谷原秀人選手のリスクを回避するマネジメント
■谷原秀人(たにはら・ひでと)/1978年生まれ、広島県出身。2003年に初優勝を含む年間2勝を挙げ、賞金ランキング10位と躍進。16年は年間3勝を達成して、自身2度目の賞金ランキング2位に。今年の三井住友VISA太平洋マスターズで5年ぶりの勝利を挙げ、最終戦のゴルフ日本シリーズJTカップでツアー通算16勝目を飾った。国際スポーツ振興協会所属
先月の三井住友VISA太平洋マスターズで5年ぶりの優勝を飾った谷原秀人選手が、最終戦のゴルフ日本シリーズJTカップで通算16勝目を挙げました。

2位の池村寛世選手に1打リードの単独首位で最終日をスタートした谷原選手ですが、1番をボギーとするなど、序盤は苦しい展開。一時は池村選手に首位を明け渡しながらも、持ち前の粘るゴルフで、15番を終えて通算10アンダー。池村選手と首位タイで並んで16番(パー4)を迎えます。
谷原選手のティショットは、フェアウェイの右サイドへ。池村選手のティショットは、左サイドの斜面に止まります。どちらもセカンドショットでグリーンを狙えるシチュエーションでした。
最終日16番のピンポジションは左奥。このピン位置に対し、2人のセカンドショットは、左方向に飛んでいきます。谷原選手が左サイドのピンハイに乗せたのに対し、池村選手はグリーン左奥に外してしまいました。
難しいアプローチを残した池村選手は、3打目を寄せきれずに2パットでボギー。一方、パーオンさせた谷原選手は、8メートルのスライスラインを読み切ってカップに流し込んでバーディーを奪取。単独首位に返り咲き、ここから一度もトップを譲ることなく、勝利を手にしたのです。
さて、両選手のセカンドショットは、左奥のピン位置に対して左方向に飛んでいったわけですが、ミスショットにもかかわらず、谷原選手のボールはなぜグリーンに留まったのでしょうか。
「運が良かった」「たまたまグリーンに残った」のではなく、そこには谷原選手のリスクを回避するマネジメントがありました。
ピンが奥に切られている時、ミスショットがナイスショットよりも飛んでしまうことがあります。「ピンに届くようにしっかり振ろう」とすると、フェースがターンしすぎてロフトが立った状態でインパクトしてしまうケースがあるからです。
また、このインパクトでは弾道が低くなるため、着弾後にボールが転がりすぎるのも想定以上に距離が出てしまう一因です。
ピン奥のシチュエーションでこのミスが出ると、グリーンをオーバーしてしまい、奥からの難しいアプローチが残る可能性が高くなります。
谷原選手はこの状況を回避するため、ミスショットをしてもピンより奥にいかないクラブ、打ち方をチョイスしたのです。
ピン手前5~10ヤードへの“ナイスショット”を意識
ピン奥のグリーンを狙うセカンドショットは、「ナイスショットでピンまで届く」という番手選びをするのは危険です。
「ピンの手前5~10ヤード」にナイスショットの設定を変えると、ミスをしてもグリーンをとらえられる可能性が高くなるはず。
次回のラウンドでは、谷原選手のマネジメントをぜひ参考にしてみてください。
■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。