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クマ出没に翻弄されるゴルフトーナメント… 他の大会は大丈夫なのか!? 安全対策の最前線に取材【小川朗 ゴルフ現場主義!】
本戦開幕前日にクマの目撃情報があった「明治安田レディス」は、短縮された54ホールを無観客で開催して幕を閉じました。今後もクマの生息域で行われるトーナメントが続きます。他の大会はどんな対策を講じているのでしょうか。
トーナメント当日の朝に「ベアドッグ」がコース周辺をパトロール
本戦開幕前日にクマの目撃情報があった先週の「明治安田レディス」(宮城県・仙台クラシックゴルフ倶楽部)。地元猟友会が警備にあたり、クマ対策の爆竹を鳴らすなど緊急対策を講じた同大会は、短縮された54ホールを無観客で開催して幕を閉じました。

今後もクマの生息域で行われるトーナメントが続くため、これから開催を控えている大会関係者も対応に追われています。その救世主となりそうなのが、すでに「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」の警備にも携わってきた「NPOピッキオ」です。
※ ※ ※
1頭のクマに翻弄された1週間でした。開幕前日の7月16日、会場の仙台クラシックGCでクマが出現したとの情報がトーナメントを直撃すると、関係者は対応に追われました。
プロアマ参加者、選手、観客、関係者の安全確保のため、プロアマと初日(第1ラウンド)の競技中止を決定。前述の通り、競技は54ホールに短縮され、無観客で行われることになりました。
ギャラリーゼロという、究極の選択。その現実は日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)小林浩美会長のコメントに象徴されていました。「ファンの皆様には、とても楽しみにしてくださっている中で、苦渋の決断となりました。観戦ができなくなってしまったことに関しては本当に申し訳なく思っております」。
今後も女子ツアーは「北海道meijiカップ」(8月8~10日、札幌国際CC島松C)や「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」(8月15~17日、長野・軽井沢72G北C)など、クマの出没エリアでの開催も予定。小林会長は「地元自治体の皆様と、猟友会の皆様、警察の皆様のご協力があってこそなので、皆様の連携は本当に欠かせない。具体的な安全対策を講じながらやるというところが、やっぱり大事だと思っています」と今後の対策にも言及しています。
そうしたなか、すでに女子ツアーにおいて、軽井沢に本拠を置く特定非営利法人(NPO)「ピッキオ」の手によって、クマ対策を施してきた実績があったのです。軽井沢におけるクマ対策の特徴は、古くからヒグマ猟で活躍してきた「ベアドッグ(Bear Dog)」とよばれる犬の存在。ロシアとフィンランド国境エリアが原産の、カレリア犬という犬種です。「独立心が強い大型犬であり、吠え声が大きく、運動量が多いことから、愛玩犬としての飼育にはあまり向かない犬種です」(ピッキオのウェブサイトより)。
このベアドッグを「ハンドラー」とよばれる人間の相棒がサポートして活動にあたります。
「ベアドッグはわれわれ人間よりも嗅覚とかの感覚が優れていて、クマの気配を察知する能力がすごく高い。訓練も受けていますので、ゴルフトーナメントが始まる前に周辺をパトロールするとか、そういったイベント前後での対策ができると思います。ただパトロール1回でクマがいなくなるというものでもないので、根本的にクマを排除するということは難しいと思います」
「ゴルフ場は周囲を森に囲まれており、クマにとっても食料となる木の実があるなど、魅力的な環境です。クマが完全に出てこないようにというのは、なかなか難しいと思います。人との遭遇となってしまうと事故になってしまう。やはり人がケガをしますので、事前にできる対策というとそういったところです」
そう解説してくれたのは「ピッキオ」の広報担当・角屋真澄さん。すでに20年以上、軽井沢町からの委託を受けて熊対策を行っている組織です。
「もともとは1990年代に軽井沢町もクマによるゴミ荒らしの被害というものが深刻な問題になって、最初はクマに開けられないゴミ箱の開発というところから始まりました。98年から私たちピッキオ独自で調査を開始しまして2000年から町の委託事業として熊対策を始めたんです。現在、ピッキオは長野県のクマ対策員にも指名されており、県内の東側(東信地域)でクマに関連する事故が発生したりクマの出没があったりした時に、要請を受け出動しています」
ハンドラーとベアドッグがコンビを組んで、クマを人間から遠ざける。町民とクマの共存を目指してきたピッキオは、トーナメントにおいては具体的にどんな活動を行っているのでしょうか。
「NEC軽井沢72ゴルフトーナメントの主催者様からは、数年前から大会の開始前に周辺パトロールのご依頼をいただいています。具体的にはトーナメントが始まる前に、クマの保護管理を行っているスタッフがベアドッグと周辺を調査し、クマがやぶの中とか近くの森に潜んでいないかというのを調べているというような状況です。調べて、もしクマがいたりすれば森のほうに追い払うというようなことを行っております」
「軽井沢の場合は町自体が森に囲まれているので、夜の間にクマが近づいてきているということもあるんですね。そのため人が動き出す前の時間にという形になりますが、トーナメント当日の朝にパトロールさせていただいて、周辺の安全確認をしているというような状況です」
ヒトとクマの共存を目指すピッキオが説く安全な観戦法とは?
訓練を積んだ犬を連れているとはいえ、クマと対峙することもありうるのがハンドラーの仕事。怖くないのでしょうか。聞くと、こんな答えが返ってきました。
「常日頃からクマの調査をしていて蓄えているデータと知見がありまして、それをもとに『正しく恐れる』ということができますので、闇雲に怖いということは、それほどないです」
「クマの事故の多くは“バッタリ遭遇”といって、向こうもこちらも予期しない状態で出会ってしまったという時に起きます。クマ鈴を持ち歩いて出会わないための対策というのを常にしております」
「逆に言うと、こちらの存在をクマに知らせることで回避できる。ある程度安全のパーセンテージを上げるということになります。鈴の音で私たちの存在を事前にクマに知らせる、というのが一番被害を防ぐ対策になるかなと思います」
近年、問題になっている人間の食べ物の味を覚えてしまって恐れなくなったクマは別として、本来、クマは人間の存在を認識させれば、寄ってくることはないということのようです。
「クマは本来の性質として、森の中でひっそりと暮らしている生き物です。人の存在を向こうが察知すれば基本的には逃げたり隠れたりする、もともと臆病な性格。気づいて襲ってくるというのは、基本的にないはずです」
これはゴルフ観戦でも頭に入れておいたほうが良さそうです。クラブハウスやギャラリープラザ、人気選手の組は大勢の人がいますが、そこから離れたトーナメント会場の奥まった場所で1人とか2人になってしまうことは、取材歴44年の記者にも経験があります。そんな時、コースに隣接した林や草むらの中に、クマが潜んでいても、なんら不思議ではありません。
「やぶのあるようなところは、クマからも私たちからも視界がきかないので、そうした状況での遭遇というのはかなり危ないと思います。そういったところには近づかないようにしていただき、観戦される方は複数で行動していただくっていうのも一つ対策になるかなと思います。複数でいる人のほうには熊も向かってきづらいという面もありますので」
選手のプレーの妨げになるような場所でクマ鈴は使えませんが、会場内では周囲に気を配りながら見通しの良い場所を選んで移動すること、複数で行動することなどが、ギャラリーとしてできる対策と言えそうです。
ただし、人里に慣れてしまったクマの出るエリアにおいては、個人的な対策では限界があります。大会を開催する側は早急に考えなければならないでしょう。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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