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PGM親会社のアコーディア買収は「2025年問題」への切り札!? ゴルフ場の“松・竹・梅”三極化は生き残りにつながるか?
2024年12月17日、パチンコ機器メーカーの平和による、ゴルフ場国内最大手のアコーディア・ゴルフの買収劇が明らかになりました。これにより173コースを保有のアコーディアと2位・PGMの148コースが合体した世界最大級となる321コースの大連合が誕生しました。
アコーディア系の一部は米・公営コースを手本にした形態に!?
「2025年問題」を目前にしたゴルフ業界に2024年12月17日、衝撃が走りました。パチンコ機器メーカーの平和による、ゴルフ場国内最大手のアコーディア・ゴルフの買収劇が明らかになったからです。買収額は、なんと5100億円。これにより173コースを保有のアコーディアと2位・PGMの148コースが合体した世界最大級となる321コースの大連合が誕生しました。
年の瀬の買収劇。その裏に横たわっているのが、日本のゴルフ界がこれから直面する「2025年問題」です。人口ピラミッドのボリュームゾーンを構成する約800万人が、このタイミングで75歳以上の後期高齢者となります。物価高の中、高齢者の財布を直撃する年会費の値上げなどの経済的な理由から、リタイヤゴルファーが増えていくことは避けられない状況です。
経済的には恵まれている富裕層でもゴルフ仲間が徐々にいなくなることは寂しいもので、ゴルフ人生にピリオドを打つ一因になります。最も大きいのはコースに向かう“足”の問題。厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)によると、2012年の認知症高齢者の数は約462万人でしたが、2025年には約700万人になると推計されていました。このところ続発している高齢者の交通事故のニュースや家族の勧めもあり、自動車免許を返納する人も増えていくでしょう。
特に関東のゴルフ場へのアクセスは都心部からのロングドライブが当たり前。東京湾アクアラインの渋滞が週末の午後を中心に増えているのもマイナス材料。千葉方面のゴルフ場を中心に、来場者数が大きく減っていくことも予想されています。
そうした課題を前に、関係者たちも手をこまねいているわけではありません。ピンチを打開するために進行中の様々なプランを関係各所に取材しました。
まずPGMと兄弟会社となることが決まったアコーディアの今後に対するゴルフ業界の見方はおおむね好意的です。これまでアコーディアは予約客の詰め込みすぎによるプレー時間の長さなどが影響し、会員権価格がついていたのは「成田ゴルフ倶楽部(千葉県)」(会員権業界関係者)。しかし、今後は高級ブランドの「グランPGM」を展開し会員権価格が安定しているPGMの運営ノウハウを取り入れることで、ゴルファーから再評価を得ることが期待されるからです。
アコーディア・ゴルフの新社長に年明け早々の1月末に就任予定の三好康之氏は「成田はもちろんグランPGMにも入っていけるコースだと思いますが、アコーディアは女性や初心者が楽しめるゴルフ場を提供する役割も担っていると思います。そういうゴルフ場を強化していきたい」と2025年問題への腹案を明かし、こう続けました。
「僕は子供の頃シカゴに5年、銀行員時代はニューヨークに7年半住んでいたんで、ムニシパル(公営)のゴルフ場で2ドル、3ドル払ってプレーしていました。アメリカでは3分の1がそういうゴルフ場。初心者が腕を磨けるゴルフ場が日本では少ない。ここを増やしていかないと、日本のゴルフ界も難しくなっていく。プレースタイルがおおらかで、お年寄りやお子さんがゆったり回れるコースを増やせたらと思っています」
17年に高価格帯の「グランPGM」ブランドを立ち上げ、他のコースとも差別化を図っているPGM。比較的安価で初心者がプレーしやすいゴルフ場を多く運営するアコーディア。中間に位置する他のコースを含め、3つのカテゴリーに321のゴルフ場を振り分けて再編していく構えが、鮮明になっています。
会員権事情に詳しい大野良夫氏(タクト代表/日本ゴルフジャーナリスト協会会員)は「たとえば沖縄では、(PGMの1コースとアコーディアの4コースで)計5コースになります。先日も会議の場でPGMの関係者が『今年の夏からナイター営業も行いますのでよろしく!』とえらい鼻息が荒かったそうです。そうした傾向は、全国に広がっていくでしょうね」と話します。
コースの数が増えれば、地元のゴルフ界への発言力が増すのも自然の成り行き。スケールメリットは至る所で発揮されるに違いありません。
豪華すぎるクラブハウスをなくせば1人2000円の料金も可能!?
米国、英国に次いで世界第3位のゴルフ場数2177(24年9月現在=日本ゴルフ場経営者協会調べ)を誇る日本とあって、PGM、アコーディア以外の1856コースにとっても、2025年問題はそれぞれに悩ましい問題であることも事実です。
日本ゴルフ場経営者協会の手塚寛会長に、今後の課題について聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「懸念されるのが労働力不足による倒産です。コース管理のスタッフの高齢化が進んでいて、全員が60歳以上のコースもあるほど。若い人が入っても年寄りばかりなので辞めてしまう。コースの自動化は進んでいますが、自動運転などの機械は数千万円かかる」
人手不足と現場の高齢化。やはり2025年に向け、課題は山積していることは事実のようです。そうした中、ゴルフの大衆化への道筋がすでにできているという見方もあるのです。前出の手塚会長は「少数会員のところは会員が10%程度のところも多くて、実際にはセミパブリック化が進んでいるという側面もあるんです」とゴルフ場の実態を明かします。ビジター頼みの経営形態になっていることで、ゴルフ場に行くハードルが下がってきていることは確かなようです。
そんな状況下でのゴルフ場の生き残り策を手塚会長は次のように提言します。
「今後に向けての対策はいくつもあるんですが、一番は大きすぎて豪華すぎるクラブハウスをなくすこと。水道光熱費、固定資産税がかからなくて済みますから。そうすると1億円で(ゴルフ場の経営を)優にやれます。年間5万人の入場者があるとして、1人あたり2000円の入場料でもやれます。それでコース管理もしっかりできます」。
これは前出の三好氏が語っていた、アコーディアが注力する「ムニシパル」タイプのゴルフ場のイメージとも重なる考え方です。12月4日に都内で行われた日本ゴルフジャーナリスト協会主催のパネルディスカッションにパネリストとして登壇したタケ小山氏も同じ意見です。
「アメリカでは23年現在に存在した1万7000コースのうち3000コースが『ムニシパル』です。で、他のメンバーシップやリゾートコース、パブリックコースが軒並み数を減らしているのに、ムニシパルだけがプラス5%と増えている。それだけ需要があるんです。今もゴルフ場が減り続けてソーラーなどに転用されていますが、そうなるくらいだったら自治体がゴルフ場を買い上げてほしい。47都道府県にそれぞれ一つはそうしたムニシパルのコースがあれば、ジュニアの育成の場にもなります」と熱く語っていました。
少子高齢化が進むニッポン。その対策はリタイヤゴルファーをゴルフ場につなぎ止め、若い世代のゴルファーを増やしていくこと。クラブハウスをシニアなどの施設に転用するなどして切り離し、ゴルフ場を「ムニシパル化」していくことが、2025年問題に対する一つの答えといえそうです。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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