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- 稲見萌寧、東京五輪のミスショットから見えた強さの秘密【石井 忍のここスゴ!】
多くのツアープロのコーチとして活躍している石井 忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目した選手は、ニトリレディスで今季7勝目を達成した稲見萌寧。銀メダルを獲得した東京オリンピックの最終日18番ホール。バンカーに入れてしまったセカンドショットを分析します。
番手間の距離を打ち分ける難しさ
■稲見萌寧(いなみ・もね)/1999年生まれ、東京都出身
正確無比なアイアンショットを武器に、ニトリレディスで逆転優勝。2020-21シーズンの7勝目を挙げる。東京オリンピックではプレーオフでリディア・コを下し、日本人初の銀メダリストに輝いた。ツアー通算8勝。都築電気所属
先週のニトリレディスで通算16アンダーとし、逆転優勝を果たした稲見萌寧選手。2020-21シーズンはこれで7勝目。シーズン7勝はツアー史上4人目の快挙、22歳31日での達成は最年少だそうです。
今年の稲見選手の話題で外せないのが東京オリンピックですよね。金メダルを獲得したネリー・コルダ(米国)に1打及ばず、通算16アンダーでフィニッシュ。リディア・コ(ニュージーランド)とのプレーオフを制し、日本人初の銀メダルを獲得しました。
この試合で光ったのは、持ち味であるショットの精度です。フェアウェイキープ率1位(85.7%)、パーオン率8位(76.3%)という正確性でスコアを伸ばしました。
最終日の17番ホールでバーディーを奪い、終盤で首位に並んだ稲見選手ですが、18番ホールの2打目をグリーン手前のバンカーに入れてボギーとしました。
“たられば”を言い出したらキリがありませんが、もしもパーオンしていたら、金メダルの可能性もあったことを考えると悔やまれますよね。正確無比なショットを武器にする稲見選手は、なぜここでミスをしたのでしょうか。
最終日の18番ホール(パー4)を振り返ってみましょう。ティショットでフェアウウェイキープに成功し、2打目の残り距離は178ヤード。5番アイアンでは届かず、5番ユーティリティーでは大きい番手間の距離が残りました。ここで稲見選手は、ユーティリティーを選択。
しかし、「ちょっと緩んで右にいってしまった」(稲見選手)と本人がコメントしているように、ミスをして右手前のバンカーにつかまってしまったのです。
このミスには伏線がありました。前日の18番のセカンドショットは、残り195ヤードをユーティリティーで打ち、グリーン奥に外してボギーを打っていたのです。
脳裏にこのショットが残っており、同じくユーティリティーを持った最終日・最終ホールの2打目で思わず緩めてしまったのでしょう。そんな稲見選手ですが、このミスを引きずることなく、プレーオフを制したのは見事です。
翌週の似た場面ではスーパーショットでバーディー
さて、東京オリンピックの終盤に、“番手間の距離”でミスをした稲見選手ですが、翌週のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントでも同じような状況がありました。
同じく最終ホールの2打目。残り156ヤードの距離で5番アイアンか6番アイアンかで悩んだ稲見選手は5番アイアンを選択。スイングスピードと振り幅をコントロールして、ピンそば1メートルにつけるスーパーショットを打ってバーディーを奪ったのです。
同じミスをしないメンタルの強さ、修正能力の高さは、稲見選手の今シーズンの強さの一因といえますね。
番手間の距離を打たなければいけないシチュエーションは、当然アマチュアの皆さんにもやってきます。大きい番手と小さい番手、どちらを選んだほうがいいかは状況ごとに変わるので一概にはいえませんが、大きい番手は緩んでしまう可能性があるので、小さい番手でしっかり打つとミスが少なくなるはず。
また、番手間の距離が残ったときは、ピン位置を考慮するといいでしょう。ピンが手前なら大きい番手、ピンが奥なら小さい番手を持つと、保険がかかってグリーンをとらえやすくなりますよ。
■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身
日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
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