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- 今年も全英王者が“退場処分”に! マスターズから“永久追放”“お叱り”を受けた男たち 何が逆鱗に触れたのか?
マスターズには華やかな舞台の裏で、厳格な規律を破った者に容赦ない現実が待っています。広告まがいの行為で永久追放となったレジェンドの次男をはじめ、名門オーガスタの“逆鱗”に触れた数々の逸話は、そのブランドを守る強い意志を物語っています。
“ゲリラマーケティング”で永久追放になったレジェンド次男
間もなく開幕を迎える“ゴルフの祭典”マスターズトーナメント。主催のオーガスタナショナルGCは運営面で厳格な“決まり”を設けており、違反者は誰であろうと例外なく“お叱り”を受けます。なかには“出禁”を食らうことも。米ゴルフウイークによれば、1989年全英オープンチャンピオンのマーク・カルカベッキアは今週火曜日、コース内で禁止されている携帯電話を使用したことで退場させられたそうです。歴代著名人たちの興味深い例を見てみましょう。
まずは記憶に新しいところで、2024年のジェイソン・デイのエピソードから。大会2日目、彼はフロントに大きく「MALBON GOLF CHAMPIONSHIP」と描かれたベストを着用してプレーを始めました。MALBONは17年にロサンゼルスで誕生した新感覚のゴルフブランドです。しかし、その宣伝かのようなデザインはマスターズにはそぐわないと許してもらえませんでした。ラウンドの途中、オフィシャルから丁重に「脱ぐことはできますか?」と求められたデイは素直に従うことになりました。
翌25年にはこんなことがありました。アリゾナ州立大ゴルフ部監督のマット・サーモンドは教え子で前年の全米アマチュア優勝のホセ・ルイス・バレスター(現リブゴルフ)の練習ラウンドに付いて回った後、練習場で同大学卒業生のケビン・ユーを見つけると、大会公認のコーチのバッチを持っているからとロープ内に入ってハグを交わします。ところが、すぐにオフィシャルが現れ、練習場からの退去を命じられました。サーモンドはロープ内では禁じられているショートパンツ姿だったのです。
一方、選手のバレスターも、スコッティ・シェフラー、ジャスティン・トーマスとの注目組でプレーした第1ラウンドの途中、13番ホールで尿意を我慢できず、グリーン手前を流れる深い谷川のようなレイズ・クリークで“立ちション”をやらかしています。そして、そのことを「僕を見つけたパトロンから拍手が挙がったんだ。今日、僕がもらった一番の拍手だったから、ちょっとおもしろかった」と、うれしそうにメディアに語ったことでさらなるヒンシュクを買い、オーガスタナショナルに謝罪することになりました。

人気選手のリッキー・ファウラーもマスターズでお叱りを受けた一人です。
リッキーはプロ入り当初、インタビューなどでは常にプーマのキャップを後ろ前(ツバを後ろ向き)に被っていました。いわば彼の“トレードマーク”でもあったのです。初めてのマスターズとなった11年。注目選手として開幕前の公式記者会見に現れたときもやはりそのスタイルだったのですが……。会見場を差配するオーガスタナショナルのメンバーが「キャップを正面に戻してください」と要請。でも、リッキーは「みんなから僕の顔がよく見えるようにしているんだ」と冗談半分に拒否。しかし、そのメンバーは表情を崩すことなく再度指示。さすがのリッキーも黙って応じるしかありませんでした。
マスターズの開幕を告げるのが、野球の始球式にあたる「オナラリー・スターター(名誉スターター)」のティーオフです。21年はゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラス、リー・エルダーの3人によるセレモニーでしたが、そこでプレーヤーのキャディーを務める次男のウエインが契約するボールメーカーの3個入りスリーブケースを胸の前に掲げる“ゲリラマーケティング”。この行為は当然、オーガスタナショナルの逆鱗に触れ、ウエインはマスターズから出禁処置、事実上の永久追放になりました。
実は、父親のゲーリーもディフェンディングチャンピオンとして出場した1962年大会でプレーオフの末、アーノルド・パーマーに敗れた後、その年の優勝者以外は禁じられているグリーンジャケットの持ち帰って叱られた“前科”があります。
マスターズのイメージを守り続けようとする強い意志
マスターズには、そこで使われる言葉、表現にも厳しい決まり、規定があります。有名なところでは「ギャラリー」ではなく「パトロン」ですし、「ラフ」ではなく「セカンドカット」です。ラフには「粗い」という、オーガスタナショナルらしくないニュアンスがあるためと言われます。また、公式には「フロント9、バック9」ではなく、「ファースト9、セカンド9」と表されています。
こうした言葉の決まりを破ったためにレポーターの職を失ったのが、元プロゴルファーで人気解説者のゲーリー・マコードです。1994年大会で、彼は“ガラスのグリーン”とも表される硬く速いグリーンを脱毛処理法の「ビキニワックス」、コース上のタフなスポットを遺体収納袋の「ボディーバッグ」という言葉を用いてユーモラスに表現したところ、即アウト。二度とマスターズのマイクを握ることはありませんでした。
最後は、米ゴルフダイジェストに先日紹介されたエピソードから。
前半2日間をテレビ中継するESPNのコメンテーターで、スポーツ番組のアンカーを務めていたケニー・メインは、ある年の「ザ・プレーヤーズ選手権」の中継のなかで、解説者のスコット・ヴァン・ペルトやアンディー・ノースを相手に「じゃあ、次はマスターズで。こっちはイカした女性を4人連れていくから」と軽口を叩いたそうです。すると、番組が終わらないうちに中継車にオーガスタナショナルGCから電話があり、スタッフに「彼はうちには来ないから」と告げたと言います。実際、それ以降、彼がマスターズに呼ばれたことはないそうです。
いずれのエピソードからも“ゴルフの祭典”マスターズのイメージを守り続けようとするオーガスタナショナルGCの強い意志を感じます。
文・小関洋一
出版社、編集プロダクションを経て83年からフリーランスライターに。テレビ誌・トレンド誌などで主にスポーツに関する記事を執筆。テレビ、ラジオのスポーツ番組の構成も手掛ける。その後はゴルフ誌やネットメディアで内外の最新情報やゴルフ場レポート、ルール解説を執筆。JGAやKGA競技のオフィシャルライターも務める。東京ゴルフ倶楽部や日本ゴルフ協会の年史制作に携わっており、ゴルフ史に関する執筆機会も多い。
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