ネット配信のみだった渋野日向子の復活優勝 でも今週は配信ナシのなぜ?

渋野日向子の劇的な復活優勝で幕を下ろしたスタンレーレディス。中継を見られたのは「GOLFTV」でのライブ配信のみということもあって、加入した人も多かったかもしれません。しかし、翌週の富士通レディースは配信ナシ。なぜなのか疑問に思った人も多いのでは?

一筋縄ではいかない放映権を巡る交渉

「10月からインターネット配信で女子ツアーが全試合見られる」。そう思ったファンも多かったことでしょう。

富士通レディースでの渋野日向子の笑顔。残念ながらネット配信はなかった 写真:Getty Images

 国内女子ツアー(日本女子プロゴルフ協会=JLPGA)は、公式サイトで「GOLFTV」からインターネット配信することが決定したことを“お知らせ”しました。同じ発表で「最初の大会」とされたスタンレーレディス直前のことです。スポーツ紙や雑誌、ゴルフ情報サイトなどでもそう報じられました。

 スタンレーレディスは、4人のプレーオフで「シブコ」こと渋野日向子が優勝する最高の展開となりました。ライブで見られたのはGOLFTVだけ。最高の宣伝になったはずでした。

 ところが、翌週の富士通レディースはインターネット配信はありません。それどころか、前述の公式サイトを開くとトップページの一番上に【富士通レディス】と出て、偽動画などへの注意が書かれ、はっきりと「今大会ではライブ配信をしておりません」と出るのです。

 あれれ? 一体あの発表は何だったのでしょう。実は“保険”がかけられていたのです。「諸般の事情によりインターネット配信を行うことができない大会もございますと。

 なんか釈然としない。そう思った人も多いでしょう。そう、この時、はっきりと決まっていたのはスタンレーレディスでの配信だけだったのです。「最初の試合」はウソじゃないけど、翌週、早速配信がないのでは拍子抜けしても仕方がありません。

 今後についても、GOLFTVでの配信がある試合は、まだ明らかにされていません。ディスカバリースポーツが運営するGOLFTVは、米PGAツアー(米男子ツアー)やUSLPGA(米女子)ツアーなどの配信が日本でも見られる有料サイト。どれだけ試合が見られるかは、加入を決める際の重要なポイントになるのは言うまでもありません。

 日本のゴルフトーナメントは、一部公式戦を除いて、主催はテレビ局やスポンサー企業、ツアーはこれを公認する立場、という形で出来上がってきました。テレビ全盛期にテレビ局と組むことはスポンサーにとっては必要で、セットになるのは当たり前になっていました。スポンサーに依存したシステムが長い間続いてきたのです。けれどもプロスポーツとしては、米男女ツアーのようにツアー側が試合を主催して、入場料収入やスポンサーからの収入を得たり、放映権料を得るのが理想の姿です。

 人気となった女子ツアーは、小林浩美会長になってから、ツアーが主催権を持つ形を目指し始めました。そのこと自体は決して間違っていません。ただ、現在のスポンサーやテレビ局との話し合いがうまく進んでいないのです。

 放映権や主催権をツアーが主張することは正論ですが、「うちの試合」という意識でスポンサードしてきた現在の主催者の多くとの交渉は、生易しいものではありません。主催者にはテレビ局もいます。その相手と放映権の交渉もしなければなりません。

時代に合った幅広い視聴スタイルを提供できるか

日本女子プロゴルフ選手権で優勝の稲見萌寧にトロフィーを手渡す小林浩美会長 写真:Getty Images

 幸い、インターネット配信は新しい権利のため、JLPGAが持つことに多くの主催者が同意しています。ツアーがネット配信をすることを宣言してからも、日本女子プロゴルフ選手権などでの単発以外、なかなか実現しませんでした。

 だからこそ、GOLFTVでの配信発表はビッグニュースだったのです。シーズン終盤になってのものでしたが「ようやくここまできたのか」と思った関係者も多かったはずです。それなら有料でも毎試合ライブで見られるのですから。けれども、フタを開けてみればまだまだ話はまとまっていなかったということです。あまりにお粗末な見切り発車は、今後への不安を抱かせてしまいました。

 ゴルフトーナメントを見る手段は、人によってさまざまです。録画でもいいから、やっぱり地上波がいいという人、BSやCSでもいいという人。有料でも場所を問わず見られるインターネット配信を望む人……。その誰もが大切なファンであることに変わりはありません。そのことを踏まえて、より選択肢の多い視聴スタイルでファンに試合を届けることを考える使命がツアーにはあるはずです。結果的にそれが、自分たちを大きく“育てる”ことにもつながります。

 無観客の試合が多いコロナ禍ではなおさらです。現在のファンを大切にしながら、もっとファンになってもらうにはどうしたらいいか。10年、20年、50年先を見据えて、それを利害関係者だけでなくファンに伝えながら進めていく必要があるでしょう。

 テレビ中継やインターネット配信、自分たちの発信だけでなく、メディアを通じての丁寧な説明や発信が大切なのは、その向こうにファンがいるからなのは、いまさら言うまでもありません。ファンあってのプロスポーツ。今回の出来事が、そのことを改めて考えるきっかけになることを祈るばかりです。

【写真】スタンレーレディスの渋野日向子優勝シーンを写真で振り返る

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