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「1ラウンド100円の協力金」プランで物議醸したゴルフミュージアム移転計画 “ゴルフの聖地”目指す市原市が名乗り【小川朗 ゴルフ現場主義!】
当サイト「ゴルフのニュース」にて3月24日既報の「JGAゴルフミュージアム」の移転に関する記事は各方面から大きな反響がありましたが、早くも受け入れに前向きな自治体が出現。国内最多である33ものゴルフコースが存在する千葉県市原市です。
3年前には現所在地である三木市からも市内の施設にと申し出
「市原はいつでもウエルカムです」。現在、兵庫県三木市の廣野ゴルフ倶楽部内にある日本ゴルフ協会(JGA)の「JGAゴルフミュージアム」の移設先に、千葉県市原市が名乗りを上げました。当サイト「ゴルフのニュース」にて3月24日既報の同ミュージアムの移転に関する記事は各方面から大きな反響がありましたが、早くも受け入れに前向きな自治体が出現。国内最多である33ものゴルフコースが存在する千葉県市原市です。

3月28日に同市のロッテ皆吉台カントリー倶楽部で行われた「第3回市原市ジュニアオープン」の表彰式にプレゼンターとして出席した小出譲治市長が、筆者の取材に対し、歓迎の意向を明らかにしたもの。「ゴルフミュージアム」の招致レースに向けて、「市原をゴルフの聖地に」と繰り返してきた小出市長が、先手を打った形です。
※ ※ ※
JGAが2025年4月1日、「日本プロゴルフ殿堂」を発展的に吸収し「日本ゴルフ殿堂」を設立。これと並行して兵庫県三木市の「JGAゴルフミュージアム」を移設する計画も本格化します。
ただ、その内容についてはほとんどが白紙の状態。移転先も検討段階であることを知らされた小出市長は即座に反応しました。「市原市はいつでもウエルカムです」と、ミュージアムの移転先候補に挙がるのは大歓迎であることを明かしました。
現在、廣野GC内にある同ミュージアムは1982年5月21日にオープン。独立した建物を持つゴルフのミュージアムとしては世界で3番目に古く、ゴルフクラブ、ボール、ティーなど用具史上貴重な所蔵品も2000点超えは世界でもトップクラスです。
また、日本人初のゴルファーと言われる水谷叔彦氏、日本のゴルフ場第1号である神戸ゴルフ倶楽部創設者のA・H・グルーム氏の肖像写真など、日本のゴルフ界に足跡を残した先人たちの愛用品や写真、優勝杯などがズラリと並んでいます。
また、日本プロゴルフ選手権の初代優勝者で、日本人として初めてメジャートーナメントに挑戦した宮本留吉のゴルフ工房を再現したコーナーもあります。
このほかヨーロッパにおけるゴルフ発祥の歴史や、ゴルフ場や用具の発展が一目でわかる展示もあります。この日も市原ジュニアオープンを開催する等、ジュニアの育成にも力を入れ、「ゴルフの聖地」を目指している市原市にとって、このミュージアムが移転してくれば象徴的な存在となるはずです。
一方で3年前、ミュージアムの現所在地である三木市側からJGA側に「廣野から市内の施設にゴルフミュージアムを移設したい」という申し出があったものの、実現に至らなかった経緯があったことも明らかになりました。
候補となっていたのは2022年4月より三木中学校との統合に伴い廃校となった三木市立星陽中学校の旧校舎。「その校舎をリニューアルして、ゴルフ殿堂を移設するという計画を打診されました。校庭を駐車場に使えるなどの利点もありましたが、市民のアクセスなどいくつかの問題点があり、実現しなかった」(JGA・山中博史専務執行役)。
一方で市原市側もすでに数年前、移転を視野に入れた行動に出ていました。もともと、現在のゴルフミュージアムがある兵庫県三木市とは「東の市原、西の三木と、東西の聖地として連携していきたい」とエールを送り合っていた間柄。東日本最多の33コースがある市原市と、西日本最多の25コースがある三木市の両市長がサミット会談をするというプランが浮上し、それに向けて事務方レベルの調整作業がスタート。市原市のスタッフが三木市に出張した折、課長以下担当者全員がミュージアムを訪れていました。
当時を知る関係者がこう明かします。「『こういうもの(ミュージアム)を市原に持ってくるべきだよね』という話です。それを感じてもらうために、当日は閉館日だったのですが、無理を言って開けてもらいました」。
日本の“ゴルフの聖地”としてふさわしいのはどこなのか
実はこのミュージアム、1~3月と7、8月は休館。年間7カ月しか開いていません。一般入館者の入館料は200円で、廣野をプレーするゴルファーは無料で観覧できますが、神戸市内から遠くPR不足から認知度も低いため、入館者数は低迷。2019年などはコース改造中だったこともあり、年間入館者数は202人まで落ち込みました。翌20年もコロナ禍だったという事情はあるものの、339人と1年間にならせば1日1人にも満たない状況が続いていました。

直近でも昨年が653人、一昨年が659人と若干回復したものの、依然として伸び悩んでいます。まさに宝の持ち腐れ状態。貴重な資料が塩漬けになっていることへの不満もさることながら、「西村貫一コレクション」などのゴルフ史上貴重な書物の劣化も心配される状態になりつつあります。
そのため、今後は廣野からの移転先探しが具体化していきます。問題はその資金で、各企業からの寄付やゴルファーからラウンドあたり50~100円の支援金を募るプランも検討されていることは、当コラムでもすでに報じています。
しかし、この方法に関しては支援金を徴収されるゴルファーだけでなく、徴収作業を代行するゴルフ場からの反発も相当大きなものです。国内最多の173コースを保有するアコーディア・ゴルフも「当社として正式なご依頼を受けましたら、検討させていただきます」と態度を保留しています。
栃木県内で3ゴルフ場を運営する鹿沼グループの福島範治社長はミュージアムの移設場所について、こう話します。
「昨年『GOLF IT!』(ゴルフ イット=スコットランド・グラスゴーにオープンした地域密着型ゴルフエンターテインメント施設)を見学してから、セントアンドリュースで全英オープンを観戦したんです。その時に隣接しているR&Aゴルフミュージアムにも行きました。セントアンドリュースもゴルフタウン。やはり歴史と伝統を感じさせる、ゴルフの聖地と呼ばれるにふさわしい場所にミュージアムがあることも大事なんだと痛感しました。日本でそういう場所となると、どこなんでしょうね。野球殿堂は東京ドームのお隣のいい場所にありますよね。交通の便がいいことも大事だとは思いますが」
ゴルフの聖地と呼ぶにふさわしい場所となれば、真っ先に思い浮かぶのがゴルフ場第1号の神戸GCのある六甲山。2番目の横屋GAがあった場所には、神戸市立魚崎中学校(兵庫)が建っています。
関東のゴルフ場第1号で国内3番目の根岸GCは根岸森林公園(横浜市中区)になっています。「日本人の、日本人による、日本人のための初のゴルフ場」だった東京ゴルフ倶楽部駒沢コースは今、駒沢オリンピック公園(東京都世田谷区)になっています。
セントアンドリュースのような場所を日本で求めるのは難しいのかもしれません。そういう意味では日本最多のゴルフ場数を誇る市原が、ゴルフ殿堂博物館を保有しながら「ゴルフの聖地」を目指すことも選択肢の一つに加えてよさそうです。
多くの可能性が浮上する中、JGAがどんな決断を下すのでしょうか。展示品は逃げないとはいうものの、多くのお宝が1年に600人程度しか訪れない寂しい場所に押し込められているのはもったいない限り。ゴルフ文化を広める活動を、1日でも早く進めて欲しいものです。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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