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- 米男女ツアーで予選会から這い上がった選手が話題に “シンデレラストーリー”への扉の大切さ
日本選手も多く参戦した米女子ツアーのホンダLPGAタイランド。最後まで優勝争いを繰り広げたタイのナタクリッタ・ボンタベーラブは、同大会の全国予選を勝ち抜いて出場権をつかみ取った。こうした“シンデレラストーリー”への扉があることは米男女ツアーに共通した良き伝統だ。
双子の一方だけに主催者推薦が与えられ…
先週は米男子のPGAツアーの大会もタイトルスポンサーはホンダだった。
米フロリダ州内の名門、PGAナショナルで開催されたホンダクラシックのことだ。残念ながらホンダは今年限りでこの大会のタイトルスポンサーを降りることがすでに決まっているのだが、それはさておき、この大会にも合計6名の選手がスポンサー推薦で出場していた。
その中に23歳の米国人、ピアセソン・クーディーという選手が含まれていた。名門テキサス大学で数々のタイトルを獲得し、プロ転向後は下部ツアーのコーンフェリーツアーで2勝を挙げた実績が評価され、今大会からスポンサー推薦を得た。
彼にはパーカー・クーディーという双子の兄弟がいる。だが、PGAツアー・カナダで1勝しただけでは実績不足と見なされたようで、双子とはいえ、パーカーにはスポンサー推薦がオファーされなかった。
しかし、パーカーは「それならば」と自力出場を目指し、マンデー予選に挑んだ。今年の同大会のマンデー予選は、わずか4人の枠を101人が奪い合う激戦となったが、そのうちの1枠をつかみ取ったのが、パーカーだった。
かくして、双子のクーディー兄弟は、プロとして挑むPGAツアー初戦を2人揃って同時に迎えることができた。
実を言えば、クーディー兄弟は1971年マスターズの覇者チャールズ・クーディーの孫である。「マスターズチャンピオンの孫」「そして双子」と来れば、それだけでも十分に話題性があり、2人にスポンサー推薦が授けられてもおかしくはない。
だが、あくまでも実績に基づいて吟味し、1人だけに推薦枠をオファーしたところはPGAツアーならではの厳しさと言えるのだろう。しかし、厳しい中にも必ず次なるチャンスの扉を設けるところは、PGAツアーならではの優しさである。
ちなみに、クーディー兄弟の成績は、パーカーが予選落ちを喫し、ピアセソンは初日こそ上位で好発進したものの、最終的には63位タイに終わった。
だが、最終結果はさておき、未来の可能性を感じさせる双子兄弟が2人揃って一流の舞台を経験することができたのは、スポンサー推薦とマンデー予選があってくれたおかげだった。
「格上げ大会」のマンデー予選が廃止されるという噂
とても気になっているのは、2024年から、いわゆる「格上げ大会」におけるマンデー予選が廃止されるという噂だ。
今季初のフルフィールドによる「格上げ大会」となったWMフェニックスオープン開幕前、アロン・バデリーの娘が大会側に「私の父にスポンサー推薦をください」と懇願するレターを送ったことが話題になった。
かつてPGAツアーのスター選手として人気を集めたバデリーは、同大会の過去の優勝者であり、同大会の開催地であるアリゾナ州スコッツデールに住む地元選手でもある。だが、近年は成績が低迷しており、大会出場資格も失っていた。
見かねた娘は、父親にスポンサー推薦を求めるレターを大会側に送ったのだが、同様の懇願レターは全米、いや世界中から殺到しており、大会側が吟味・検討した結果、バデリーにはスポンサー推薦はオファーされなかった。
するとバデリーはマンデー予選に挑んだ。それは、彼にとっては最後の砦だった。結果的に彼はマンデー予選の4枠に入ることができず、フェニックスオープン出場は叶わなかったが、マンデー予選という「最後の砦」があったことは、彼にとっては「最善を尽くすことができた」という意味で、ありがたいものだったはずである。
そして、ホンダ・クラシックにマンデー予選から出場したパーカー・クーディーにとっては、マンデー予選はPGAツアーを経験する「はじめの一歩」だった。
PGAツアーにしてみれば、「格上げ大会」はスター選手が勢揃いするゴージャスな大会に仕立てたいはずであり、そこにマンデー予選は不要ということなのかもしれない。
しかし、そのゴージャスな大会で、マンデー予選から挑んだ無名の若者が勝利するシンデレラストーリーが生まれたら、それはそれで夢があふれる素敵な展開になる。
その展開こそは、予選会のような「道」や「扉」が設けられていないリブゴルフとの最大の差別化となり、PGAツアーが誇る最大のアピールになるのではないだろうか。
そう、スポンサー推薦やマンデー予選には、夢あふれる物語を生み出す可能性と力が秘められている。だからこそ、大事に育んでほしいと心から願っている。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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