「シャンとして歩くのも速くて100歳まで生きると」藤子不二雄(A)氏のプレーをゴルフ漫画の巨匠が明かす | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

「シャンとして歩くのも速くて100歳まで生きると」藤子不二雄(A)氏のプレーをゴルフ漫画の巨匠が明かす

4月7日、藤子不二雄(A)こと、漫画家の安孫子素雄氏が88歳で亡くなったことが分かった。安孫子氏の生前の姿を親交のあった漫画家のかざま鋭二氏が明かしてくれた。

長老漫画家の中で一番元気な人だった

 また一人、漫画界の巨星が逝った。

藤子不二雄(A)こと、安孫子素雄氏(左)と、かざま鋭二氏の2ショット 写真:かざま鋭二氏提供

 4月7日、藤子不二雄(A)こと、漫画家の安孫子素雄氏が亡くなったことが分かった。享年88。

 ゴルファーにとって安孫子氏と言えば、やはり代表作の一つである『プロゴルファー猿』の作者としての印象が大きい。本人も大のゴルフ好きとして知られた安孫子氏の生前の姿を親交のあった漫画家のかざま鋭二氏が明かしてくれた。

「ショックです……。コロナ禍でここ2~3年は会えていなかったけど、それ以前のイメージからしたら、亡くなるなんて欠片も思っていませんでしたよ。長老漫画家の中でも一番元気な人でした。だから、訃報を聞いた時も、正直に言って『えっ』という感じでした。100歳まで生きると思ってましたから。最後に見たプレー姿も背筋がシャンと伸びて歩くのも速くて、ラウンド中は衰えをまったく感じなかったですからね。今年に入ってからも銀座で飲んでいる写真をお店の方が送ってくれて、会ってなくても元気そうな様子は確認していたから尚更……」

 本サイトの電話取材に快く応じてくれたかざま氏は、1991年から『風の大地』(坂田信弘原作・小学館ビッグコミックオリジナル連載)を30年以上にわたり長期連載するゴルフ漫画の巨匠と言われる人物。そんなかざま氏にとっても安孫子氏は仰ぎ見る存在だ。

「初めて言葉を交わしたのは、私が小学館漫画賞を受賞した時です(1993年の第39回・受賞作『風の大地』)。スピーチで私が『ゴルフが好きだから、ゴルフをやりたいがために描いています』というようなことを言ったら、『俺もそうなんだよ。2人とも一緒だね』と声をかけてくれてね。それがいまだに心に残っています」

「イージー会」は“うまいやつは入れない”

 それからラウンドを共にする関係が始まったのかと思いきや、実はそうではなかった。

「『イージー会』は“うまいやつは入れない”っていう決まりがあったんだよね。その頃、俺、うまかったからさ(笑)」

 ここで突然出てきた「イージー会」とは、簡単に言えば漫画家たちのゴルフコンペ。90年頃から『サイボーグ009』の石ノ森章太郎氏、『ゴルゴ13』のさいとう・たかを氏、『あした天気になあれ』『あしたのジョー』のちばてつや氏、『空手バカ一代』のつのだじろう氏ら、漫画界の歴史そのもののような重鎮たちが中心となって結成された。

「漫画家は家にいて不健康だから外に出ないと。それには1日外で遊べるゴルフが良い」という趣旨で始まったのだそうだ。会の名前の由来は「気楽にやろうよ」ということで、それに当たる英語をあてて「イージー会」。だから「競い合わない」「うまいやつは入れない」。

 70台で回る「うまいやつ」だったかざま氏だが、10年ほどゴルフを離れた時期があり、還暦を迎える頃になって再開した。

「それで『100ぐらい打つようになったから入れてくださいよ』と改めてお願いして。そうは言ったものの、ギスギスしたところのまったくない楽しい会で、気楽に回れるから良いスコア出ちゃうんだよね。たまに70台で回っちゃったりして(笑)。そういう時は武論尊先生(『北斗の拳』など原作)と競い合ってましたね。競い合っちゃいけないんだけど……」

ゴルフあまりやらない秋本治氏も「安孫子先生たちに会いたいから」

 イージー会には『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で知られる秋本治氏の姿もあった。

「秋本先生はあまりゴルフに熱心なほうではなかったですね。でもやっぱり安孫子、さいとう、ちばといった長老たちに会いたいから。出版社のパーティーで言葉を交わせる機会はあっても、1日一緒に過ごせるのはゴルフだからこそだよね。私も彼らと初めて親しく話せたのはイージー会ですから」

 うまい下手関係なく、1日時間を共に過ごして親交を深める、ゴルフの魅力を再認識させられるエピソードだが、かざま氏は「またイージー会を再開しようという話もあったんだけどね、それが果たせないまま……」と残念がる。それまで極めて近しい関係だった人との距離を遠くしてしまったコロナ禍は、私たちの心にどれだけの悔いを残すのだろう。

「とにかく“ゴルフが大好き”な人でしたよ。ティーショットを打つ前は地面を2、3回トントンと叩いてスイングを始動するのが独特のルーティンでした。長い距離のOKをすぐ要求する、ちゃっかりしたところのある人でした(笑)。ゴルフの最中はあまりベラベラはしゃべらないけど、その後の飲み会では10個くらいの同じ話を決まって話す人でした。あの話ももう聞けないのか……」

 昨年9月にはイージー会の長老の1人であるさいとう氏が亡くなっている。今、2人は「天国のイージー会」で、先に逝った石ノ森氏と変わらぬ気楽なゴルフを楽しんでいるのだろうか。

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藤子不二雄(A)こと、漫画家の安孫子素雄氏の故郷、富山県氷見市にある「プロゴルファー猿」像 写真:林郁夫氏提供
藤子不二雄(A)こと、漫画家の安孫子素雄氏の故郷、富山県氷見市にある「プロゴルファー猿」像 写真:林郁夫氏提供
藤子不二雄(A)こと、漫画家の安孫子素雄氏の故郷、富山県氷見市にある「プロゴルファー猿」像 写真:林郁夫氏提供
藤子不二雄(A)こと、漫画家の安孫子素雄氏の故郷、富山県氷見市にある「プロゴルファー猿」像 写真:林郁夫氏提供
藤子不二雄(A)こと、漫画家の安孫子素雄氏の故郷、富山県氷見市にある「プロゴルファー猿」像 写真:林郁夫氏提供
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藤子不二雄(A)こと、安孫子素雄氏(左)と、かざま鋭二氏の2ショット 写真:かざま鋭二氏提供

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