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- 日本プロも制した元ジャンボ軍団のプロゴルファーがお肉屋さんに転身していた! 「プロゴルファーを続けることに未練ナシ」
男子プロの場合、ツアーから離れてもレッスンを生業とするなど、プロゴルファーとして生計を立てている選手は少なくありません。ところが、スパッとクラブを置き、全く異なる職業に就いた選手がいます。11年日本プロゴルフ選手権を制した河井博大(かわい・ひろお)です。なんと現在はお肉屋さんとして奮闘しているというではありませんか。早速、本人を直撃してみました。
「肉の切り分けが難易度高し」(河井博大)
スパッとクラブを置きプロゴルファーを引退、全く異なる職業に就いた選手がいます。2011年の日本プロゴルフ選手権を制した河井博大です。河井にとって最後の試合は、23年のマルハンカップ太平洋クラブシニアでした。まだシーズン5戦目で、8試合を残していたにもかかわらず、クラブを置くことを決意したのです。
96年のプロテストに合格して以来、27年のプロゴルファー生活に別れを告げた一番の理由は、気持ちの問題でした。
「燃え尽き症候群といいますか、自分の中でゴルフをやり切ったかなと」

レギュラーツアーで賞金シードを獲得したシーズンは8回。11年には公式戦である日本プロゴルフ選手権も制しています。23年もシニアツアーのシード選手としてまずまずの結果を残していましたが、レギュラーツアーで戦っていたときのような熱い気持ちを取り戻すことは難しかったようです。
第2の人生で何をするかはすでに決めていました。広島の実家は精肉店と焼肉店を同じビルで営んでおり、1階の旭屋精肉店を父親の憲三さんが、2階の「焼き肉あさひ」を母親の富子さんが切り盛りしていました。
将来のことを考え、河井は両親の内諾を得てから当時大学生だった長男の健志さんに跡を継がなかいと打診。了承した健志さんは食肉の専門学校に通った後、名古屋の精肉店での修業を経て、実家で働いていました。
「息子だけに任せるわけにもいかないと思い、自分も実家を手伝うことにしたんです」
ゴルフクラブを握っても包丁を握ることはほとんどなかっただけに、最初は思うように仕事をこなせませんでした。「肉の塊を部位ごとに切り分けていく作業がかなり大変でしたね。いや、今でも大変なんです(笑)」
熟練者が行うときれいに切り分けられるものの、河井が行うとどうしても他の部位と部位がくっついた状態で切り分けてしまうことがあるといいます。憲三さんと健志さんに切り方を教えてもらいながら、自分でも肉を切り分ける動画を見て勉強する日々は今でも続いています。
父と長男の中継ぎ役をまっとうしたい
ツアープロ時代同様、現在も河井の1日は長く、朝7時には出勤して取引先に配送する肉を切り分ける仕事から始まります。ひたすら肉を切りつつ、時には配送に行ったり、来店したお客さんの対応もこなします。
2階の焼肉店にスライスした肉を運ぶのも河井の仕事です。夕方の4時になると一度焼き肉店に顔を出し、肉の量をチェック。足りない分を補充しつつ、今度は野菜を切ったり、焼き肉店の仕事を行います。最終的に夜の7時まで働き、ようやく家路につきます。

「基本的に日曜日の昼間は休ませてもらっています。夕方から焼き肉店で働くので、丸1日休んだことはありません。覚えることがたくさんあるので、なるべく休みたくはないんですよ」
ちなみに、プロゴルファーを辞めてからはクラブを握っていないとのこと。ゴルフへの興味が薄れたというよりも、精肉店での仕事に魅力を感じているのが理由です。「ゴルフのほうが面白かったと思いますが、それに負けないぐらい今の仕事も面白いです。奥が深いですからね」と笑顔を見せます。
「ウチのお店は“美味しいものを安く”がモットーで、A5ランクの黒毛和牛をお手頃価格で提供しています。あいびき肉でも7割を黒毛和牛、3割が地元の豚肉を使っていますし、自慢のオジンスープ(テールスープ)も黒毛和牛です」
精肉店は52年の歴史があり、河井はその2代目を担うことになりますが、あくまでも父と現在は他店で働く長男の間をつなぐ中継ぎ的な立ち位置をまっとうしたいそうです。「できれば息子の代で100周年を迎えてほしいですね」
ゴルフクラブを包丁に替え、第2の人生を歩んでいる河井。新たな生きがいを見つけたその表情は、レギュラーツアーで戦っていたときと同じように輝いていた。
河井博大(かわい・ひろお)
1971年11月13日生まれ。96年のプロテストに合格し、2000年に初シードを獲得。11年からジャンボ尾崎に師事すると、その年の日本プロゴルフ選手権でツアー初優勝を飾る。パーオン率では2度1位になるなど、正確なアイアンショットを武器にしていた。22年にシニアツアーに参戦し、翌年のシード権を獲得するも23年8月にツアープロを引退。現在は実家の精肉店と焼肉店で修業中の身。
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