2打差以内の首位で最終日を迎えた選手の勝率は5割以下!
女子ツアーの公式競技(メジャー)今季初戦、ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップは最終日を前に山下美夢有が6打差の首位に立っていた。
6打差は大差。多くのゴルフファンは山下が優勝するのだろうと思ったのではないだろうか。メディアの中には「安全圏」と表現しているところもあったほどだ。
そして、山下はそのまま逃げ切ってメジャー初優勝を成し遂げた。

では、6打のリードで最終日を迎えた選手が勝つ確率は、実際どのくらいなのだろうか。1967年にその歴史がスタートした女子プロのトーナメントすべてを対象に調べてみた。
6打差で最終日というのは今回で19例目だった。女子は今年で56年目だから、ほぼ3年に1回というレアケースだったわけだ。
19例のうち優勝できなかったのは、たったの1例である。勝敗で表現すると、18勝1敗。勝率は94.7%になる。プレーしている本人は緊張のしっぱなしだっただろうが、データ的には山下の優勝は濃厚だったわけだ。
唯一の敗戦は2008年の富士通レディースで起こった。2日目を終えて通算14アンダー、6打差首位に立っていた三塚優子は最終日後半にスコアを崩して3位にいた不動裕理に追いつかれ、プレーオフで敗れている。
プレーオフに持ち込まれながら辛勝した例もある。1993年、メジャー昇格前のワールドレディスでのことだ。独走していた平瀬真由美が最終日に79を叩いて足立香澄とのプレーオフとなり、2ホール目のバーディーでようやく振り切った。
ほかにも1打差にまで追い上げられたのが1例、2打差勝ちが4例と冷や汗の優勝は少なくない。大量リードだからこその重圧もあるはず。勝率は圧倒的に高くても、そうそう楽には勝たせてもらえないのが現実だ。
今回の山下も前半終了時で3打差にまで迫られていた。最終的にはその3打差を保っての優勝となったが、気が気ではなかっただろう。差を縮められての優勝は18勝中10例目だった。
では、6打差以外の勝率はどうなのだろう。単独首位で最終日を迎えた選手のストローク差別勝率は以下の通りだ。
2位との差 勝率(勝敗)
1打差 33.7%(178勝350敗)
2打差 49.0%(153勝159敗)
3打差 60.2%(103勝68敗)
4打差 83.7%(87勝17敗)
5打差 88.9%(48勝6敗)
6打差 94.7%(18勝1敗)
7打差 100%(9勝0敗)
8打差 100%(4勝0敗)
9打差 100%(3勝0敗)
10打差 100%(2勝0敗)
ご覧のように、1打差が最も勝率が低く、差が大きくなるほど勝率が上がっている。見事にストローク差と勝率が比例しているわけだ。
1打差の勝率は33.7%。3回に1回しか逃げ切れない計算になる。昨シーズンは1打差首位の選手が10連敗するという事例もあった。逆転された選手の中には賞金女王の稲見萌寧、今季初優勝を飾った西郷真央や高橋彩華、そして山下の名前もある。
2打差は49.0%だから、勝てるのはほぼ2回に1回だ。4打差からは勝率が80%を超えて逃げ切れる確率がグンと高くなる。
7打差以上は18例あってすべて優勝。男子(ツアー制度が施行された1973年以降)でも6打差首位からの逆転負けは2例あるが、7打差以上となると35例で勝率は100%である。男女とも7打差が絶対的安全圏と言えそうだ。
女子の最大リードは塩谷育代と安井純子の10打差
女子で最も大きなリードを持って最終日に入った例は10打差。1997年サントリーレディスの塩谷育代と2000年東洋水産レディスの安井純子の2例である。

塩谷は終盤スコアを崩したが72にまとめて7打差の圧勝。安井は74と苦戦したが4打差で勝利を飾っている。
男子では1988年の中四国オープンで倉本昌弘が何と2位に14打差をつけて最終日に入ったことがある。
当時は関東オープンや関西オープンなど6つの地区で同じ週に大会が開催されていたために選手層が薄かったという事情はあるにせよ、今後、誰も塗り替えることができないと思わせるような驚異的な差である。
最終日、71で回った倉本は13打差で勝利を手にしている。