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- 障がい者ゴルフの世界選手権はあるのになぜパラリンピックにはないの?
9月5日に閉幕する東京パラリンピック。オリンピックにはあったゴルフ競技がなぜパラリンピックにはないのかと疑問を持つ人も多いようです。一体なぜなのでしょうか?
パリ大会にはエントリーするも、残念ながら“落選”
「パラリンピックのゴルフはいつやるの?」
――こんな言葉が、時折聞かれます。8月24日に始まった東京パラリンピックは、さまざまな競技で人間の可能性を再認識させる素晴らしいプレーが続出。あらためてスポーツが人々を豊かにしてくれることを示してくれています。
それに先駆けて行われた東京オリンピックでは、霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)を舞台にゴルフ競技が行われていました。日本勢は、女子で稲見萌寧選手が銀メダルを獲得。男子の松山英樹選手は銅メダルをかけたプレーオフで惜しくも敗退しましたが、普段のトーナメントにはないメダル争いが最後まで観戦を手に汗握るものにしてくれました。
これを見た後、始まったパラリンピック。「ここでもゴルフが見られるのでは?」と思う方が多いのも自然な流れ。でも、残念ながら東京パラリンピックにゴルフ競技はありません。
東京大会では、オリンピックは33競技339種目、パラリンピックは22競技539種目。パラリンピックは障害の程度による細かいクラス分けがある分、種目が多くなっています。それでも、ゴルフを含めてもっと多くの競技をパラリンピックでも見たいものです。
使用するティーを変えたりハンディキャップをつけることで、老若男女が同じように楽しめるゴルフは、健常者と障がい者がともに楽しむことも難しくありません。パラスポーツとしても、始めやすい部類に入ります。後天的な障がいで引きこもってしまった方が、ゴルフを始めたことで外に出て、笑顔で過ごせるようになったという証言もあり、人を豊かにするための効力は計り知れません。
障がい者ゴルフの競技も、ヨーロッパや日本を始めあちこちで行われています。高いレベルの競技から楽しむゴルフまで、健常者と同じようにすそ野は広がっているのです。
では、なぜ東京パラリンピックにゴルフ競技がないのでしょうか。実は、オリンピックはIOC(国際オリンピック委員会)、パラリンピックはIPC(国際パラリンピック委員会)と、それぞれ別な組織が開催しています。どちらも、それぞれの競技の国際連盟(IF)が傘下にあり、そこを通じて競技をエントリーする仕組み。そのため、片方にあって片方にないという競技も、実は少なくありません。
リオデジャネイロ大会で、ゴルフは112年ぶりにオリンピック競技に復帰しました。これは、ゴルフの普及を目的に世界中のゴルフ界がひとつになってIFであるIGF(国際ゴルフ連盟)を作り、プレゼンテーションをした甲斐あってのものでした。
IGFのウェブサイトを見ると、組織の目的のひとつに、ハッキリと「ゴルフをオリンピック、パラリンピックスポーツとして促進すること」という一文があります。IGFはIOCだけでなく、IPCの一員にもなっており、パラリンピック競技になるための動きをしているのは間違いありません。実際、パラリンピックでも2024年のパリ大会にはエントリーしていますが、残念ながら“落選”。その次のロサンゼルス大会を目指すことになります。
世界ランキングの構築など、クリアすべき課題は多い
1996年から日本障害者オープンゴルフ選手権を開催している日本障害者ゴルフ協会(DGA)の松田治子代表理事は現状をこう説明してくれました。
「ヨーロッパの障がい者協会(EDGA)のトニー・ベネットさんが、IGFで障がい者ゴルフのセクションをつくってやってくれていますが、時間がかかっています。パラリンピック競技になるには『世界ランキングがあること』『公式な団体が世界選手権を恒常的に行っていること』『5大陸に均等にプレーヤーがいること』などなどの条件があると聞いています。公式な団体というのは(ゴルフでいえば)IGF。世界選手権は開催されていますが、IGFが主催しているものではないので……。また、選手が世界中に均等にいるかというのもギリギリというのが現状です。悲観的になりたくはないのですが、なかなか……」
日本国内だけを見ても、障がい者ゴルフへの理解はまだまだです。プレーのペースが違うことや、カートのフェアウェイ乗り入れ、車いすでのプレーなどを認めてくれるゴルフ場が多くないからです。
パラリンピックでゴルフが行われることになれば、オリンピックのNF(国内競技連盟)である日本ゴルフ協会(JGA)がパラのNFも兼ね、日本の窓口となります。JGAの山中博史専務理事は「『ゴルフをみんなのスポーツへ』というスローガンを掲げているのですから、障がい者ゴルフに対する理解を深めなくてはならないとは考えています。現在は、障害者ゴルフの大会に競技委員を出したり、規則の部分を整備するようにしていますが、ゆくゆくはゴルフ振興本部がやることになるでしょう」と話しました。
IGFもJGAも、いずれも前向きではあるけれど、率直に言ってスローペースは否めません。残念ながら、これがゴルフのパラリンピック参入や障がい者ゴルフに対する理解の現状です。オリンピックにゴルフが復帰してまだ2大会目ということもあり、まだ健常者のゴルフだけで手いっぱいなのかもしれません。
20年12月には、女子ゴルフ界のレジェンド、アニカ・ソレンスタムがIGF会長に選ばれました。東京オリンピックの女子ゴルフ表彰式に姿を見せたのに気付いた方もいらっしゃるでしょう。彼女はゴルフをオリンピック競技にしようという運動が始まった時、現役選手としてタイガー・ウッズ選手やジャック・ニクラス選手らと共に先頭に立った人でもあります。彼女の推進力にも期待したいところです。
※ ※ ※
障がい者ゴルフを取り巻く現状を見てきましたが、IGFを中心に、やる気と人材、資金を投入すれば、もう少し話が進むのは間違いありません。障がい者ゴルフへの理解をもっと深めること、そのためにもパラリンピック競技にゴルフを加えること。そのためのテコ入れを早急に進め、ゴルフでも真の意味でのダイバーシティ(多様性)を実現してほしいところです。
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