「今年も7コースでトーナメント開催」名匠・井上誠一の設計は何がすごいのか

ある程度ゴルフ歴が長くなると「やっぱり井上誠一設計のゴルフ場はすごい!」という言葉を耳にする機会があります。数多くの名門ゴルフ場を設計した井上誠一とはどんな人物だったのでしょうか?

海外のコースを研究しながら日本流のコース設計を確立した第一人者

 2022年のゴルフツアーは男子が25試合、女子は38試合が開催されます。男子は1月20~23日のSMBCシンガポールオープンで開幕。女子は3月3~6日のダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントが開幕戦になります。

ヤマハレディースオープン葛城を開催する葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(静岡県)も井上誠一設計 写真:Getty Images

 さて、男子ツアーが開催される以下の3コースと、女子ツアーが開催される以下の4コースには共通点があります。

国内男子ツアー
大洗ゴルフ倶楽部(茨城県):アジアパシフィックダイヤモンドカップゴルフ開催
札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コース(北海道):ANAオープン開催
東京よみうりカントリークラブ(東京都):ゴルフ日本シリーズJTカップ開催

国内女子ツアー
葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(静岡県):ヤマハレディースオープン葛城開催
浜野ゴルフクラブ(千葉県):パナソニックオープンレディース開催
戸塚カントリー倶楽部(神奈川県):資生堂レディスオープン開催
瀬田ゴルフコース北コース(滋賀県):TOTOジャパンクラシック開催

 このコース名を見てピンと来た人は、ゴルフ場にかなり詳しいです。いずれも日本を代表するゴルフ場設計家・井上誠一が設計を手がけたコースになります。

 日本には現在、約2200のゴルフ場があります。その中で男女合わせて国内62試合が開催されるゴルフ場のうち、7試合の会場が井上誠一設計コースです。

 現存する井上誠一設計コースは38コースですから、かなり高い確率でトーナメントに使用されています。

 ゴルフを始めたばかりの方は「井上誠一って誰?」と思うでしょう。ひと言で説明すると日本で一番有名なゴルフ場設計家です。

 1908年(明治41年)から1981年(昭和56年)まで73年間の生涯で、日本を代表する数々のゴルフ場を造り上げた人物です。

 井上誠一設計コースがなぜ高い評価を得ているかというと、日本に本格的なゴルフ場設計を持ち込んだ英国人設計家チャールズ・ヒュー・アリソンと22歳の時に出会い、アリソンを師と仰いで欧米のゴルフ場を研究しながら、日本人の美的感覚と融合させたコース設計を確立したからです。

病気療養中にアリソンの仕事ぶりを見てゴルフ場の設計に興味を持った

 井上誠一は日本における西洋眼科医の祖という家系の長男として1908年に東京・赤坂の地に生まれました。

 小学校から高校まで成蹊学園で勉学に励みますが、高校在学中に惰眠性脳炎という病気を患い、叔父の井上達四郎の勧めで治療と運動を兼ねてゴルフを始めます。

アジアパシフィックダイヤモンドカップゴルフを開催する大洗GC 写真:JGTOimages

 病気療養のため川奈(静岡県)に滞在し、ゴルフで体力回復を図っていたところ、新コース(現在の川奈ホテルゴルフコース富士コース)設計のため1930年(昭和5年)に現地を訪れたアリソンの仕事ぶりを見て、ゴルフ場設計の仕事に興味を抱きました。

 その後、叔父の勧めで霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県)に入会し、西コースの増設工事に携わることになりました。この時期にアリソンの設計図を熟読し、海外からも文献を取り寄せるなどして独学でコース設計を学びます。

 そして1932年(昭和7年)に霞ヶ関カンツリー倶楽部西コースが開場した後、東コースの設計者の一人である藤田欽哉のアシスタントとして那須ゴルフ倶楽部(栃木県)の設計に同行しました。

 藤田の体調が優れなかったため、那須ゴルフ倶楽部は井上がほぼ一人で完成させたと言われています。

 第二次世界大戦後にはゴルフ場設計家としての活動を本格化。前述の大洗ゴルフ倶楽部をはじめ、鷹之台カンツリー倶楽部(千葉県)、愛知カンツリー倶楽部(愛知県)、日光カンツリー倶楽部(栃木県)、西宮カントリー倶楽部(兵庫県)など、名門との呼び声が高いゴルフ場を次々に設計していきます。

 1957年(昭和32年)には霞ヶ関カンツリー倶楽部でカナダカップ(国別対抗戦)が開催され、個人戦で中村寅吉、団体戦で中村と小野光一のペアが優勝。第一次ゴルフブームが訪れました。

 井上の元にもさらにコース設計依頼が舞い込みます。1962年(昭和37年)には欧米の名門コース視察旅行に赴き、知見を深めました。

 井上がゴルフ場設計を始めた当初は重機がなかったため、コース造成は手造りで行っていました。自然の地形を生かして戦略性を高める手腕に定評がありました。

 やがて重機が使用できるようになり、設計の自由度が高まりました。でも、欧米のコースを視察するにつれ、井上は日本ならではの美観を追求する作風に磨きをかけていきました。

 井上誠一設計コースのほとんどは各都道府県を代表する名門ゴルフ場ですから、メンバーの同伴や紹介がなければラウンドできないケースが多いのですが、プレーするチャンスが訪れたらぜひラウンドし、他のゴルフ場とは違う独自の雰囲気を味わってみてください。

参考資料:「いつか、ここで。井上誠一のゴルフコース」(2008年発行、山田兼道著、ゴルフダイジェスト社刊)、「美しい日本のゴルフコース」(2013年発行、「美しい日本のゴルフコース」編纂委員会著、ゴルフダイジェスト社刊)

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