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- 全英OPで起きたルール問題は一般アマにも“あるある” 「暫定球でいいや」のあと誰かが“嫌な場所”で初球を見つけたら?
今年の全英オープンで一時単独トップにも立った歴代優勝者のシェーン・ローリー。2日目にルール上のトラブルに見舞われてしまいましたが、この顛末は一般アマにも参考になります。経緯を振り返ってみましょう。
捜すつもりのなかった初球をギャラリーが見つけてしまった
今年の全英オープンを沸かせた選手の一人に2019年大会の優勝者、シェーン・ローリーがいます。彼は第2ラウンドを2アンダーの69でプレー。トータルを7アンダーとして単独トップに立ちました。実はそのラウンドの途中、11番パー4で「アンプレヤブル」(1罰打)を余儀なくされ、このホールをダブルボギーとしたのですが、その裏にはちょっと複雑なルール上のトラブルがありました。ことの経緯を振り返ってみましょう。
第2ラウンドの11番パー4。ローリーはティーショットを大きく右に曲げてしまいます。ボールはラフにありましたが、幸いライは良かったので、180ヤードほど先のグリーンを直接狙うことにしました。
ところが、ストロークの構えに入ったとき、右前方にいたカメラマンが近づいてきました。その存在が気になったので、ローリーはそこでじっとしているか、後方に下がるよう注意を促します。カメラマンはそのままその場にとどまったのですが、ローリーがスイングを始めると、カメラを構え撮影を始めたのです。ローリーはその動きが一瞬気になり、結果、ボールを大きく左に引っかけてしまいました。打球はフェアウェイ左サイドのハリエニシダの深いラフの中へ。
ローリーは激怒。そのカメラマンに放送禁止用語を交えて「とにかくどっかに行け! 後ろに下がれ!!」と怒鳴りつけたのでした。
もちろん、このシーンはメディアに大きく取り上げられてしまいます。しかし、問題はここからです。
競技終了後のローリーによれば、彼はまず同行していたルールオフィシャルにロストボールの恐れがあったので暫定球をプレーしたことを告げたそうです。その暫定球はナイスショットで、ピン奥4~5メートルにピタリ。暫定球でプレーを続ければ、4オン1パットのボギーでホールアウトできる可能性がありました。
そこでオフィシャルがローリーに尋ねたそうです。「初球を捜すつもりはあるの?」それに対し彼は「ノーと答えたんだ。それで処置は終わったと思った」と振り返ります。つまり、初球は放棄したことになったと考えていたようです。
ところが、そのすぐ後、前方にいたギャラリーがブッシュのなかからローリーのものと思われるボールを見つけてしまいます。
「そうなると私はそのボールのところに行って、自分のものか確認しなければならないんだ。私はボールが見つかる前に『捜すつもりはない』と宣言したから、(初球は紛失球になり)確認する必要はないと思っていた」とローリー。
そして、オフィシャルと言い争いになりました。伝えたメディアによれば、二人の間で「捜すつもりはないと言ったのに、それでも確認しなければならないのか?」(ローリー)「残念ながら、そうです」(オフィシャル)といったやり取りがあったそうです。
これにローリーは納得せず、セカンドオピニオンを求め別のオフィシャルを呼びました。しかし、やはり答えは同じでした。
結局見つかったのは彼のボールで、あるがままではプレーができず、1罰打のアンプレヤブルに。そして、このホールを5オン1パットの「6」、ダブルボギーとしたのです。
「ボールを捜さないで!」と要請すれば良かった?
規則18.3c「暫定球がインプレーの球となる、または放棄するまでその暫定球をプレーする」に、「暫定球がまだインプレーの球になっておらず、そして元の球かもしれない球が見つかった場合、そのプレーヤーはその球を確認するために合理的なあらゆる努力をしなければならない」と規定されています。そして、プレーヤーがそうしなかった場合は、委員会はそのプレーヤーを「失格」とすることができるとも記されてあります。
また、規則18.2a「球が紛失またはアウトオブバウンズとなる場合」には、ボールが見つかった場合、「プレーヤーは速やかにその球の確認をしようとしなければならない」ともあります。
つまり、初球が発見されれば、基本的に暫定球でプレーを続けることはできないのです。ただし、暫定球が発見された初球の手前――つまり、初球の確認に向かう途中――にあれば、その暫定球はプレーできます。
では、このケースでローリーはどうするのがベストだったのでしょうか?
規則18.3c(1)に「プレーヤーが暫定球でプレーを続けたい場合、そのプレーヤーは他の人たちに元の球を捜さないように依頼できる」とあります。
ですから、ローリーはオフィシャルに「初球を捜すつもりはない」と語った際に、ボールを捜すギャラリーたちに向って、「探さないでくれ!」と要請すれば良かったのです。
ちなみに、例えばマッチプレーでプレーヤーが暫定球でのプレーを希望し、「捜さないで!」と要請したとき、それに対して相手側がそれでは自分が不利になると判断すれば、要請を無視して初球を捜すことは可能です。見つかった場合、プレーヤーは暫定球を放棄しなければなりません。そんな駆け引きが展開されるマッチプレー、実際に見てみたいものです。
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