「気持ち的にはホッとしている」
◆国内女子プロゴルフ<ダイキンオーキッドレディス 3月2~5日 琉球ゴルフ倶楽部(沖縄県) 6560ヤード・パー72>
「うれしくて何から話せばいいか分からないくらい」
会見場に入ってきた申ジエの表情は、いつになく笑顔がすがすがしかった。日本ツアーに参戦してからの開幕戦優勝が初めてということもあるだろう。

元世界ランキング1位の肩書はやはりだてじゃない。
最終日を2位と2打差の単独トップでスタート。しかし、出だしの1番パー4、6番パー4をボギーとして一時は並ばれる。その後、7番パー5は2メートル、9番パー4は1メートルのバーディーパットを沈めて再び突き放した。
その後、15番パー4ではピンチが訪れるも「ここのパーセーブが大きかった」と5メートルのパーパットを決めてガッツポーズ。最終18番パー5は、ピンまで22ヤードの3打目を3.5メートルに寄せると、最後はバーディーで締めた。
2021年7月「大東建託・いい部屋ネットレディス」以来、約1年8カ月ぶりの優勝。日本ツアー会員としては27勝目、米ツアーを兼ねたものなどを含めて日本で29勝目となった。
ちなみに、日本ツアー27勝に加え、その他の勝利数は米女子ツアー11勝、韓国女子ツアー20勝、欧州女子ツアー2勝、台湾女子ツアー1勝、レディースアジアンゴルフツアー1勝、今年2月のオーストラリアツアーで1勝を挙げ、通算63勝目となった。これも驚異的な数字だ。
表彰式では「永久シードまで残り3勝(日本ツアー通算30勝)。日本ゴルフ史に名を残したい」とギャラリーの前で宣言していた。
昨年の開幕戦のあと、申ジエは両手首を手術。3年前はヒジの手術もしており、今も決して安心できるような体の状態ではない。それでも「トレーニングと練習を頑張って、腕も太くなりましたから(笑)」と笑う。
その中で勝ち取った優勝には、今シーズンに懸ける悲壮な覚悟があった。
「今年は特に頑張りたい気持ちが強いんです。現役をいつまで続けられるのか、同世代の選手たちが引退して、今は体力を1年維持し続けるのが難しい状態にあります。選手生命もこれから先、どれだけなのかは分かりませんが、そういうことを考えるようになりました」
元米ツアー賞金女王や元世界ランキング1位の肩書を持つ申ジエも、毎年優勝できるとは限らず、いずれは引退する日が来る。だからこそ、兼ねてから目標としているタイトルが欲しい。
「(目標は)日本ツアーの賞金女王になること。これはたくさんの方と約束したので」
今年はいつになく“強い”申ジエが見られそうだ。
申ジエ(しん・じえ)
1988年4月28日生まれ。韓国出身の女子プロゴルファー。11歳からゴルフを始め、2007年に韓国ツアー19戦10勝。翌年「ヨコハマタイヤPRGRレディスカップ」で日本ツアー初優勝を飾り、同年の「全英リコー女子」を含む米ツアー4勝。09年に米ツアーの賞金女王となり、10年には世界ランキング1位に。14年から主戦場を日本に移し、18年はツアー史上初となる公式戦(メジャー)年間3勝を達成し7年シードを獲得。スリーボンド所属。