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早稲田初の日本アマ王者・中野麟太朗 稲見萌寧らも輩出した「北谷津」はなぜ次々に一流選手が育つ?
6月27~30日に北海道で行われた日本アマチュアゴルフ選手権。優勝したのは早稲田大学2年の中野麟太朗。早大初の日本アマ王者となる快挙を成し遂げた。また、中野は池田勇太、稲見萌寧ら多数の一流プロが輩出していることでも知られる千葉県のショートコース・練習場、北谷津ゴルフガーデンの出身でもある。なぜ北谷津からは次々と一流選手が育つのだろうか。
「帰京後すぐに優勝報告に来てくれたことが何よりうれしかった」
暦が7月に変わったばかりの日曜日の正午ごろ、ジュニアゴルフ教育で知られる北谷津ゴルフガーデン(千葉県千葉市)の土屋大陸社長から突然、電話がかかってきた。
![北谷津ゴルフガーデンの土屋大陸社長(左)と中野麟太朗 写真:北谷津ゴルフガーデン提供](/wp-content/uploads/2023/07/nakanorintaro_01.jpg)
「あんまりうれしくて電話してしまいました」
日ごろは落ち着いた口調で話す土屋社長が、いつになく興奮気味だった。
「小学3年生のときから北谷津に通っていた中野麟太朗が、一昨日、日本アマで優勝したんです。ウチから男子の日本チャンピオンが出て、新たなヒーローが誕生したことは、今、北谷津で頑張っている子どもたちや北谷津出身でプロを目指しているゴルファーたちの刺激になります」
だから、土屋社長は大喜びしていたのだが、そのあと、こんな言葉を続けた。
「麟太朗が優勝直後、いの一番に電話をくれて、帰京後、すぐに北谷津に足を運び、優勝報告に来てくれました。それが何よりうれしかった。
そして麟太朗は、彼の後輩にあたる北谷津の子どもたちの前に立ってスピーチもしてくれた。その場面は、私が思い描いている理想のシーンでした。
北谷津育ちのジュニアが成長し、強くなって、これから成長する子どもたちに想いを伝え、エールを送る。その場面を目にしたとき、私もうれしい気持ちになりました」
北谷津は「エリートゴルファー養成所」ではない
![中野麟太朗を囲む北谷津ゴルフガーデンのスタッフとジュニアたち。中野の向かって右隣りにはジュニアを指導しながらレギュラーツアー1勝、シニアツアー賞金王の快挙を成し遂げた篠崎紀夫の姿も 写真:北谷津ゴルフガーデン提供](/wp-content/uploads/2023/07/nakanorintaro_03.jpg)
北谷津ゴルフガーデン出身の「北谷津育ち」と言えば、近年では、日本の女子ゴルフ界を席巻し、東京五輪で銀メダルに輝くなどの大活躍を見せた稲見萌寧が大きな注目を浴びた。男子では、横尾要、池田勇太、木下裕太、市原弘大らが北谷津から巣立ち、プロゴルファーになった。
多くの優れた選手たちを輩出してきた北谷津は、230ヤード、80打席の2階建てゴルフ練習場と18ホールのショートコースを備えており、天然芝の上で小技やパットの腕を磨くことができる優れた練習環境を誇っている。
とはいえ、いわゆる「エリートゴルファー養成所」という雰囲気がほとんど感じられないことは、北谷津の大きな特徴だ。最新のハイテク機器を駆使しながら科学的に指導するというものではなく、スパルタ式にゴルフを教えるわけでもない。
北谷津の創業者は、土屋社長の父である先代で、2代目として北谷津を引き継いだ土屋社長は、ジュニア育成に心血を注いでいた千葉晃プロ(故人・2018年8月に死去)と力を合わせ、1994年から北谷津で子どもたちを継続的に指導していく「千葉晃のジュニアゴルフミーティング」を立ち上げた。
当時は、まだジュニア用のクラブを手に入れることが困難だった時代であり、そんな中で創設された子どもたちを対象とするゴルフ教育の場は、貴重で希少な存在となり、北谷津に集まってくる子どもの人数は徐々に増えていった。
千葉プロは高度なゴルフテクニックを教授する代わりに、「どうしたら楽しくゴルフができるのか」「ゴルファーとして大切なことは何なのか」を、子どもたちには優しく、その親たちには熱く語りかけていった。
「楽しくなければゴルフじゃない」が合言葉だった。うまくなることや試合に勝つことより、エチケットやマナー、あいさつを教え、ゴルファーである以前に1人の人間としてどうあるべきかを説いていった。
そして、誰に対しても感謝や恩義を決して忘れず、礼を尽くし、リスペクトすることの大切さを教えていった。
ゴルフ技術そのものを指導する際も、小難しいことを無理に叩き込むのではなく、それぞれの子どもが持ち合わせている良いところを伸ばす教え方を徹底した。
だから北谷津では昔も今も、子どもたちが笑顔でゴルフクラブを振っている。日本アマ覇者となった中野も、そうやって伸び伸び育ち、アマチュア日本一に輝いた。
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