペナルティーを科した上で、彼の復帰を正式に承認した。

 この復帰プログラムを作成したのは、PGAツアーのブライアン・ローラップCEOが創設したFCC(未来競技委員会)とされており、FCCのチェアマンを務めているのがウッズなのだ。

 ウッズ率いるFCCは、ケプカの復帰申請を受け取ってから、たったの3日で詳細なリターニング・メンバー・プログラムを作成し、即座に発表というスピード対応を行ったかのように表面上は見える。

世界のゴルフ界を再び一つにする最大のキーマン、タイガー・ウッズ 写真:Getty Images
世界のゴルフ界を再び一つにする最大のキーマン、タイガー・ウッズ 写真:Getty Images

 しかし、米スポーツイラストレイテッドの取材に応えたウッズは、こう明かした。

「ホリデーシーズンはずっと働いていた。クリスマスも年末年始もなく、(ケプカの復帰に関する)検討作業を行っていた」

 ウッズの言葉から考えると、ケプカはPGAツアーへの復帰の可否や是非を、昨年のクリスマスより以前の早いうちから、ウッズに相談していたことがうかがえる。

 ケプカのリブゴルフ脱退の発表時期がクリスマス直前だったことは、米国社会の多くの動きがほぼ止まるホリデーシーズンを利用でき、FCCがケプカ復帰の検討作業を進める上で実に好都合なタイミングだった。

 そして、FCCがリターニング・メンバー・プログラムを発表し、ケプカの復帰を正式に承認したのは、PGAツアーの2026年シーズンが「ソニーオープン in ハワイ」からキックオフするぎりぎり手前で、ケプカの復帰は今季の開幕に「どうにか間に合った」ことになる。これも実にタイムリーだった。

 ケプカが復帰申請を提出したのはそのわずか3日前だったため、表面的にはPGAツアーとFCCがケプカの復帰を諸手を挙げて歓迎し、超スピード解決を行なったかのようにも感じられる。

 そう、どこからどう見ても、何もかもが、あまりにもグッドタイミングで進んだのだが、それもそのはず、すべてのタイミングは、あらかじめウッズが思い描いたシナリオに記されていたのだと思われる。

 そして、シナリオ通りにコトが進んだ今、ウッズは満足げにこう語った。

「フェアで適正なプランを考えた。ケプカに、どうペナルティーを科すべきか。罰金は必要か。フェデックスカップのボーナスは、ありか、なしか。ホリデーシーズンを通じて、不眠不休で検討を重ねてきた」

「すべての選手を満足させようとは考えていない。ごく少数の選ばれた選手だけを対象とするプランを考えた。これまでゴルフ界でケプカが達成してきたことや彼の多大なる貢献を考えれば、彼にはPGAツアーで(再び)プレーする権利がある」

「ゴルフ界を再統合するためにどうしたらいいか、ずっと考えている」

 振り返れば、“復帰”という言葉は、かつては、しばしばウッズに向けられていた。度重なるヒザや腰の手術、世紀のスキャンダルや交通事故、逮捕劇等々、さまざまな出来事が起こってきた過去の日々において、満身創痍のウッズがいつ戦線へ復帰するのかは、常に大きな注目を集めていた。

 しかし、シニア年齢が近づくにつれ、ウッズにはPGAツアー選手たちのリーダーとしての役割が新たに期待され始め、ウッズ自身、その役割を喜んで買って出ていると言っていい。

 23年6月にPGAツアーのジェイ・モナハン会長(当時)とPIFのヤセル・ルマイヤン会長が電撃的・一方的に統合和解を発表した後、選手からの信頼を一気に失ったモナハン会長と入れ替わる形で、以後はウッズが選手たちを代表する立場に立ち、リブゴルフ側との交渉に当たるようになった。

 リブゴルフが創設され、動き始めた当初は、ウッズはリブゴルフに軽蔑の視線を向け、こう批判していた。

「ノーカット(予選落ちなし)で、ビッグマネーは保証されているリブゴルフは、ゴルフの戦いとは言えない。そんな場所では、選手のモチベーションは皆無だ」

 しかし、PGAツアーの選手理事に就任し、リブゴルフやPIFとの交渉を専任で行う「交渉委員会」を立ち上げてからのウッズは、リブゴルフを批判するのではなく、話し合いによる平和的解決を目指すようになった。

 昨年2月には、ホワイトハウスでのミーティングに参加し、ドナルド・トランプ大統領をはじめとする米国と米ゴルフ界の主要な人物たちと話し合った。

「ゴルフ界が再び統合を取り戻すためには、どうしたらいいかを、あれからずっと考えている」

 ローラップ氏がPGAツアーのCEOに就任し、FCCを創設して、そのチェアマンにウッズを任命したのは、それから半年後のこと。表面的にはローラップCEOがこうした一連の行動を取ったように見えているかもしれないが、コトの成り行きを時系列でたどれば、CEOに就任したローラップ氏に対し、ウッズがFCC創設を進言し、そのチェアマンに自分を任命させたと考えるのが自然である。言い換えれば、FCC創設もウッズのシナリオに描かれていたことだと見ることができる。

 そして、ウッズがホリデー休暇を返上し、不眠不休でケプカのPGAツアーへの復帰をサポートしたワケは、ケプカを復帰させることが、ウッズが目指す“ゴルフ界の再統合”のための大きなステップになると考えたからに違いない。

「僕らは長い時間をかけて、さまざまなシナリオを検討してきた。去年のホワイトハウスでのミーティングから今日まで、どうしたらゴルフ界を再び統合できるかを、ずっと考えていた。完全なる統合を目指すべきか。それとも、ある程度の統合を目指すべきか。そのための方法は、果たしてどうあるべきなのか? 僕らとは異なるツアーもかかわる事柄だが、いずれにしても、ケプカの復帰は、ゴルフ界の統合へ向かうためのファースト・ムーブ(第一の動き)であり、グレート・ムーブ(素晴らしい動き)でもある」

「ワールドクラスの選手を迎え入れれば、挑もう、倒そうと意気を上げるはず」

 ウッズが言う“ゴルフ界の再統合”が、具体的に何がどうなることを意味しているのかは定かではない。

 だが、“再統合”は必ずしもPGAツアーとリブゴルフが一つになることを指しているのではなく、選手たちが喜び、ファンが喜ぶハッピーな状況を作り出し、みんなの心が一つにまとまることこそが統合だと、ウッズは考えている様子である。

「ワールドクラスのプレーヤーを迎え入れれば、PGAツアーの選手たちは、そのプレーヤーに挑もう、倒そうと意気を上げるはずだ。それはファンにとってもうれしいことになる。PGAツアーはファンが望むツアーになることを目指している」

 ケプカの復帰に対して、PGAツアーの選手たちの間には少なからぬ賛否両論が渦巻いている。しかし、世界ランキング2位のローリー・マキロイは、ウッズの言葉やFCCが示した復帰プログラムに賛意を示し、こう語った。

「僕の教科書には、『PGAツアーを強化する取り組みは、すべてグッドだ』と記されている」

 ケプカの復帰は、メジャー5勝の強者がPGAツアーに戻ってくることに加え、他選手たちを奮起させるモチベーションにもなり、PGAツアー全体が盛り上がって強化されるはずである。だから、マキロイはケプカの復帰を歓迎すると言い切った。

 そんなマキロイのリアクションも、ウッズが描いたシナリオに、あらかじめ記されていたのではないだろうか。

文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。

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