全米オープン覇者が「クロスハンド・アプローチ」で圧巻チップイン! この打ち方、真似ていいの?

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、全米オープン。メジャー初制覇を達成したマシュー・フィッツパトリックのアプローチです。

全米オープンを初制覇したフィッツパトリックの得意技

 今年のメジャー第3戦、全米オープンが幕を下ろしました。優勝したのは、欧州ツアーで7勝を挙げているイングランド出身の27歳、マシュー・フィッツパトリック選手です。通算6アンダーで米ツアー初勝利をメジャー制覇で飾りました。

全米オープン初日、12番・パー4でチップインバーディーを決め、ガッツポーズのフィッツパトリック 写真:Getty Images

 大会の舞台になったマサチューセッツ州のザ・カントリークラブは、2013年に全米アマチュアゴルフ選手権を開催したコース。実は、フィッツパトリック選手はこの大会でも優勝を飾っています。

 全米オープン最終日のフィッツパトリック選手はショットが冴え、ほぼすべてのホールでパーオンに成功していました。最終ホールでは、ティーショットを左のバンカーに入れましたが、ツマ先上がりのライからグリーンをキャッチ。パーをセーブして栄冠をつかみ取りました。

 さて、フィッツパトリック選手のプレーで興味深かったのが、グリーン周りからクロスハンドでアプローチをしていたことです。大会期間中、何度かクロスハンド・アプローチを披露しましたが、第1ラウンドの12番・パー4では、グリーン奥からクロスハンドでチップインバーディーを決めていました。

 一般的なグリップは右手が下、左手が上になりますが、クロスハンドで握ると、右手が上、左手が下になります。練習中のドリルとしては知られている方法ですが、ラウンド中、しかもメジャーの舞台でクロスハンド・アプローチをしていたというのは驚きですよね。

 こんな話を聞くと、「アプローチが苦手な選手なのかな?」と思う人もいるでしょう。しかし、彼は「常に同じ入射角、弾道、スピード、スピン量で打てる」と、肯定的にこの打ち方を取り入れているようです。

クロスハンドでアプローチするメリットとは?

 クロスハンドでアプローチするメリットは、左手を動かし続けやすくなる点。ヘッドが極端に減速しなくなるため、ラインが出しやすく、ロフトの管理もしやすくなってヘッドの動き、球筋が安定します。

 ダウンスイングで左ヒジが引けてしまう人、手前からヘッドを持ち上げるような打ち方をする人、軸を右に倒してアプローチする人などは、練習の時だけでもいいので、クロスハンド・アプローチを試してみるといいでしょう。

 注意点は、アドレス時の手首の角度をキープすること。特に、スイング中に左手の手首を甲側に曲げないよう、胸板を動かして振っていく意識を持ってください。ダフリやトップのミスを減らすことができるはずです。

マシュー・フィッツパトリック

1994年生まれ、イングランド出身。アマチュア時代の2013年、全英オープンでローアマを獲得し、同年の全米アマで優勝。世界アマチュアランキング1位に浮上する。14年にプロ転向し、15年の英国マスターズで欧州ツアー初勝利。22年の全米オープンでメジャー初優勝を遂げた。欧州ツアー7勝、米ツアー1勝。

【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

【動画】奥からの長い距離をねじ込んだ圧巻チップインに世界中から絶賛の嵐
1 2

最新記事