「全英は誰に対してもオープンな大会の理念は未来永劫変わらない」
欧州やアジア等を統括するゴルフの総本山であり、全英オープン主催者でもあるR&Aのマーチン・スランバース会長が、来年の全英オープンで「リブゴルフ選手を制限することは、しない」と語ったことが、米欧メディアによって報じられた。

とはいえ、スランバース会長の発言は、米ゴルフダイジェスト誌のインタビューに答えた際に自身の胸の内をその場で言葉にしたもので、R&Aによる正式な声明ではない。
「来年の1月か2月ごろに公にするつもりでいる」と会長自身が付け加えているように、現段階では会長の言葉は非公式な談話に過ぎず、今後、大きく変更される可能性もないわけではない。
しかし、「全英オープンは誰に対しても等しく門戸を開くオープンな大会であるべし」という大会理念は「未来永劫、変わらないし、変えてはならない」とスランバース会長は強調している。
「全英オープンを誰かに対して閉ざすことは決してできない。全英オープン150年の歴史にそむくことはできない」
だからこそ、スランバース会長は「来年の大会初日にキャメロン・スミスが1番でティーオフすることが楽しみだ」と語ったのだ。
しかし、だからと言って、スランバース会長あるいはR&Aがもろ手を挙げてリブゴルフを賞賛しているとか、サポートしているとか、そういう話では決してない。
スランバース会長は「リブゴルフの選手だという理由だけで、彼らに対して全英オープンの扉を閉ざすことはできない」とは言ったものの、リブゴルフやグレッグ・ノーマンに対する苦言も呈しており、リブゴルフ側の今後の動向が注目されることになる。
「ゴルフを愛する理由はビッグマネーではないはずだ」
スランバース会長は今年7月の全英オープン開幕前の会見で、リブゴルフのフォーマットや選手たちがリブゴルフに移籍した経緯などには「首を傾げている」と語っていた。
「フォーマット」とは、予選落ちのない3日間54ホールというリブゴルフの競技形式のことだ。「選手たちが移籍した経緯」とは、リブゴルフが人気選手たちに巨額の移籍料を支払って複数年契約を結んだり、驚くほど高額の賞金をアピールしてPGAツアーやDPワールドツアーの選手たちを引き寄せたことを指している。
「そうしたもろもろのことによって、ゴルフのバリュー(価値)が損なわれるのではないかと私は危惧している」
スランバース会長が言う「ゴルフのバリュー」とは、「お金では買えない価値」を指している。
「なぜ、大勢の人々がゴルフをするのか、なぜゴルフを愛するのかと考えたとき、ビッグマネーをもらうためにゴルフクラブを握る人はいないはずだ。友人たちと楽しい時を過ごし、ゴルフならではの威厳や味わいを楽しむために、みんなゴルフをするわけで、大金が欲しいからではない。少なくとも私は、大金のためにゴルフをしているわけではない」
プライスレスな価値こそは、ゴルフの真のバリューだと考えるスランバース会長は、ビッグマネーこそが最大の魅力であるリブゴルフによって、そのバリューが損なわれることを案じている。
しかし、それでもなお、「誰に対してもオープンであるべき」という全英オープンの理念にのっとれば、リブゴルフ選手を全英オープンから締め出すことは「全英オープンの歴史にそむくこと」にと考えるスランバース会長は、相反する2つの考えの狭間で、まだまだ揺れている様子である。