スーパーアマ馬場咲希も間違えた「カート道の救済」 覚えておくべきドロップが右側か左側かの“計算方法”

「住友生命Vitalityレディス東海クラシック」2日目、全米女子アマ覇者の馬場咲希がおかしたル―リングのミスが話題となりました。馬場が間違えたのは、カート道路からの救済で右にドロップするか、左にドロップするか。

その障害がなければ使用したであろうクラブで測らなければならない

 先日、「住友生命Vitalityレディス東海クラシック」2日目の競技終了後、ファンの間で大きな話題になった出来事がありました。

「住友生命Vitalityレディス東海クラシック」2日目、救済処置のミスで計4罰打を課されてしまった馬場咲希 写真:Getty Images
「住友生命Vitalityレディス東海クラシック」2日目、救済処置のミスで計4罰打を課されてしまった馬場咲希 写真:Getty Images

 ニュースでは「ホールアウト後『誤所からのプレー』で4罰打 馬場咲希に何があった?」「カート道の救済処置ミスで4罰打 馬場咲希は“思い込み”を猛省」といった見出しが躍った馬場咲希のルール違反。少し詳しく紹介するとともに、カート道路での救済をおさらいしましょう。

 馬場が最終的に「誤所からのプレー」と裁定され、各2罰打、計4罰打となったのは、2日目前半の14番と15番ホールでのこと。

 14番パー4では第2打地点で、15番パー5では第3打地点で、それぞれカート道路がストロークの障害になったため、馬場は「動かせない障害物」からの救済を受けることになりました。

 この場合、プレーヤーはまず「ボールの元の箇所に最も近く、その箇所よりホールに近づかない」、そして「そのストロークに対しての障害がなくなる所」である「完全な救済のニヤレストポイント」を決めなければなりません。

 ただし、ここにある「そのストローク」とは、「もしその障害がなかったらプレーヤーが行っていたであろうストローク」であり、プレーヤーはそのストロークで使用したであろうクラブ、スタンス、スイング、プレーの線を特定する必要があります。

 ところが、馬場はその位置からのストロークであれば使用したであろうクラブ(ショートアイアン、もしくはウェッジ)ではなく、ともにドライバーを手に同ニヤレストポイントを決めてしまいました。

 このときの画像は未見なので一般論になりますが、例えばボールが幅180センチのカート道路の中央に止まった場合、「完全な救済のニヤレストポイント」は、(右打ちのプレーヤーであれば)道路の左側になります。なぜなら、道路の障害がなくストロークできるポイントは、左側はカート道路のすぐ左横ですから、元の箇所からの距離はほぼ90センチ。一方、右側で道路の障害がなくなるポイントは、道路右端までの距離90センチに加え、スタンスのカカトの位置からボールまでの距離が加わるからです。

 そのスタンスからボールまでの距離ですが、一般にドライバーで(ツマ先から)80センチあまり、ウェッジで60センチほどといわれます。ですから、「完全な救済のニヤレストポイント」を決めるとき、手にしたクラブがドライバーとウェッジでは20センチあまりの差、つまりドライバーで測ったほうが20センチほど遠くなるわけです。

 そこで、例えばボールが幅180センチのカート道路の右から40センチ、左から140センチの地点に止まったとします。この場合の「最も近く」、「カート道路の障害がなくなる所」は、カート道路の左側であれば、ほぼ140センチです。

 一方、カート道路の右側は、道路右端までの距離=40センチに加え、シューズ1足分=約30センチとツマ先からボール位置までの距離。ウェッジであれば60センチなので、合計で約130センチ。ドライバーであれば80センチあまりですから、合計約150センチとなります。

 左側のニヤレストポイントが140センチに対し、右側はウェッジでニヤレストポイントを測れば130センチ。ですからニヤレストは右側。ところが、ドライバーで測ればその距離は150センチにまで伸び、結果、ニヤレストは左側になるわけです。

 馬場もこのような状況だったと考えられます。本来手にすべきショートアイアンやウェッジではなく、ドライバーを使ったため、「完全な救済のニヤレストポイント」はカート道路の左側になったのでしょう。

クラブレングスを計るときのクラブと勘違い

 日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)によれば、馬場と同じ組のプレーヤーから彼女の処置が疑問との申告があり、競技終了後、競技委員と馬場が現場に戻って確認。結果、馬場も「正しいニヤレストポイントはカート道路の右側だった」と自らの間違いを認め、それぞれ「誤所からプレー」で各2罰打の付加が確定しました。

「完全な救済のニヤレストポイント」を決める際ではなく、同ポイントが決まった後、そこを基点に1クラブレングスや2クラブレングスの救済エリアを測るときには、そのラウンドに持ち込んだ最も長いクラブ、つまり通常はドライバーを使います。馬場はこれと勘違いしたのでしょう。

【図解】間違いやすいレッドペナルティーエリアの正しい処置もチェック/2023年ルール改訂3つの変更点をおさらい

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球がレッドペナルティーエリアにあることが分かっているか、事実上確実で、プレー ヤーが救済を受けたい場合、プレーヤーには3つの選択肢がある。それぞれ1罰打で、 プレーヤーは次のことができる。 (1)直前のストロークを行った場所に基づき救済エリアから球をプレーすることによっ てストロークと距離の救済を受ける。 (2)ホールとX点を結んだ後方線上のペナルティーエリアの外に球をドロップすること によって後方線上の救済を受ける。 (3)ラテラル救済を受ける(レッドペナルティーエリアに限る)。救済を受けるための基点 はX点で、球は2クラブレングスでX点よりホールに近づかない救済エリアの中にド ロップし、その中からプレーしなければならない。(ゴルフ規則 17.1dより抜粋)
1.後方線上の救済は「線の上」にドロップしなければならなくなった
2.救済後、風でボールが再び池に入ったら「無罰でリプレース」
3.間違ってインプレーでない球をリプレースしてパットした「2罰打→1罰打」
「住友生命Vitalityレディス東海クラシック」2日目、救済処置のミスで計4罰打を課されてしまった馬場咲希 写真:Getty Images

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