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- きょう開幕! なぜ全英オープンはリンクスでしかやらないのか?
今年の全英オープンは、7月20日からイングランドの西海岸に位置するロイヤルリバプールGCで開催されます。ホイレイクとも呼ばれるこのコースはもちろんリンクスですが、なぜ全英オープンはリンクスでしか開催されないのでしょうか?
そもそも歴史の古いゴルフコースはリンクスだから
ゴルフの歴史と伝統に基づく世界最高峰のゴルフ大会、全英オープン(The Open Championship)の季節が今年もやってきました。全英オープンといえば、昨年大会が開催されたセントアンドリュース・オールドコースを思い浮かべる人も多いでしょうが、これまでに14の異なるコースで開催されてきました。
現在の全英オープンは、スコットランド、イングランド、ウェールズ、北アイルランドと、連合王国を形成する4つの国にまたがる複数のコースでローテーション方式で行われており、今年の開催地であるロイヤルリバプールはイングランドにあります。
過去の開催地はすべてリンクスと呼ばれる海辺の砂地の地形を生かしたゴルフコースでした。なぜ毎回リンクスコースが選ばれるのでしょうか?
1990年に日本人として初めて全英オープンのレフェリーを務め、またR&Aのメンバーでもあり、日本ゴルフコース設計者協会の会長でもある川田太三氏に詳しくお話を伺いました。
全英オープンは1860年にスコットランドのプレストウィックGCで行われた「チャレンジベルト(プロ競技会)」を起源とする世界最古のオープン選手権です。始めの11回はプレストウィックGCで開催され、その後はセントアンドリュースとマッセルバラGCを含む3コースで順番に開催されるようになりました。新たに加わる、ミュアフィールドでの開催は1892年のことです。
19世紀のゴルフコースはほとんどが海岸沿いに位置しており、それゆえに全英オープンはリンクスコースで行われることが自然となりました。このことから、全英オープンがリンクスコースで開催されるという伝統が確立され、現在も続いています。
アメリカの全米オープンゴルフにはUSGAによる明確な基準が存在する一方で、全英オープンのコースには明文化された基準はなく、リンクスコースでの開催が不文律とされています。
イングランドのサニングデールGC等、内陸に造成された上位ランキングのコースが存在するにもかかわらず、なぜそのようなコースが全英オープンの候補地に上がらないのか疑問に思いますが、川田太三氏によると、「それは議論にすらならない」とのこと。英国人の気質として、「リンクスで行われてきたという伝統を守ることこそが価値観であり、それが常識」と話します。そのため、内陸に造成されたパークランドコースで全英オープンを開催しようという考え自体が浮かびもしないのだと。
そこに明文化された理由はない、英国人気質
川田氏はかつてR&Aのレフェリーを務め、ゴルフ規則の用語統一に関わった経験からも、英国人の気質を実感しています。
川田氏によれば、2000年頃までの英語のゴルフ規則では、”would”, “should”, “must”, “ought to” などの助動詞が使い分けられており、これに関しては母国語が英語ではない人々にとっては微妙な違いや程度の差が問題となっていました。しかし、この問題提起に対してR&Aのメンバーは驚き、「そんな事に気づかなかった」と返答したということです。
英国人は古くから使用されてきたものに疑問を持つことなく、長い間受け入れてきた傾向があります。しかし、この問題提起をきっかけに、ゴルフ規則の表記の統一が行われ、現在の規則集では同じ場面の助動詞が統一されているとのことです。
全英オープンがリンクスで開催される理由について、これはゴルフの伝統を感じさせ、最高のプレーヤーを決めるのにふさわしい場所であるからとされます。英国人の保守的な気質からすれば、他の場所での開催を検討することは考えられないでしょう。このような文化的な背景により、全英オープンの開催地はリンクスコースが不文律として受け継がれているのです。
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