ビル・ゲイツもはじめは入会を拒まれた!? マスターズ開催の「オーガスタナショナルGC」秘密主義クラブの内側

今週、いよいよ“ゴルフの祭典”マスターズトーナメントが始まります。毎年マスターズは欠かさず見ているという人も、会場のオーガスタナショナルGCがどんなクラブなのかは知らないのでは? 徹底した秘密主義の内側に迫ります。

秘密主義のため漏れ伝わる情報は少ないが…

 今週は、世界中のゴルフファンが胸を躍らせるマスターズです。

約300人のメンバーとマスターズ優勝者しか袖を通すことができない「グリーンジャケット」 写真:Getty Images

 マスターズの舞台、オーガスタナショナルGCと言えば、そのコースは世界のベストコースランキングで、必ずトップ10入りする名コースです。同様に、そこを所有するクラブも世界屈指の名門、エクスクルーシブ(高級かつ閉鎖的)なクラブとして、仰ぎ見られる存在です。

 同GCは、どのように運営されるクラブなのでしょうか? 基本的に秘密主義のため、外部に漏れる情報は少ないのですが、メディアによって取り上げられた、メンバーズライフを中心に掘り下げてみました。

1.メンバーになるにはいくらかかる?

 入会金など、メンバーになるために必要なコストはというと、米国の、というより世界屈指の「エクスクルーシブなクラブ」ですから、相当な高額と考えるのが普通です。

 ところが、これが意外に安いようなのです。無論、その金額は非公表ですが、アメリカのメディアがこぞって推測する入会金は4万ドル(約480万円)。

 また、年会費(こちらを推測するメディアは少ないのですが)は、イギリスの「ゴルフマンスリー」が「数千ドル。強いて推測するなら4000ドル(約48万円)」と報じています。

2.意外に安い理由は?

 どうしてこの程度の金額で世界屈指のクラブが運営できるのでしょうか?

 言うまでもなく、同GCが毎年マスターズトーナメントを開催し、巨額の収入を得ているからです。

 その額を米国の「ゴルフダイジェスト」が2015年に、次のように推測しています。

・チケット収入=3475万ドル

・国外のテレビ放映権料=2500万ドル

・物販=5525万ドル

 計1億1500万ドル(約138億円)で、ここから経費を引いた利益(税引き前)は4840万ドル。税引き後でも2920万ドルが残ると推測しています。

 不思議に思われるのは、アメリカ国内のテレビ放映権料が計上されてないことでしょう。

 マスターズは当初からCBSがテレビ中継を行っていますが、CBSは主催のマスターズ委員会に放映権料を支払っていないのです。

 それどころか、逆にマスターズ委員会がCBSに、番組制作費を支払っています。というのは、マスターズ委員会は中継番組製作に細かな指示を出し、作られた番組や映像は自分たちで管理したいからです。

 そのために、中継でマスターズにふさわしくない言葉を発したアナウンサーや解説者は、容赦なく番組から降板させられます。過去には、熱狂するパトロンを「モブ(群衆)」と表現したアナウンサーや、滑らかな高速グリーンについて「ビキニワックス(脱毛剤)」という言葉を使って解説者が番組から姿を消したことがありました。

 また、マスターズ委員会の意向で、番組中に放送されるCMは少なく、1時間にわずか4分間だけ。通常のスポーツ番組の1/3程度と言われています。

 番組制作費ですが、後日CBSが利益を乗せた金額をマスターズ委員会に請求。マスターズ委員会は精査のうえ、番組のCMスポンサー(IBM、AT&T、メルセデス・ベンツの3社だけ)に各600万~800万ドルをCM料金として請求し、それをCBSに渡す仕組みになっています。

3.どうすればメンバーになれる?

 自ら申し込んでも無駄です。新しいメンバーは、既存のメンバーのネットワークから、オーガスタナショナルGCにふさわしいと判断された人間に案内が送られることになっています。案内は郵便で届くと言われ、案内が届いた時点で、綿密な身辺調査は終えているそうです。なお、メンバーになるには、ゴルフの腕前は関係ありません。

 補充は約300人と言われるメンバーに欠員ができたときで、欠員は故人になるか、自ら退会するか。一部は、メンバーにふさわしくない言動の結果、「除名処分」になるケースもあります。

 この除名処分ですが、本人は夏の終わりになってもシーズン(前年の10月中旬~5月第3週)の請求書が届かないときに、初めて自分の立場を知るのだそうです。

4.クラブ内のメンバーの宿泊場所は?

 15年当時の情報では、敷地内には全10戸のキャビンなどに100余りのベッドが用意されています。10戸のキャビンですが、クラブハウス近くにあるのが、「アイゼンハワー」「バトラー」「クリフ・ロバーツ」という有名な3つのキャビン。残る7戸は、10番ホールの左サイドにあります。敷地内の宿泊料は100ドル程度とのこと。こちらもやっぱり低額です。

5.メンバーでもプレーできるのは年間5カ月余り

 オーガスタナショナルGCでプレーできるのは、メンバーでも10月から翌年5月の第3週まで。ただし、1~2月は南部ジョージア州といっても、ときに積雪があるほど寒いためにほぼクローズ。ですから、プレーができるのは、実質年間5カ月余りに過ぎません。

 6~9月の間クローズされるのは、高温多湿の気候からグリーンのベント芝を守るため。また、この間を利用して、コースの改修や改造工事を実施。そして、次のシーズンに向けてティーからフェアウェイに広がるバミューダ芝(夏芝)の上に、冬芝のライグラスの種を撒く(オーバーシード)といった作業を行うためです。

 一方、シーズン中には、メンバー向けに大きなイベントが4つ開催されます。10月のオープニングパーティー、11月のガバナーパーティー、3月下旬のジャンボリー、そして5月第3週のクロージングパーティーです。このうちジャンボリーはペアのチーム戦ですが、ほかの3イベントではチーム4人で、ベストボール方式でスコアを競うチーム戦が行われます。

 ちなみに、3月下旬開催のジャンボリーでは、コース上に設置済みのマスターズのリーダーボードに、上位でプレーするメンバー(ペア)の名前が掲示されるのだそうです。それは、メンバーにとってもエキサイティングな経験に違いありません。

メンバーには“ITの巨人”や“投資の神様”など億万長者が名を連ねる

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2016年、2年連続のトップ10となる7位タイに食い込んだ松山英樹 写真:Getty Images
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松山以前は2009年の片山晋呉が最もグリーンジャケットに近づいた日本人だった 写真:Getty Images
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