- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- イップス克服へ! 2つ目の日本タイトルを獲得した堀川未来夢が挑み続ける戦い
日本プロゴルフ選手権最終日、2位と3打差でスタートした堀川未来夢が通算15アンダーで今季初優勝。ツアー通算3勝目で、ツアー選手権に続く2つ目の日本タイトルを獲得。来年から5年間の長期シード権も手にした。しかし、その裏には3年間悩み続けているパッティングイップスとの闘いがあった。
右手の意図しない動きを抑えるグリップ
◆国内男子プロゴルフ〈日本プロゴルフ選手権 8月4~7日 グランフィールズカントリークラブ (静岡県) 7219ヤード・パー71〉
ボールの転がるスピードが速くアンジュレーションのあるグリーン上では、繊細なタッチが求められる。そのため、わずか1メートルの距離でも気を抜くことはできない。ツアープロが簡単そうに打っているように見えるのは、裏付けされた技術があるからだ。
しかし、ある日突然、その技術を失うどころか、むしろマイナスに働く動作がつきまとうことになったらどうなるか。1メートルの距離を沈める確率が著しく低下することは言うまでもないだろう。選手によっては、それが原因でツアーからの撤退を余儀なくされるケースさえある。それがパッティングイップスの恐ろしいところだが、堀川未来夢はこの3年間、ひたすらそのイップスと戦ってきた。

「自分の場合、右手が余計な動きをするというか、予想外の動きをすることが悩みでした」と堀川。
パターや打ち方を変えるのはもちろん、ストロークのリズムや呼吸法、体の使い方など、思いつくものはありとあらゆることを試し、いろんな人からもアドバイスを受けた。それこそ何時間も練習グリーン上にいることは珍しくなかった。その甲斐あって、昨年のカシオワールドオープンでは2年ぶりの優勝を飾ることができたが、まだ完治したわけではなく、今季は9試合に出場して一度も20位以内に入ることができなかった。
そんな堀川が今大会前にようやくたどり着いたのが、現在のグリップだという。
「右手が意図しない動きをすることの対策としてクロウグリップにしていますが、スライスライン、フックラインに応じて右手中指の位置を変えています」と堀川。
クロウグリップとは、左手のグリップはノーマルで右手は甲を正面に向けて添えるだけの握り方をいうが、堀川の場合、右手人差し指を真っすぐ伸ばしてグリップの真上に添えているのが特徴だ。さらに、中指の位置を微妙に変えることでより右手の動きを抑えるようにした。
さらに、パッティングではなるべく時間をかけないように気をつけている。「考えることを頭の中で整理してシンプル化した後、素振りをして、スッと打つ感じです。結果についてはあまり考えないようにしています」というように、今大会でもテンポよくストロークする姿が印象的だった。実際、今大会の平均パット数は出場選手中3位となる1.65だった。
ドライバーを使用したのはたったの6回だけ
パッティングの不安を最小限に抑えたことが勝因ではあるが、今回は堀川に対して追い風が吹いていた。まず、今大会の開催コースであるグランフィールズCCは日本大学の三島寮に近く、何度もラウンドしてきたホームコースでもあったこと。当然、攻め方は熟知している。
「ティーショットでドライバーを使ったのは6回ですね。ティーショットが難しいコースなので、少しでも危険な匂いがするホールはレイアップしました。他の選手よりも刻んでいたと思います」と、ドライバーを大きく曲げなかったぶん、セカンドショットでグリーンを確実にとらえる回数も増えた。
また、運も堀川の見方をする。3番ウッドでティーショットを放った15番パー4では左ラフに打ち込みながらも、排水用のマンホールにスタンスにかかるため、フェアウェイにドロップ。このホールをパーとし、前のホールでダブルボギーを叩いた悪い流れを断ち切った。
仮にドライバーで打っていたら、飛距離が出ていたぶん、この救済を受けることはできなかっただろう。
さらに、後輩である日大ゴルフ部の部員が多数応援に駆け付け、3番パー4ではあわやロストボールになりそうなところを、彼らが見つけ出して事なきを得た。その後も堀川のプレーに声援を送り、それが大きな励ましとなっていた。
今回の優勝で5年シードを獲得し、海外挑戦も視界に入ってきたという堀川。パッティングイップスが完治したわけではないが、今回の優勝で自分なりに対処法がより鮮明になったことは間違いない。イップスとの闘いはまだまだ続くが、より大きな夢に向かって走り出すつもりだ。
堀川未来夢(ほりかわ・みくむ)
1992年12月16日生まれ、神奈川県出身。日本大学時代には関東アマ優勝など数々のタイトルを獲得。2015年にツアーデビューを果たすと、そのままシード権を獲得した。2019年「日本ゴルフツアー選手権」でメジャー初優勝。2022年の「日本プロゴルフ選手権」も制し、ツアー通算3勝(うちメジャー2勝)。チャンネル登録者数20万人以上のYouTuberとしても活躍している。Wave Energy所属。
- 1
- 2
最新の記事
pick up
ranking