温故知新!? ドライバー「ウッド」名称の由来
最新&人気ドライバーには様々な素材が使われていますが、木材(ウッド)を使っているモデルは現在ありません。

昔のドライバーとフェアウェイウッドは主に木材で作られていたため、今でもカテゴリーとして名称が残っています。
特にパーシモン(柿)で作られたウッドは飛距離性能と所有感が高く、長い期間ゴルファーの支持を得ていました。
また、今年カーボンフェースを採用したドライバーが登場し話題ですが、すでにパーシモンヘッドの時代からカーボンファイバーのフェース素材が採用され当時も人気を博していました。

実は最新テクノロジーの多くは、歴史からヒントを得た“温故知新“が非常に多いのです。
ヘッドには「顔」と「脚」の名称が混在
ドライバーをはじめとしたウッドヘッドは、人間の頭に例えボールを打つ部分を「フェース」と呼びます。しかし、フェースの先端部分には「トゥ(ツマ先)」、ツケ根部分には「ヒール(カカト)」部があり「顔」に「脚」の名称が加えられています。

はっきりとした語源はないのですが、不思議とゴルファーはこの名称を受け入れ、ヘッド全体の見た目のことも「顔」と呼びます。
また、フェースの⼀番飛ぶ部分を「スイートスポット」と呼びます。バナナが熟した時にできる斑点の意味ではないそうで、“最も美味しい部分”の意味が最も有力といわれています。
確かにスイートスポットで当たった時のドライバーショットは、最も美味しい部分を食べた時の快感を得られることが出来ます。
構えた時のシルエットは操作性をイメージさせる
ゴルファーが上から見た時のシルエットである「顔」は、パーシモン(柿の木)ウッドだった時代には木目がはっきりと目に入るため、全体シルエットと木目がキレイにそろっている物ほど高級品とされていました。

そのころの名残なのか、ゴルフ歴が長い人や上級者ほど「顔」の良し悪しや好みにこだわります。腕前に関わらず、無意識的にゴルファーはシルエット全体とシャフトからフェースにかけてのラインを見ています。
シャフトからフェースにかけての前方部分のラインは、左右の打ち出し方向をイメージさせます。ウッドのフェースは平らではなく、バルヂと呼ばれる丸みが付けられています。この部分の丸みを感じるほど⼒強さや操作性を感じやすくなり、反面やや難しそうな印象も持ちやすくなります。
トゥ側とヒール側の、双方のボリュームの見え方は、つかまりやすさのイメージに影響を与えます。人気モデルほどわずかにトゥ側のボリュームが大きくなっていて、バック部分の頂点とフェース中心部が全体の中心を通っているように見えます。
逆にヒール側のボリュームの方が大きくなっていると何となく「つかまりが良さそう」に見えます。事実、つかまりの良いモデルほどヒール側のボリュームを大きくしているモデルが多いです。
実際には内部構造や重心によってヘッド特性が決まるのですが、より視覚的にゴルファーに訴求するためデザインされているモデルも数多くあります。
逆に難しそうに見えて実はやさしい性能を実感してもらうためにデザインされたモデルも現在は沢山あります。
横から⾒るデザインは弾道をイメージさせる
ゴルファーには横から見たデザインも「顔」の印象に含まれます。
特にフェアウェイウッドでは、全体デザインが平べったく大きく見えるほどボールが上がりやすく多少ミスショットしても真っすぐ飛びそうなやさしい印象を与えます。
シャローヘッドと呼ばれるモデルが人気フェアウェイウッドに多い理由は、多少のミスショットでもボールが高く打ち出せる安心感があるからです。一方で全体の高さや後方部の高さがある場合、ディープヘッドやディープバックといい力強い弾道で飛ばせるイメージをゴルファーに与えます。
意識的かどうかに関係なく皆さんが「カッコイイ」や「やさしい」と感じるのは、見た目やデザインが大きく関係しています。クラブメーカーはゴルファーの好みや傾向をビッグデータで把握していて、ゴルファーが求める“真っすぐ”や“遠くに”“ボールをつかまえたい”“高く飛ばしたい”性能をデザインにも反映させています。
皆さんの感性にビビッと来たクラブには、何かしら理由や意味が存在しているのです。
【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)
伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。