雨で視界が狭まり狙うポイントが見えてくる
今大会には過去3度出場して一度も予選を通過したことがない高橋彩華。2週連続優勝を狙うというよりも、まずは予選通過することが第一目標だった。今大会を開催する浜野GCはフラットなコースでフェアウエイも広く、比較的ラウンドしやすいと思われる。しかし、それが高橋にとっては障害となっていたというのだ。

「広いと狙いを絞ることができないので、逆にどこを狙っていいのか分からなくなるんです」と高橋。
昨シーズンはパーオン率が75.44%で2位になるなど、ショットメーカーとして定評のある高橋だが、目標を絞り切れないことでピンそばにつけるショットが少なくなり、それがスコアを伸ばせない原因となっていた。それが、今年はいきなり6バーディー、1ボギーと好スコアをマークしたのは、早くから振り続けた雨が理由だった。
「晴れているといろんなものが視界に入ってきますが、雨が降ると視界が狭まるので、あそこに打たなければというポイントが見えてくるんです」と、狙いが狭くなったことで集中力も増している。確かにコースは違うが、前週の最終日も雨が降りしきる中でのプレーだった。雨を嫌う選手も多いが、悪条件の中にもメリットを見つけることができるのは好調ゆえか。
さらに、先週から思い切ってアイアンのヘッドを別のメーカーに替え、シャフトもスチールからカーボンに換えたこともショット復活への要因だという。今季はパーオン率が70%(16位)と昨年に比べればもう一息だが、その数字が上がってくるのも時間の問題だろう。
“七転び八起き”どころか、10回目の最終日最終組で優勝にたどり着いた高橋。聞けば、3年以上も師事していた奥嶋誠章コーチとの契約が先週の大会前に切れたという。今後しばらくはコーチを付けず、一人でスイングチェックなどを行わなければいけないが、「大丈夫です!」と力強く応えていた。先週の優勝とこの日の苦手コースへの対応で自信をつかんだのだろう。
初優勝を飾った後、300~400ほどのお祝いメッセージが届いたが、1勝目に苦しんだ分、早く2勝目を挙げてほしいという声が少なくなかったという。まだ36ホール残ってはいるが、早くもそのチャンスが訪れたことは間違いない。
「このコースはバーディ合戦になると思うので、出遅れないようにしっかりとついていきたいです」と大会前に語っていたが、まずは第一関門をクリアしたと言えるだろう。
前週は海の向こうでも同じ黄金世代の畑岡奈紗が米LPGAツアー6勝目を飾ったが、そのことも刺激になった。
「3日目を終えてブッチ切っていたので優勝だなとは思っていました。やはり同世代が頑張っているのは刺激になりますし、なおさら頑張ろうという気持ちにもなります」
過去初優勝から2週連続で優勝した選手は2人(90年・西田智慧子、05年・表純子)いるが、3人目を目指したい気持ちは当然ある。幸いにも今までつきまとっていた最終組への恐怖も優勝したことで消え去った。それを確信に変えるためにも、まずは2日目にしっかりとスコアを伸ばしたいところだ。
高橋 彩華(たかはし・さやか)
1998年7月24日生まれ、新潟県出身。昨季は前半戦から幾度となく優勝争いに絡んだが、あと一歩届かない惜しい試合が続いた。最強世代と呼ばれる「1998年度生まれ」としてプレッシャーがかかる中、フジサンケイレディスで悲願の初優勝を遂げた。東芝所属。