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「生涯ここでゴルフを」の思い空しく… 58年親しまれた河川敷コースが大みそかに幕 “ゴルフ場減少時代”の最前線を行く
60年近くの長きにわたり、埼玉県民や東京都民を中心に親しまれてきた河川敷ゴルフ場「川越グリーンクロス」が、荒川治水事業の影響を受け、2025年12月31日を最後に営業を終了しました。
周辺住民の安全と引き換えに閉場を迫られる宿命
60年近くの長きにわたり、埼玉県民や東京都民を中心に親しまれてきた河川敷ゴルフ場「川越グリーンクロス」が、荒川治水事業の影響を受け、2025年12月31日を最後に営業を終了しました。“最後の日”を日本ゴルフジャーナリスト協会会長の小川朗氏がリポートします。
※ ※ ※
2025年の大みそか、朝の5時半。日の出前の埼玉県川越市は好天に恵まれ、キーンとした寒さに包まれていました。
川越グリーンクロス“最後の日”です。1967年8月4日の開場から数えて58年と4カ月28日。2万1335日目の朝も、暗いうちから続々とゴルファーたちが詰めかけてきました。
【5:55 クラブハウス前 駐車場】
車のトランクからキャディーバッグが下ろされ、並べられていきます。6時少し前にクラブハウスが開くと、正面玄関に横付けされた軽トラックに、そのキャディーバッグが詰め込まれます。
土手の向こう側にある船着き場に、まずはこのバッグを運ぶ必要があるからです。
ゴルファーたちはチェックインを済ませ、身支度をするとコース前の階段を上り、土手の上に上がります。
いきなり眼前に広がるのは、穏やかに流れる荒川と、その向こう側の河川敷にレイアウトされた27ホールの「川越グリーンクロス」です。
JR川越線の荒川橋梁の上に白々と夜が明けていくのを右手に見ながら階段を降りれば、名物の渡し舟が発着する船着き場。ここにクラブハウスで積み込まれたキャディーバッグが到着します。

【6:30 対岸へ】
ボートは静かに岸を離れ、対岸を目指します。この日は波もなく鏡のような水面。ゆったりとした流れですが、台風の日などは状況が一変します。
そもそも「荒ぶる川」だから「荒川」。平安時代の『日本三大実録』に、すでに洪水の記述ありといいます。以来、何度も氾濫を繰り返してきました。
直近では、2019年にこのエリアのゴルフ場が増水により冠水し、大きな被害を受けています。そもそも今回の閉場も、昨今の異常気象により洪水対策を迫られたため。大規模な調整池を造る計画に、ゴルフ場が呑み込まれた形なのです。
「平成30年度着手『荒川第二・第三調整池事業について』」という資料に、こんな記述があります。
「荒川流域は、東京都と埼玉県にまたがり、流域内には(全)人口の8%が集中しています。特に埼玉県南部および東京都区間沿川(えんか・川沿いのこと)は人口・資産が高密度に集積している地域になっています。荒川の治水安全向上のための基本的な対策として、広い高水敷(堤防と川の間にあるエリアのこと)を活用した調整池の整備に着手しました」
要するに、今あるゴルフ場の場所にカラの池を作り、増水した時にはここに貯め、氾濫の被害を減らそうというわけです。荒川にはすでに治水量3900万立方メートルの第1調整池があり、今回造られるのは第2・第3の調整池。この2つの治水量は5100万立方メートルで、事業期間も2018年からの13年間に及びます。
裏を返せば、ここに造られたゴルフ場は、周辺住民の安全と引き換えに閉場を迫られる宿命を背負わされたとも言えるのです。
「川を渡るっていう、この一手間の感じが、風流で良かった」
【12:34 船着き場】
スタッフの一人はバッグの積み下ろしを済ますと一息ついて、おのおのの身の振り方について話してくれました。
「私はここで15年くらいですが、もっと長い人はたくさんいますよ。明日からは皆、それぞれですね。今月で辞める人もいるし、3月いっぱいまで残務整理という人もいます。行先は同じ埼玉県内だと富貴(GC)、PGM武蔵(GC)、飯能くすの樹(CC)とか、岡部チサン(CC)。PGMはゴルフ場の数があるので、千葉とか神奈川に行く人もいます。アコーディアと統合したとはいえ、やっぱりやり方が全然違うんですよね」

【14:46 中コース9番】
この日、コース閉場を惜しんでコンペを主催したのが、永井延宏プロ。2組7人でプレーしました。
「グリーンもバンカーもそれなりにしっかりしていて、河川敷っぽくないので楽しいです。スコットランドにありそうなパー3もあります」と永井プロはコースの特徴を話したうえで、こう続けました。
「それにパー3、パー5、パー4が全部3つずつだから、アマチュアの人はショットの調子がいいと好スコアが出るんです。南と中コースは白マークからだと距離が短いので、いわゆるボギープレーヤーにはパーオンのチャンスが増えます。スクラッチプレーヤーにとってパー3が増えるメリットはないですが、ボギープレーヤーはワンショットでグリーンに乗るホールが増えるのはメリットです。同様にパー5もパーオンのチャンスが増えると思います。だからベストスコアが出やすい」
確かにグリーンクロスのラウンド経験者からは「ベストスコアが出た」という声をよく聞きました。永井プロは多くのアマチュアに愛された理由を解説したのに続き、自身のコースへの思いを吐露しました。
「今年(2025年)は中コースの5番でホールインワンも達成できたんです。僕は家が所沢なんで、今朝は30分で来られました。生涯ここでゴルフを楽しめるといいな、と思っていたので、本当に残念です」
【15:07 クラブハウス前】
ゴルフインストラクターとしての顔も持つイラストレーターでコラムニストのリサオさんも、このコースを愛した一人。
「河川敷はもともとすごく好きだから残念。川を渡るっていう、この一手間の感じが、風流で良かった。だだっぴろいコースは狙いどころが一見簡単そうで難しいから、レッスンするのにもすごくいいんですよ。水鳥とかもいるし。今日もオオバンがいたね。ノーザン(CC)錦ヶ原(ゴルフ場)でもトラフズク(虎模様のミミズク)を見たことがあって、自然が豊富で水辺が楽しいのが河川敷なのに……」とタメ息をつきました。
【15:23 クラブハウス前】
ゴルフ業界では知らぬ人はいない矢野経済研究所の理事研究員・三石茂樹さんも、永井プロのコンペに参加していました。
「大衆コースという意味合いもあってスコアが出やすく、いろんな人が気軽に来られていましたよね。河川敷なんだけどコースのメンテナンスもしっかりしていたので、残念です。仕方ない理由とはいえ、ここも日本の異常気象の被害者の一つなのかなという気がします」
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