今も営業しているゴルフ場は地元ゴルファーでにぎわっている
2011年3月11日の東日本大震災から11年が経過しました。

震災発生当日は今年と同じ金曜日で、女子トーナメントのヨコハマタイヤゴルフトーナメントPRGRレディスカップの大会初日が開催されていました。しかしながら震災の影響で開催の中止を決定。競技不成立となりました。
そして翌週のTポイントレディス ゴルフトーナメントから3週後のスタジオアリス女子オープンまで3試合が大会中止となりました。
ツアーが再開されたのは4月第3週の心をひとつに 西陣レディスクラシック ~東日本大震災 復興支援チャリティ~でした。ただ、選手たちは地震と津波で多くの犠牲者が出ている中で、自分たちだけがゴルフをしていいのか自問自答しました。
同じような思いを抱えながらマスターズの試合会場のオーガスタナショナルゴルフクラブに乗り込んだのが当時19歳の松山英樹選手でした。
被災地である宮城県仙台市の東北福祉大学に在学しており、こんな状況で海外遠征に旅立っていいのか悩みましたが、出場を楽しみにしていた大勢の人たちからの後押しを受け、見事ローアマチュアを獲得しました。
あのときの経験が2021年のマスターズ制覇につながっているのは間違いありません。今年はディフェンディングチャンピオンとして大会連覇に挑みます。
この年は選手だけでなくアマチュアゴルファーもゴルフとの向き合い方に悩みました。被災者が避難所で不自由な生活を強いられている中、多くのゴルファーがゴルフをすることにためらい、自粛ムードがしばらく続きました。ゴルファーがゴルフ場に足を向けるようになったのは下半期に入ってからだったと記憶しています。
筆者がゴルフを再開したのも、被災地のゴルフ場を取材で何度か訪れた際、ゴルファーがプレーを自粛するよりもプレーを再開してくれたほうが、復興が早まるという現地の方々の声を聞いてからでした。
あの日から11年の月日が経ち、被災地のゴルフ場は今、どのように過ごしているのでしょうか。当時取材でお世話になった福島県のゴルフ場関係者に話を聞きました。
「東日本大震災の影響で、福島県はゴルフ場の閉鎖が相次ぎました。そのため、今は1コースあたりの来場者数が増えていますから、ゴルフ場はにぎわっています」
「他県から来場されるお客様は元々そんなに多くなかったのですが、震災後は少なくなり、さらに新型コロナウイルスの影響もありまして95%は地元のゴルファーです」
「でも、新型コロナウイルスの流行でゴルフがブームになっているのは他の地域と同じで、来場者数は増えています。ただ、関東では若いゴルファーが増えているようですが、福島ではそういったデータは出ていません。ゴルフショップやゴルフ練習場に若い人たちが増えているという話は聞きますが、ゴルフ場の来場者の数字には反映されていないというのが現状です」
毎年3月11日の14時46分にはサイレンを鳴らし、黙祷を捧げる
被災地のゴルフ場がにぎわっていると聞いて安心しましたが、今も3月11日になると当時の記憶がよみがえったりするのでしょうか。

「皆さんの記憶から震災の印象が薄れているのと同じように、被災地に住んでいる人も直接的な被害がなかった方は記憶がだんだん薄れてきていると思います」
「ただ、ゴルフ場としましては毎年3月11日に貼り紙を出し、『14時46分にサイレンを鳴らしますので、犠牲者のご冥福をお祈りするための黙祷にご協力ください』ということはお願いしています」
東日本大震災のときも、新型コロナウイルスの流行が始まったときも、不要不急の外出は控えるべきという状況になると「ゴルフは不要不急の外出かどうか」が議論の対象になります。
ゴルフをしない人にとっては不要不急には思えないかもしれませんが、ゴルフをする人にとっては人生を豊かに過ごすために欠かすことができないスポーツです。
犠牲者に黙祷を捧げながらも、ゴルフがプレーできる人はゴルフを楽しむのが正しい向き合い方なのでしょう。