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頭越しの手打ちでノーマンは“用済み”!? PGAツアー・モナハン会長はリブゴルフを生かすも殺すも任された?
世界のゴルフ界に激震を走らせたPGAツアーとリブゴルフ出資者であるPIFの和解。この件が明るみになってから1週間弱、その実態がわずかずつではあるが明らかになってきた。中でも衝撃的だったのは、新組織にリブゴルフを引っ張ってきたグレッグ・ノーマンの居場所はなく、そもそも交渉にもまったく関与させてもらえなかったと見られていることだ。両者の合意は純粋に“ビジネスマン同士”の交渉によるものだった。
ニュースショーに仲良く出演したルマイヤン会長とモナハン会長
米国時間の6月6日の朝、米メディアが一斉に「PGAツアーとリブゴルフが統合に合意」「PGAツアーとリブゴルフが和解」と報じたとき、多くの人々が思い浮かべたのは、これまで激しい対立を続けてきたPGAツアーのジェイ・モナハン会長とリブゴルフのグレッグ・ノーマンCEOが笑顔で握手する光景だったのではないだろうか。
しかし、そのシーンを目にすることは、まずない。
なぜなら、PGAツアーが歩み寄って手を携えた相手は、リブゴルフのノーマンCEOではなく、リブゴルフを経済的に支援しているサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」のヤセル・アル・ルマイヤン会長だからだ。
実際、発表直後に米CNBCのニュースショーに仲良く並んで出演し、笑顔を輝かせたのは、ルマイヤン会長とモナハン会長だった。ノーマンCEOは出番がないどころか、ただの一度も言及さえされなかった。
そして、発表直後に世界各国のメディアの見出しに踊った「和解」という文字を受けて、ゴルフファンの間では「これで大揺れしてきたゴルフ界から対立が消え去り、ようやく平和が訪れる」という期待が広まった。
実際、PGAツアーとPIFが手を携えたことで、「対立」はなくなることになる。双方から出されている訴状はすべて取り下げられ、法廷闘争にもピリオドが打たれる。
しかし、これですぐさま平和が訪れるとは、到底思えない。
最大の驚きは、リブゴルフの今後を統括・管理する役割がモナハン会長に一任される見込みであるという点だ。リブゴルフの今後はモナハン会長の裁量に委ねられ、「リブゴルフを生かすも殺すもモナハン次第」となることは、ほぼ間違いない。
そして、リブゴルフ創設に尽力し、実際に2シーズン目に導いているノーマンCEOの役割は「これで終わった」と見られているところに、はかなさと虚しさを覚える。
モナハン会長はリブゴルフを解体・解散させることもできる
誤解なきよう再度繰り返すと、今回手を携えたのはPGAツアー、DPワールドツアー、そしてリブゴルフではなく、その後ろ盾である「PIF」の三者だ。
PGAツアーとDPワールドツアーはもともと戦略的提携を結び、歩調を合わせているという背景があるため、今回、実際に大きく歩み寄ったのはPGAツアーとPIFの両者だった。
最初にアクションを起こしたのはPGAツアーの理事の1人であるジミー・ダン氏。彼は4月半ばに、まずルマイヤン会長に「電話で話したい、できれば実際に会って話したい」というメッセージを送った。そして、4月下旬に英国へ飛び、ルマイヤン会長と食事やゴルフをともにした。
そして、ルマイヤン会長とPIFの望みはPGAツアーと対抗することではなく、「ゴルフ界の中心部にいたい。中心でありたい」というものであることを確認したダン氏は「PIFの思いはPGAツアーと同じだ。一緒に歩む方向で進んでいこう」と、モナハン会長を説得した。
5月になると、ダン氏は今度はモナハン会長を伴って、イタリアでルマイヤン会長らPIF側と会合を持ち、そうやって両者の交渉はスピーディーに進行。わずか7週間で合意に達したそうだ。
その際、PGAツアー側が合意のために提示した条件の一部が、ダン氏を通じてすでに明かされている。
「PGAツアーはPGAツアーという名称のままとする」という条件には「なるほど。良かった」と、素直に頷けた。
だが、前述の通り、「モナハン会長がリブゴルフを統括する権限を持つ」「モナハン会長はリブゴルフを解体・解散させることもできる」という条件には、思わず「えっ?」と声を上げてしまった。
リブゴルフが解体・解散となる場合は「モナハン会長はリブゴルフ選手をPGAツアーとDPワールドツアーへ復帰させる手立てを検討し、実行する」とも記されている。
もちろん、これがスムーズにいくものだとは到底思えず、待ち受けているのは「平和」ではなく、選手たちの「怒り」や「混乱」のようにも思えるのだが、ともあれ、提示された条件には、そう記されている。
独禁法違反を恐れて「merge(併合)」という文言をひっそり削除
これから生み出される新たな体制は、一体どんなものになるのか。
当初、モナハン会長の署名入りでPGAツアーから発せられた声明には「merge(併合)」という言葉が含まれており、だからこそ「三者が併合・統合され、一大組織が創設される」と、世界中で報道された。
しかし、その声明の中の「merge(併合)」という言葉は、数時間後にひっそりと消し去られ、PGAツアーのオフィシャルは「併合ではなく、三者はパートナーシップを結んだのだ」と説明している。
三者が一大組織を創設するという第一報を受け、すぐさま米司法省が反トラスト法(独占禁止法)違反を疑って調査に動き出したため、その対策として「併合」「合併」「統合」といった表現を避け始めたのではないかと見られているが、そうしたことも踏まえ、現状では、こんな図式が最有力視されている。
まず大きな1つの営利法人が創設され、ルマイヤン会長がそのトップに就き、モナハン会長がCEOとしてその下に入る。
その営利法人とは別に、PGAツアーが現状通りの非営利法人として存続し、モナハン会長がCEOとして続投する。
この2つの団体は「一大組織」ではなく、それぞれが独立した営利法人と非営利法人だが、「人」は相互にリンクすることになり、ルマイヤン会長は営利法人の会長で非営利法人(PGAツアー)の理事、モナハン会長は双方のCEOを兼務する。
そして、提示条件の中には「これから生まれる新たな組織に対し、PIFのみが投資を行う」というくだりがある。
その意味は、新組織が株式会社として創設されると仮定した場合、株式の100%をPIFが保有することを示している。今後、他の誰からも乗っ取られることなく、この組織は「PIFだけのものだ」という形にすることを、PGAツアー側がPIF側に提案し、「ゴルフの中心部にいたい」と願うルマイヤン会長を頷かせたということなのだろう。
ただし、「PIFはPGAツアーに対して具体的な指示や介入は行なわず、経済的な介入のみにとどめる」と釘を刺すことを忘れなかったところは、ダン氏が敏腕ビジネスマンといわれる所以である。
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