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- 中嶋常幸が献花後に思いを馳せたジャンボとの“2大名勝負” 終生のライバルだけが知る“魂のやり取り”
昭和から平成へ――。日本ゴルフ界を彩ったジャンボ尾崎と中嶋常幸の激闘は、勝敗を超えた“物語”だった。雨に沈む東京、北の大地・小樽。極限のプレッシャーの中で交錯した意地と敬意。別れの時に蘇ったのは、魂を削り合ったあの日々の記憶だった。
「その姿を見て多くの選手たちが遺志を引き継いでいる」
1989年、名古屋ゴルフ倶楽部和合コースで行われた日本オープンは、豪州の強豪ブライアン・ジョーンズとデッドヒートの末、ジャンボが17番ガードバンカーから1発で決めて大会2連覇。自ら「ジャンボ復活じゃない。新しい尾崎ゴルフを作り上げたんだ」とまで言い切るほどの第2期黄金時代がやってくるのです。
そのさなかであった90年、ジャンボの大会3連覇が北の大地・小樽で行われた日本オープンに懸かります。この大会が中嶋にとってもう一つの「ジャンボとのベストゲーム」となります。
初日2位の好スタートを切った中嶋は、2日目には首位に立って前半を折り返しました。しかし3日目はどんより曇った空に抑え付けられたかのように自分のゴルフができず、ジャンボに首位を明け渡してしまいます。最終日の18ホールを残しての4ストローク。それは絶望的な差に思えたと言います。「とにかく、あの頃のジャンボは強かったから」と話す一方で、中嶋はこうも語っています。「3日目のつまずきによって、一番大切な教えである“オールドマン・パー”にたどり着いた。対戦する相手が、人からコースに変わった。人を見ちゃダメなんだ」。
ボビー・ジョーンズが言った、各ホールのパーを擬人化した“オールドマン・パー”を相手にプレーするスタイルに徹することを自らに誓って臨んだ最終日。4打差が2打差まで詰まり、迎えた12番、中嶋のバーディーとジャンボのボギーで2人は7アンダーで首位に並びます。
そして14番。2メートルはあった中嶋のパーパットがカップに消えた瞬間、北の大地を揺るがすような大歓声が、14番グリーンを包み込みました。
この1打が勝負の流れをガラリと変えます。ジャンボが直後の15番から3連続ボギー。中嶋は、15番こそボギーながら、16、17番はパー。最終ホールは両者バーディーで、中嶋7アンダー、ジャンボ5アンダーで決着がつきました。

悔しい敗戦から2年後の雪辱劇が、長い歳月を経た今も鮮やかによみがえります。中嶋にとって、やはりジャンボは特別な存在でした。
「小さい時から憧れていた人でもあった。ああいうゴルファーになりたいな、ああいうゴルフをしたいなって思っていました。ジャンボのおかげで、やっぱり今の若い選手たちがあれだけ飛ばせるようになったし、飛距離で言えば世界に通じるような飛距離を出せるようになった。パワーゴルフの幕開けは、彼がいたからこそできた。本当に日本のゴルフ界のブームを作った人。その姿を見て多くの選手たちが遺志を引き継いでいる」
中嶋はジャンボとの初対面で金言となるアドバイスをもらっています。
「ジャンボの言葉で記憶に残っているのは『体を鍛えるんだぞ。体を作ってこそのスポーツ選手だ』と。その言葉が一番大きかったです。一番最初の、記憶に残る言葉でしたから。19歳の時でした」
ジャンボのプロ意識も学ぶべき対象でした。
「(ジャンボは)これではダメだとか、もっとここを強くしなきゃいけないとか、体を作ったり、技術を作ったり、いつも本当にゴルフを真剣に考えていた人。そういうものを自分たちが見ていましたから、自分の練習にも生きましたよね。彼の言葉がなかったら、そんなに大した成績を残せていなかったんじゃないかなとも思う」
終生のライバルが旅立つ直前、中嶋はジャンボ邸を訪ねていました。
「会いに行ったのは亡くなる前日だったんで、智春君に会って『どう?』って聞いたら、『親父、頑張ってますよ』と。その一言ですべて分かった。もっと早く会いたかったなってなるけど、でも僕の記憶の中では元気なジャンボしか残ってないんで、それは幸いかな、とは思っています」
長いプロ人生で激闘を繰り広げたジャンボと中嶋。そこには2人しか分からない“魂のやり取り”が交わされていました。それが昭和から平成にかけて、ファンの心をつかんだゴルフ人気の根底にある気がしてなりません。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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