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「笑っちゃうぜ」とラームが不満を漏らした世界ランキングの新制度は不公平なのか?

2022.11.22 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
DPワールド(欧州男子)ツアー 米国男子ツアー

欧州ではフラッグシップ大会であるDPワールドツアー選手権が開催され、ジョン・ラームが優勝、ローリー・マキロイが年間王者に輝き、米ツアーとのダブル年間王者を達成した。しかし、この華やかな大会よりも、トップ選手が出ていない米ツアーの平場の大会がなぜか世界ランキングのポイントが多い。

世界ランキングは当初「日本ツアーの配点が高すぎる」と批判された

ダンロップフェニックスに勝利し、最新の世界ランキングで86位から69位に上がった比嘉一貴。しかし、新制度の下では日本ツアーを主戦場として50位以内に食い込むのは至難の業だ。 写真:JGTOimages
ダンロップフェニックスに勝利し、最新の世界ランキングで86位から69位に上がった比嘉一貴。しかし、新制度の下では日本ツアーを主戦場として50位以内に食い込むのは至難の業だ。 写真:JGTOimages

 その昔、ツアープロたちの何よりのステータスは賞金王になることだった。

 しかし、米ツアーの賞金王と欧州ツアーの賞金王は「どちらが上か?」といった論議が交わされるようになり、世界の異なるツアーで戦う選手たちの強さの指標を設ける必要性が浮上。そこで創設されたのが、世界ランキングの前身、ソニー・ランキングだった。

 だが、日本企業の名が冠されたランキングは「ジャパンマネーによって操作されている」「ジャパン有利に偏っている」「アンフェアだ」と、たびたび批判された。

 日本で燦然と輝いていたジャンボ尾崎(尾崎将司)が「世界では上位入りすらしていない。それなのにジャンボが世界ランキングで上位に位置付けられているのはおかしい」という声は、米ツアーの裏口トークでは、しばしば聞かれた話だった。

 やがてソニーの冠が外され、世界ランキングという呼称になってからも、PGAツアーの選手の間では「世界ランキングは正しい評価ではないから気にしない」「意識すべきは、あくまでも賞金ランキング」という声が多数聞かれていた。

 だが、メジャー大会やビッグ大会の出場資格などゴルフ界の多くの事柄の基準が世界ランキングに変わってからは、誰もが世界ランキングを気にしないわけにはいかなくなり、いつしか世界ランキングこそが強さの何よりの指標とされるようになった。

それぞれ違う環境で戦う選手を同じ土俵で比較することの難しさ

「賞金王」という言葉が聞かれなくなり、若い選手たちが「世界ランキング1位になることが目標です」と語るようになってからも、世界ランキングに関する不平不満の声はしばしば上がり、米欧より競争の度合いがはるかに低いはずの日本やアジアなどの大会の評価が「高すぎる」「アンフェアだ」という批判は、どの時代にも常に聞かれた。

 そうした批判に応える形で、今年8月に導入された新システムは、前述した通り、米コロンビア大学ビジネススクールのマーク・ブローディ教授が考案した「ストロークゲインド・ワールドレーティング(SGWR)」という新たな指標を用いている。

 平たく言えば、「より多くの上位選手の間を潜り抜けて勝つことのほうが、少人数の中で勝つより難度は高い」という考え方だ。

 そのシステムに基づくと、世界ランキングのトップ200以内が34名しかおらず、出場選手がわずか50名のDPワールドツアー選手権において、49名を抑え込んで優勝することより、世界ランキングのトップ200が68名出場し、全156名が挑んだ大所帯のRSMクラシックにおいて、155名を抑え込んで勝利することのほうが、世界ランキング的には「すごいこと」とみなされ、より高いポイントが授けられた。

 その新システムは、本当に正しい評価をしていると言えるのか? 本当は、どちらの大会で勝つことのほうが大変で、本当はどちらの大会のほうがすごいのか?

 その「本当の答え」は、やっぱり分からず、そもそも「すごいって、どういうことだ?」と首を傾げずにはいられなくなる。

 そう、「そもそも」論で言えば、場所も気候も、ゴルフコースの状態もレイアウトもデザインも、芝も土も砂もすべて異なる世界各地のツアーにおける戦いや、そこで戦う選手たちを、同一基準で比較すること自体に、そもそも難しさがある。

 正確な比較をしようとしても、必ずどこかに無理は出るはずであり、その無理を完全に排するためには、世界中のプロたちが1カ所に集結し、五輪のごとく、同じ土俵の上で全員が勝負する以外に方法はない。

 それでも、その土俵が「ホームか、アウェイか」によって、やっぱり「フェア、アンフェア」の論議は巻き起こるに違いない。

 要は、不平不満や批判や批難が皆無になることは、おそらくはないということ。

 そうだとすれば、幾度もの改良を重ね、選手たちの不平不満を最大限、排してきた現行の世界ランキングを、まずは受け入れ、これからは、より一層、育んでいくことに選手たち自身も力を注いでほしいと思う。

 すでに存在するものを当たり前と思うのではなく、新たにもたらされたものの非を見出しては文句を言うのではなく、どうしたらもっと良くできるのかを前向きに考えてほしいと思う。

 折しも、リブゴルフへ移籍した選手たちは、かつては当たり前のように稼いでいた世界ランキングのポイントを一切稼ぐことができない環境に初めて身を置いて、世界ランキングのポイントを稼げる幸せとありがたみを思い知り、今では喉から手が出るほど世界ランキングのポイントを渇望している。

 そして、世界ではマイナーと言わざるを得ないMENAツアーと一体化してでも世界ランキングのポイントを稼ぐという苦肉の策まで講じ、結局、その奇策も失敗に終わった。

 そんなリブゴルフ選手たちの現状、いや窮状と比べたら、何がどれほどありがたく、何がどれほど恵まれているということなのかを、よく考えてほしい。

 不平不満を言う前に、豊かすぎて見えなくなっているモノやコトを、いま一度、見直してみることも必要なのではないだろうか。

文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。

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