今だから問いたい五輪でのゴルフの意義

様々な意見がある中、開幕した東京オリンピック。ゴルフも今週7月29日(木)からの男子を皮切りに、来週8月4日(水)からは女子の競技が始まります。

前回112年ぶりに五輪競技へ復活 目的は「ゴルフの普及」

 東京オリンピックは、一体だれのために開催されているのでしょうか。世界で、そして日本で、幾度となく問われているこのテーマが、ゴルフ競技でも改めて浮き彫りになるはずです。

 1900年パリ大会、1904年セントルイス大会の2度、オリンピック競技として行われたゴルフですが、以来、長い間オリンピックとは縁がありませんでした。その間、それぞれの国でプロのツアーが盛んになり、メジャーと呼ばれる大きな大会が確立。ゴルフだけの世界で広まっていきました。

2016年のリオ大会でメダルを獲得した3選手(左からヘンリク・ステンソン、ジャスティン・ローズ、マット・クーチャー) 写真:Getty Images

 オリンピック競技にゴルフが復活したのは2016年のリオ大会。実に112年ぶりのことでした。リオに続き2020年の東京での開催も決定(1年延期となり2021年になったのはご存じの通り)。2024年のパリまでは、五輪でゴルフが見られることはすでに決まっています。

 なぜ、前回のリオ大会で、112年ぶりにゴルフがオリンピックの種目となったのでしょう。それは、他の競技と同様に、ゴルフの普及のためでした。世界中のゴルフ関係者が、協力し合ったのです。

 オリンピック競技になるためには、その競技のIF(国際連合)が必要です。そのため、それまで世界アマチュアゴルフ会議(WAGC)という名前でアマチュアゴルファーを中心に活動してきた団体が、IGF(International Golf Federation)に名称を変えて本格始動しました。2010年のことです。この時、積極的に協力したトッププレーヤーの1人、アニカ・ソレンスタムが、現在はIGFプレジデントを務めています。

現在IGFプレジデントを務めるアニカ・ソレンスタム 写真:Getty Images

 プロの世界でもアマチュアの世界でも、それなりにゴルフは広がっているように見えますが、まだまだゴルフには縁のない人も世界中にはたくさんいます。お金がかかったり、ゴルフ場が近くになかったり、理由は様々です。

 ゴルファー以外にゴルフを見て楽しむ人が少ないと言う事情もあります。オリンピック競技になれば、もっと多くの人がゴルフを身近に感じてくれる。他の競技同様、ゴルフの世界の人々もそう考えて行動した甲斐あって、リオ、東京、パリと3大会でのオリンピック種目に決まりました。

 ところが、世界中のツアーがしっかりとできてしまっていたため、出場を辞退する選手が出てきました。マスターズや全米オープンなどのメジャーを中心に立てていたスケジュールの狭間に入るオリンピックを、どう位置づけるかが難しかったのです。

 4年に1度のオリンピックを競技人生最大の目標とする競技とは、そこから違っていました。

 また、どこのゴルフ場で開催するか、という問題もありました。リオでは当初、既存のコースで行うことが決まったのですが、プライベートコースだったことで一転。新たにパブリックコースを作り開催しました。

 こんな経緯があったにもかかわらず、様々な事情から、東京大会は“名門”と言われる埼玉県の霞ヶ関カンツリー倶楽部での開催が決まりました。

 オリンピックでゴルフを見た人が「あそこでプレーしてみたい」と思っても、パブリックではない霞ヶ関CCは簡単にプレーすることができません。基本的には、メンバーの紹介か同伴という条件があります。

 プライベートコースだから当たり前と言えば当たり前ですが、オリンピックでのゴルフの普及と言うことでは、効果を半減させています。

 改めてIGFのオフィシャルウェブサイトを見ると、団体の目的の中にハッキリと「ゴルフの国際的な普及、オリンピック、パラリンピック競技のプロモート」と言う文言があります。

 東京在住の人々の間でも、オリンピック開会式を終えた今でも、「ゴルフもオリンピックでやるの?」と言う声が少なくありません。事前の情報が少ないからでもありますし、出場選手が直前まで決まらないと言う事情もあります。

 特に今回はコロナ禍で、本当に直前に世界のトップ選手が欠場を余儀なくされると言う事態にも追いやられました。

 もうひとつ、先ほど書いたIGFの目的に出てくるパラリンピックに関しては、残念ながらまだ行われるに至っていません。「国際的な統括組織がないから」と言う理由からです。IGFはその部分を担うはずではなかったのでしょうか。

誰のために?何のために?五輪で開催されるゴルフの意義は

「どうしてオリンピックでゴルフをするの?」「オリンピックをやったコースで自分はプレーできないの?」「松山英樹のマスターズ優勝とどっちがすごいの?」「こんなに欠場者が多くては競技としてどうなんだろう?」「コースを改造したらしいけど、誰がお金を払ったの?」

 単純ですが、様々な疑問が、あちこちから聞こえてきます。問題なのは、これらの問いに、きちんと答えられる人がいない、ということかもしれません。

 コロナ禍で、様々な問題が浮き彫りになっている状況で始まった東京オリンピック。その中で、ゴルフを見る時に浮かぶ様々な疑問は、そのまま、世界のゴルフ界とオリンピックの双方に横たわる問題点でもあるのです。

 誰のために開催されているのか。税金が投入されている自国開催のオリンピックである以上、その疑問は誰からも発せられて当然です。競技そのものが素晴らしくとも、結果がよくとも、それが消えることは決してありません。

 コロナ禍という予測できなかった要素で他の競技も問われているオリンピックの意味が、ゴルフでも改めて問われています。

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