OBラインのネットから救済は受けられる? ややこしい「境界物」にまつわるルールを解説

PGAツアーの「コグニザントクラシック」でジャスティン・ローズが見せた、ヘッドをフェンスの下に通すショットは、動画がバズりました。ただ、フェンスは無罰で救済を受けられないんだっけ?と疑問に思った人も少なからずいるのではないでしょうか。

「境界物」は動かせず、無罰の救済を受けることもできない

 先週のPGAツアー競技「コグニザントクラシック」(旧ザ・ホンダクラシック)の初日。ジャスティン・ローズは13番パー4でティーショットを左に曲げ、ボールはあわやOBに! OBの境界物であるネット状のフェンス下辺と地面の間に挟まるようにして、ぎりぎりインバウンズで止まっていました。

 そこからローズは救済を選択せず、ボールをあるがままの状態でプレー。素晴らしいリカバリーショットを放ってパーをセーブ。多くのゴルフメディアが取り上げることになりました。

 その見事なプレーに関連して、OBの「境界物」にまつわるルールについて調べてみました。

PGAツアーのX(@PGATOUR)より
PGAツアーのX(@PGATOUR)より

 大会初日の13番パー4。ジャスティン・ローズのティーショットのボールは、コースとコース外の住宅の庭を隔てるネット状のフェンス(境界物)の真下、ネットと地面の間に挟まるように止まっていました。

 境界物がフェンスの場合、OBの縁(境界縁)は、ルールブックの「アウトオブバウンズ」の定義に「杭やフェンスによって定められる場合、境界縁はその杭やフェンスポストのコース側を地表レベルで結んだ線によって定められ、そしてそれらの杭やフェンスポストはアウトオブバウンズである」となっています。

 つまり、(日本のゴルフ場では一般的な白杭と同様)隣り合う2本のフェンスポストの内側の縁と縁を結んだラインが境界縁で、ボール全体がそのラインのOB側にあればOBとなるわけです。

 フェンスの真下に止まっていたローズのボールは、オフィシャルによりインバウンズと判断されました。大会のローカルルールは不明ですが、おそらくボール全体がフェンスの外側になければ、つまりボールの一部でもフェンスに触れていたらインバウンズなのでしょう。

 ともあれ、ローズのボールは「セーフ」。しかし、規則8.1aにより白杭と同様、境界物のネットも「ストロークに影響を及ぼす状態が改善されてしまう場合」には、動かしたり、曲げたり、壊すことはできません(※なお、境界物を誤って「動かす」などしても、次のストローク前に元の状態に復元すれば、2罰打のペナルティーは課せられません)。

 また、境界物がプレーの障害になったとしても、「罰なしの救済は認められない」(境界物の定義)。

 ですからローズは、ボールをあるがままでプレーするか、1罰打でアンプレヤブルの救済(常識的にはラテラル救済)を選択するしかありませんでした。

 そして、ローズが選んだのがフェンスを乗り越え、フェンスの反対側からストロークすることでした。

プレーヤーはOBに立ってプレーすることができる

 まず、プレーヤーがOBに立つことですが、規則18.2aに「プレーヤーはコース上の球をプレーするためにOBに立つことができる」とあり、違反ではありません。

 ただし、フェンスを乗り越える際には、前述した境界物を動かして「ストロークに影響を及ぼす状態が改善されてしまう」ことがないよう、距離をとる必要があります。

 また、ローズの場合は、クラブフェースとボールの間にネットが挟まって、直接ボールをヒットできない可能性もあります。しかし、R&Aのオフィシャルガイドには「ストローク中に球とクラブヘッドの間に他の物質が介在してもよい」(規則10.1a/2)として、次のような規則の解釈が掲載されています。

「球を正しく打つとき、クラブヘッドが球と接触する必要はない。時には他の物質が介在することがある。球を正しく打つことの例は、球がアウトオブバウンズを定めるフェンスの台座に寄り掛かって止まっていて、そのプレーヤーがその球を動かすためにそのフェンスのアウトオブバウンズ側からストロークを行う場合を含む」

 ということなので、ローズは境界物の反対側から無事にリカバリーショットを放つことができたのです。

「境界物」のフェンスにまつわるエピソード

 実は、2019年の「アーノルド・パーマー招待」でフィル・ミケルソンがローズと同様のリカバリーショットを試みたことがあります。

 ただし、ミケルソンの場合はよりタフな状況で、ボールはレフティーの彼が右打ちをせざるを得ないライにありました。それでもなんとかヒットしたのですが、残念なことにボールはネットに絡まるように引っかかった後、ポトリと落ちた地点はOBでした。

 最初からアンプレヤブルにすれば1罰打で済んだのですが、何事もアグレッシブにチャレンジするのがミケルソン。でも、結果は裏目。結局、彼は右打ちの1打に加え、OBの1罰打で、元のボール位置を基点に1クラブレングスの救済エリアにドロップ。このホールをダブルボギーとしました。

 もうひとつ、「境界物」のフェンスにまるわる有名プロのエピソードを紹介しましょう。

 21年のLPGAツアー競技「ゲインブリッジ選手権」でのこと。13年ぶりのツアー競技出場となったアニカ・ソレンスタムは、初日の5番ホールでティーショットを大きく曲げてしまいます。ボールはOBの境界物である金属製のフェンスの真下(インバウンズ)に止まっていました。

 ところが、そこはちょうどフェンスを通り抜ける門(扉)の箇所で、その扉を開ければストロークの障害はなくなります。そこで彼女はルールオフィシャルを呼んで「この扉は開けられますか?」と尋ねたのですが、オフィシャルの答えは「(境界物なので)できない」。

 ソレンスタムは仕方なくアンプレヤブルの救済を選択し、そのホールをトリプルボギーでホールアウトしました。

 しかし、翌日、委員会は前日の判断は誤りだったことを認め、ソレンスタムに謝罪します。

 実は、19年に改訂されたルールの「境界物」の定義に次のような一文があったのです。

「境界物には境界フェンスの基礎や柱を含む。しかし、次のものは含まない:壁やフェンスを乗り越えたり、通り抜けるために使用する門、階段、橋、類似の建造物」

 つまり、ソレンスタムのストロークの障害になったフェンスの扉は「動かせる障害物」であり、彼女は無罰で動かせたのです。

 ということで、OBの「境界物」が白杭ではなく、フェンスの場合は何かとドラマがあるようです。

【動画】ウソ! ここから打ってナイスパー!? これがローズの“フェンスショット”実際の映像です

【図解】後方線上ドロップの正しい処置と2023年ルール改訂3つの変更点をおさらい

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球がレッドペナルティーエリアにあることが分かっているか、事実上確実で、プレー ヤーが救済を受けたい場合、プレーヤーには3つの選択肢がある。それぞれ1罰打で、 プレーヤーは次のことができる。 (1)直前のストロークを行った場所に基づき救済エリアから球をプレーすることによっ てストロークと距離の救済を受ける。 (2)ホールとX点を結んだ後方線上のペナルティーエリアの外に球をドロップすること によって後方線上の救済を受ける。 (3)ラテラル救済を受ける(レッドペナルティーエリアに限る)。救済を受けるための基点 はX点で、球は2クラブレングスでX点よりホールに近づかない救済エリアの中にド ロップし、その中からプレーしなければならない。(ゴルフ規則 17.1dより抜粋)
1.後方線上の救済は「線の上」にドロップしなければならなくなった
2.救済後、風でボールが再び池に入ったら「無罰でリプレース」
3.間違ってインプレーでない球をリプレースしてパットした「2罰打→1罰打」
PGAツアーのX(@PGATOUR)より
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