実を結んだ「3メートルのパッティング練習」
◆国内女子プロゴルフ<ニチレイレディス 6月16~18日 袖ヶ浦カンツリークラブ・新袖コース(千葉県) 6621ヤード・パー72>
2日目を58位タイでスタートした岩井明愛の名前がスコアボードをものすごいスピードで駆け上がる。
スタートから3連続バーディーを奪って勢いをつけると、前半を6バーディー、ノーボギーの30でまとめた。

後半に入ってもその勢いは衰えない。6番パー3でこの日9つ目のバーディーを奪い、19年に田中瑞希がつくった大会コースレコードに並ぶ。
7、8番をパーとして迎えた最終9番パー4。ピンまで残り111ヤードをピッチングウェッジで打つと、ボールはピン右1.5メートルに止まる。それをカップの真ん中から沈め、この日10個目のバーディーで新記録達成だ。
「決めた瞬間はベストスコアを達成したのでうれしかったです。えっ、大会コースレコードなんですか? 知らなかったです」と、ある意味無欲がもたらした新記録達成だった。
前週の宮里藍サントリーレディスオープンでは、妹の岩井千怜がツアー4勝目を飾った。自身も今季はKKT杯バンテリンレディスオープンでツアー初優勝を飾っているが、複雑な思いもある。
「やっぱり千怜がどんどん勝っていくと焦りもありますし、自分も勝たなきゃいけないなっていう気持ちもすごいあります」
妹の優勝を祝福すると同時に、自身のゴルフを見直した。その答えとしてはじき出したのが“3メートルのパッティング”だ。
「前週はショットがよくて、3メートルの距離につくことが多かったんです。でも、それがことごとく外れてしまって……。やっぱりこの3メートルの距離を沈めないと上位には行けないと思い、練習日からずっと練習しています」
時間にして1日30分から1時間は、3メートルの距離からボールをひたすら転がし続けたという。「カップを中心にしてボールを4個置くんですけど、どの方向からでも入るようになるまで練習を続けています」。
その練習がようやくこの日、実を結んだ形となった。3メートルの距離を確実に沈めるコツは企業秘密だが、自信が確信に変わるかどうかは最終日の結果次第だろう。
最終日は首位の山下美夢有、妹の千怜の3人と同組だ。勘のいい方なら、5週前のRKB×三井松島レディスでのプレーオフを思い出すのではないか。
まさにこの3人で戦ったが、プレーオフ2ホール目で千怜がバーディーを奪って優勝している。明愛にしてみれば、最終日を首位タイでスタートしながら敗れただけに、悔しい気持ちもかなりあったはずだ。
もちろん、それは山下にも言えること。最終日はリベンジ合戦となることが予想されるが、相手が誰であろうと目の前の1打に集中することは変わらない。ただ、ワクワク感も同時にある。
「千怜と美夢有さんが最終日最終組ですごい楽しんで回っているなと思ってましたが、そこに自分も加われるのが楽しみです」と、念願の組み合わせだけに楽しむことも忘れないつもりだ。
岩井 明愛(いわい・あきえ)
2002年7月5日生まれ、埼玉県出身。双子の妹・千怜(ちさと)とともに、高校ゴルフの名門・埼玉栄高のダブルエースとして活躍。同校を8年ぶりの全国高等学校ゴルフ選手権・団体戦優勝に導いた。21年にプロテスト合格。JLPGAツアーに本格参戦した22年はメルセデス・ランキング40位でシード獲得。23年「KKT杯バンテリンレディスオープン」で待望の初優勝を果たした。Honda所属。