- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- コラム
- 初優勝まであと一歩! 植竹希望の“強さ”が見えたUTの転がしアプローチ【石井 忍のここスゴ!】
多くのツアープロのコーチとして活躍している石井 忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、住友生命Vitalityレディス東海クラシックで2位タイに入った植竹希望だ。
今季トップ10は7度でボールストライキング1位
■植竹希望(うえたけ・のぞみ)/1998年生まれ、東京都出身。畑岡奈紗や渋野日向子らと同じ黄金世代の一人。ツアー未勝利ながらもボールストライキング1位のショット力の高さを武器に、2020-21シーズンは7度のトップ10入りを果たしている(9月19日時点終了)。サーフビバレッジ所属
ボールストライキングというスタッツをご存じでしょうか。トータルドライビング(飛距離とフェアウェイキープ率の順位を合わせたもの)とパーオン率の順位を足したもので、この数字が良いということは、ドライバーもアイアンも上手いプレーヤーといえます。
現在、国内女子ツアーでボールストライキング1位にいるのが、トータルドライビング2位、パーオン率3位の植竹希望選手です。切り返し後に腕や手首をしなやかに使う小気味良いスイングが特徴で、今シーズンは何度もベスト10フィニッシュを飾っています。
そんな植竹選手がツアー初優勝をかけて臨んだ先週の住友生命Vitalityレディス東海クラシック。最終日最終ホールをトップタイで迎えましたが、ティショットを左の池に入れてしまい、惜しくも悲願を達成することはできませんでした。
ショットが魅力の植竹選手ですが、私がこの大会で注目したのはショットではなくアプローチです。最終日15番ホール(パー5)の4打目。グリーン周りからユーティリティーを使って転がし、チップインバーディーを奪いました。もちろん、チップインさせたことは素晴らしいのですが、それ以上に「ユーティリティーでの転がし」を選択した彼女の冷静な判断力と勇気に驚きました。
エッジからのアプローチでは、パターやピッチングウェッジ(PW)、ショートアイアンをチョイスするのが一般的。しかし、あの場面はライが悪く、パターでは転がりを計算しづらい状況でした。また、ピッチングウェッジやショートアイアンでは刃が刺さってチャックリすることもあり得ました。植竹選手は、頭の中で各番手をシミュレーションし、自分のアプローチの引き出しの中から、「最も寄る確率が高い」とユーティリティーをチョイスしたのだと思います。
メンタルの強さやクレバーさが表れた1打
とはいえ、日本のツアーでユーティリティーを使って転がす選手はあまり見かけないですよね。つまり、見方によっては、植竹選手の選択は、“突飛なアイデア”にも捉えられるわけです。プレッシャーがかからない位置でプレーしているなら、恐怖を感じずにユーティリティーを手にできるかもしれませんが、ツアー初勝利がかかった終盤のホールでは話は別。
「もしもこの方法でミスをしたら……」と考えると、思い切ってユーティリティーを選択できず、無難にショートアイアンあたりを手にしてしまうのではないでしょうか。しかし、植竹選手は冷静な判断と勇気で、ユーティリティーをチョイスしたのです。
残念ながら2位タイに終わりましたが、あの1打で彼女のメンタルの強さや、クレバーさを垣間見ることができました。近い将来、必ず優勝するに違いない。そう感じさせてくれた見事なアプローチショットでした。
■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
最新の記事
pick up
ranking